BRAF V600E変異大腸がんにエンコラフェニブ療法、FDA承認の根拠

MDアンダーソンニュースリリース 2025年1月25日

アブストラクト16

BRAF V600E遺伝子変異を有する転移大腸がん(mCRC)患者は、分子標的薬エンコラフェニブ(販売名:ビラフトビ)およびセツキシマブ(販売名:アービタックス)とmFOLFOX6化学療法レジメンの併用による一次治療が有効であることが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らが主導した第3相BREAKWATER試験の結果から明らかになった。
 
本結果は、本日、米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO GI)で発表され、Nature Medicine誌に掲載された。3剤併用療法による全奏効率(ORR)は60.9%であったのに対し、標準治療(SOC)であるベバシズマブ(販売名:アバスチン)併用または非併用の化学療法では40%であった。3剤併用療法群では68.7%の患者が6カ月以上の奏効期間を示したのに対し、SOC群では34.1%であった。
 
28カ国にわたる多施設共同研究のデータは、2024年12月の米国食品医薬品局(FDA)によるこの併用療法の迅速承認の根拠となったものであり、BRAF V600E遺伝子変異を有する転移大腸がん患者に対する有効な新たな一次治療の選択肢となった。
 
「化学療法は、この変異を持つ患者に見られる腫瘍の急速な増殖を抑制する一次治療としては限られた効果しかありませんでした」と、共同主任研究者であるScott Kopetz医学博士(MDアンダーソンの消化器腫瘍内科教授でTranslational Integration副部長)は語った。「この新しい治療法は、一次治療における患者の転帰を改善するために、二重標的療法と化学療法を組み合わせることの重要性を強調しています。持続的な反応が得られたことは、これらの患者の生活の質を向上させるために取り組んでいる中で、重要な進展です」。
 
米国国立がん研究所によると、毎年15万人以上が大腸がんと診断されており、米国で4番目に多いがんとなっている。BRAF遺伝子変異は症例の約8~12%に認められ、腫瘍の急速な増殖、標準治療による有効性の低さ、予後不良と関連しており、全生存期間の中央値は12カ月未満である。これまで、BRAF V600E遺伝子変異を有する転移大腸がん患者に対する一次治療としての標的治療薬は承認されていなかった。
 
BREAKWATER試験は、FDAのProject FrontRunnerを活用した最初の試験のひとつであり、進行がんの場合、患者が過去に多くの治療を受けた後ではなく、より早い臨床段階で治療法の評価を行うことを奨励する取り組みである。
 
本試験では、16歳以上の未治療のBRAF V600E遺伝子変異を有する転移大腸がん患者が登録された。患者は3つの治療群のいずれかに均等に無作為に割り付けられた: ベバシズマブ併用または非併用の標準化学療法、エンコラフェニブとセツキシマブの2剤併用療法、エンコラフェニブ、セツキシマブ、mFOLFOX6の3種併用療法。
 
研究者らが試験の患者サブグループを分析したところ、3つ以上の臓器にがんが広がっている患者や肝転移を有する患者など、注目すべき群においては3種併用療法が有効であった。
 
「これらの結果は、この併用療法がBRAF V600E遺伝子変異を有する転移大腸がん患者の新たな一次標準治療となることを支持するものです」とKopetz氏は述べた。「また、診断時に大腸がんの分子サブタイプを迅速に同定し、患者の治療戦略を最適化することの重要性を強調しています」。
 
この併用療法の安全性プロファイルは、それぞれの薬剤の既知の安全性プロファイルと一致していた。新たな安全性シグナルは確認されなかった。多くみられた副作用は、悪心、発疹、疲労、嘔吐、腹痛、下痢、食欲減退などであり、いずれも患者の25%以上で報告され、各群間で同様であった。
 
無増悪生存期間と全生存期間の最終的な算出は、試験の次の段階で正式に評価される予定である。この試験の今後の解析で、この併用療法の予測バイオマーカーが明らかになる可能性がある。
 
この臨床試験はPfizer社がスポンサーであり、Kopetz氏はPfizer社のコンサルティングを行い、同社から研究資金を受けていることを明らかにしている。共著者の全リストと開示情報は、論文全文を参照されたい。

  • 監修 泉谷昌志(消化器内科、がん生物学/東京大学医学部附属病院)
  • 記事担当者 青山真佐枝
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  • 原文掲載日 2025/01/25

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