難治性転移性の大腸癌患者を対象とした新たな抗癌剤TAS-102が優先審査に指定される
キャンサーコンサルタンツ
難治性転移性大腸癌患者の治療として現在開発中の新たな抗癌剤TAS-102が、米国食品医薬品局(FDA)によって優先審査の指定を受けた。
アメリカ癌協会の推定によると、米国では2013年に102,000人以上が新たに大腸癌と診断され、約40,000人が新たに直腸癌と診断された[1]。また、50,000人以上がこれらの病気が原因で死亡した。米国内では大腸癌に関する良いニュースもあり、大腸癌による死亡率は過去15年間において低下しており、また検診、予防および治療の継続的な進歩もみられる。しかし残念ながら、多くの患者において初期治療が奏効せず、転移性の癌の進行がみられる。転移性大腸癌の転帰を改善するためには、薬剤の継続的な開発が必要である。
FDAは、深刻な疾患や生命を脅かす疾患を対象とし、かつ、現状では満たされていない医学的ニーズに対応することができる新薬の開発を促進し、審査を早めることを目的として、優先審査指定制度を導入した。優先審査指定を受けた開発中の新薬は、新薬承認申請の提出に対してFDAによる逐次審査を受けることができる。
新たな配合剤TAS-102は標準治療が奏効しない転移性大腸癌患者の全生存期間を延長するということが、このほど研究者らによって報告された。この研究結果は先日、バルセロナで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO)の第16回世界消化器癌会議で報告された[1]。
TAS-102はトリフルリジン(FTD)とチピラシル塩酸塩(TPI)を成分とする新たな抗癌剤である。FTDはTAS-102の活性成分であり、癌DNAへ直接取り込まれDNAの機能障害を引き起こす。しかし、FTDは経口投与されると、大部分が分解されて不活性化型になる。TPIはこのFTDの分解を防いでいる。すでに報告されているTAS-102の第2相臨床試験では、治療が奏効しない転移性大腸癌の日本人患者において全生存期間が延長することがわかった。
今回のRECOURSE試験は、13カ国で実施された国際共同第3相臨床試験であり、KRAS野生型腫瘍など、標準治療がすべて奏効しない転移性大腸癌患者を対象とした。患者は、TAS-102(534人)またはプラセボ(266人)のいずれかによる治療を受け、直接比較された。
研究者によると、全生存期間中央値はTAS-102投与群で7.1カ月、プラセボ投与群では5.3カ月であり、TAS-102により全生存期間が延長したことがわかった。TAS-102は無増悪生存期間も延長し、きわめて良好な忍容性を示した。もっとも多くみられた副作用は好中球減少症であった。
参考文献:
1. Yoshino T, Mayer R, Falcone A, et al. Results of a multicenter, randomised, double-blind, phase III study of TAS-102 vs. placebo, with best supportive care (BSC), in patients with metastatic colorectal cancer (mCRC) refractory to standard therapies (RECOURSE). Ann Oncol 2014 Jun; 25(Suppl 2):1-117.
2. Cancer Facts and Figures http://www.cancer.org/acs/groups/content/@epidemiologysurveilance/documents/document/acspc-036845.pdf Accessed March 2014.
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