大腸がん検診用の新たな血液検査を評価する研究
ASCOの見解(引用)
「この血液検査は、大腸がん検診方法が一つ増えることを意味しています。この研究では、血液による大腸がん検診を評価し、平均的リスクの米国人口における大腸がん検診として便利で有効な選択肢となる可能性があります」と、イェール大学医学部のPamela Kunz医師は述べる。
研究要旨
テーマ | 大腸がん検診用の血液検査 |
対象者 | 患者27,010人 |
主な結果 | 大腸がん検診用の新たな血液検査は、大腸がんリスクを正確かつ効果的に検出できる。 |
重要性 | * 大腸がんは、米国で診断されるがんの中で4番目に多い。 * 大腸がんの平均的リスクがある45歳から75歳の成人は、定期的に検診を受けることが推奨されている。米国では、大腸がん検診で最も効果的な検査は、大腸内視鏡検査またはS状結腸鏡検査である。 * 米国では、大腸がん検診対象者の約22%が、一度も検診を受けたことがない。一部の州では、その割合は40%を超えている。 * 治療への障壁、経済的事情、健康保険加入の有無など、検診受診を妨げる要因は数多くある。大腸内視鏡検査に対する恐怖感や検査前に準備が必要なことも要因として報告されている。 * 血液による検査は、検診の補完的な選択肢となり、検診を受けやすくする可能性がある。 |
研究として行われた血液を用いる大腸がんスクリーニング検査により、大腸がん発症リスクが平均的である45歳以上の成人において大腸がんリスクが効果的かつ正確に検出された。この研究は、カリフォルニア州サンフランシスコで1月23日から25日に開催される2025年米国臨床腫瘍学会(ASCO)消化器がんシンポジウムで発表される。
研究について
「便利で安全かつ簡単に実施できる大腸がん検診方法が必要とされています。これまでは、便潜血検査と大腸内視鏡検査またはS状結腸内視鏡検査しかありませんでした。血液検査は大腸がん検診受診率を向上させる可能性があります」と、研究代表著者であるAasma Shaukat医師(公衆衛生学修士、ニューヨーク大学グロスマン医学部)は言う。
PREEMPT CRC研究は、血液を用いた大腸がん検査としては最大規模の研究であり、米国全土の200カ所の異なる施設で4万人以上が登録されている。2020年5月から2022年4月の間に、大腸がん発症リスクが平均的である45歳から85歳の人々が研究に登録された。参加者の年齢中央値は57歳で、55.8%が女性であった。参加者が標準的な大腸内視鏡検査を受ける前に採血をした。血液検体を検査して、がん化を示す大腸細胞の変化の分子シグナルがないか調べた。評価可能な血液検体を採血でき、大腸内視鏡検査を受けた参加者総数は27,010人であった。
主な知見
血液検査の結果を大腸内視鏡検査の結果と比較した。進行した大腸腫瘍の有無を調べたところ、次のような結果が判明した。
- 血液検査の感度(実際に大腸腫瘍のある人を検出する検査の精度)は、81.1%であった。
- 特異度(大腸腫瘍ではない人のうち検査で陰性となる人の割合)は、90.4%であった。
- 陰性予測値は90.5%であった。つまり、検査結果が陰性であった場合、その人の体内に大腸がん細胞が存在しない確率は、90.5%ということである。
- 陽性予測値は15.5%であった。つまり、検査結果が陽性であった場合、その人の体内に大腸がん細胞が存在する確率は、15.5%ということである。
この研究では、血液検査が進行した前がん病変をどの程度検出できるかについても調べた。病変の有無に関して血液検査の感度は13.7%であった。
研究対象者の人口特性は、性別と年齢が米国人口と完全に一致しなかったため、米国国勢調査データと一致するように研究結果に重み付けをした。血液検査は研究の主要評価項目を満たしており、大腸がんのリスクが平均的である人々の検診方法として効果的なツールであると言える。また、米国メディケア全国保険適用に求められる検査感度と特異度レベルも満たしている。
次のステップ
研究者らは、大腸がん検診用のこの血液検査の長期的効果を引き続き研究していく予定である。
本研究は資金提供を受けていない。
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- 監修 斎藤 博(がん検診/青森県立中央病院)
- 記事担当者 山田登志子
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- 原文掲載日 2025/01/22
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