テストステロンが大腸癌の腫瘍増殖に関与する可能性

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これまでの癌研究から、女性の方が男性よりも大腸癌、膵臓癌、胃癌のように性別を問わず発症する癌に罹患する可能性が低いことが明らかになっている。エストロゲンなどの女性ホルモンが腫瘍の形成を妨げる防御効果を有するため、このような傾向が生じるのではないかと考えられていた。今回、大腸癌の腫瘍形成に関わる因子が、実際には男性ホルモンのテストステロンである可能性を示唆する証拠をミズーリ大学の研究者が見つけた。

この研究で、ミズーリ大学獣医学部獣医病理生物学助教James Amos-Landgraf氏は、雄ラット群において自然経過で大腸癌が生じる通常レベルを調べた。その後、ラットからテストステロンを除去すると、大腸癌罹患率は著しく低下した。テストステロンを再度注入すると、大腸癌罹患率は通常レベルに戻った。

Amos-Landgraf氏は以下のように述べた。「これまで女性ホルモンが、腫瘍の罹患を何らかの形で防ぐと考えられていました。しかしながら、ラットからテストステロンを除去すると大腸癌罹患率が著しく低下したことから、女性ホルモンに防御作用があるというより、男性ホルモンが大腸癌の腫瘍増殖に関与していると考えられます」。

さらにAmos-Landgraf氏は、閉経後女性で大腸癌の罹患率が高いこともテストステロンが腫瘍増殖に関与する因子である証拠となり得ると指摘した。

Amos-Landgraf氏は以下のように述べた。
「通常、女性の体内には一定量のテストステロンが分泌されていますが、一般的にエストロゲンをはじめとする女性ホルモンよりもずっと少ないものです。閉経して女性ホルモンの値が低下すると、テストステロンが相対的に多くなります。この時期は大腸癌罹患率が高くなり始める時期と一致することから、テストステロンの値と大腸癌の腫瘍増殖との関連性を裏づける根拠になると考えられます」。

Amos-Landgraf氏は、癌の罹患率において男女差の原因となる遺伝的形質を調べる研究を継続するつもりだと述べている。

本研究は全米科学アカデミー会報誌に掲載された。また、アメリカ国立衛生研究所から2つの研究助成金が提供され(Grants R01 CA63677 and R01 CA125591)、アメリカ癌協会とミズーリ大学の支援を受けている。

出典:ミズーリ大学


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翻訳担当者 松木宏樹

監修 北村裕太(内科/東京医科歯科大学医学部付属病院)

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