【ASCO2024年次総会】大腸がん検査の格差是正にAI患者ナビゲーターが有用
*このプレスリリースには、アブストラクトには含まれていない最新データが含まれています。
ASCOの見解(引用)
「都心部に住むマイノリティ集団におけるがん検査の格差が知られているが、このプログラムでは、がんの早期発見を改善し、大腸がん格差を縮めるように取り組んでいる。この取り組みは、会話型人工知能を活用して社会的弱者への支援を最適化し、より良く、より効率的で公平な医療を促進する技術の実現につながる。」
--Fumiko Chino医師(スローンケタリング記念がんセンター放射線腫瘍医)
研究要旨
目的 | 住民が十分な医療サービスを受けていない地域における大腸内視鏡検査の予約支援のための人工知能(AI)活用患者ナビゲーター |
対象者 | ニューヨーク市の患者2,400人 |
主な結果 | AI活用患者ナビゲーターは、住民が十分なサービスを受けていない地域で、大腸内視鏡検査の予約に来られなかったり、あえて来なかった人々を検査手順に戻せる可能性を示した。 |
意義 | ・十分な医療サービスを受けていない有色人種コミュニティでは、大腸がん検査への障壁が晩期診断や転帰不良による格差につながることがある。 ・少数民族や恵まれない人々にサービスを提供するニューヨーク市のあるがんセンターでは、熟練した患者ナビゲーターによる積極的な支援にもかかわらず、2022年、大腸内視鏡検査の予約を入れた患者の59%が検査を完了していなかった。 ・この質改善プロジェクトは、人手不足と業務量の多さのせいで、ケア予約の障壁に困っている人々への連絡に必要な多種多様な支援活動の実行力が低下している状況で、患者が再びケアを受けられるようにし、ケアの障壁を評価し、検査の日程調整ができるスタッフに患者を引き継ぐという業務における重要なギャップを埋めるのに役立つことができた。 |
人工知能を活用した患者ナビゲーターツールは、大腸がん格差の原因となる受診中断という課題解決に役立つ可能性を示し、初回予約に来なかった人の大腸内視鏡検査完了率は約2倍となった。この研究は、5月31日から6月4日までイリノイ州シカゴで開催される2024年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表される。
研究について
「医療制度と労働力がパンデミックの被害から完全には回復しておらず、がん格差が大きく広がり続けている現在、システムやスタッフにさらなる負担をかけることなく患者ケアを最適化する効果的かつ効率的な方法を特定することは極めて重要である。私たちの質改善プロジェクトでは、罹患率や死亡率に関してがんによる不均衡な負担を強いられている社会的弱者のがん検査受診を促しながら、人工知能を活用したバーチャルナビゲーションが上述の課題に対処できる可能性を示している」と、研究の筆頭著者であるAlyson Moadel(Alyson Moadel)博士は述べた。同博士は、モンテフィオーレ・アインシュタイン総合がんセンターのコミュニティ・エンゲージメント&がん健康公平性副部長、BOLD心理社会的腫瘍学プログラム創設ディレクターである。
このプロジェクトは、ニューヨーク州ブロンクスにあるモンテフィオーレ・アインシュタイン総合がんセンターで行われた。この地域は、有色人種や低所得世帯のコミュニティ出身者が大多数を占め、米国外で生まれた人も多い。この研究では、パーソナライズされたAI会話を行うバーチャル患者ナビゲーター「MyEleanor」を利用して、2022年または2023年に予定されていた大腸内視鏡検査の予約をキャンセルしたか、来なかった2,400人を対象に2023年4月から12月まで実施された。調査対象患者において、女性66%、ヒスパニック系41%、黒人33%、英語話者73%、スペイン語話者25%、無職32%、既婚者43%であった。MyEleanorは、患者に電話をして日程再調整について話し、受診の障壁を評価し、日程を再調整できるようにクリニックスタッフに電話をつなぐことを提案し、検査前準備のための事前通知電話をした。
主な知見
・予約をキャンセルしたり、予約日に来なかったりしたために質改善研究に参加した可能性が特に高い患者は、検査を受けた患者と比較して、有職者/退職者や若年である確率よりも独身/離婚/死別、英語話者、障害者/無職である確率が高かった。
・調査期間中、57%の人がMyEleanorと話をして、MyEleanorと話した人の58%(全体では33%)が、人間の患者ナビゲーターへの電話転送を受け入れて検査の日程再調整を行なった。MyEleanorの導入後、初回予約に来なかった人の大腸内視鏡検査完了率は10%から19%にほぼ倍増した。全体の患者数は36%増加した。
・参加者の50%以上が、検査には2つ以上の障壁があったと報告した。障壁となったのは多い順に、交通手段(38%)、必要性の認識不足(36%)、時間(36%)、医師から特に勧められなかった(33%)、医療不信(32%)、検査結果が心配(28%)、費用(27%)であった。 主にスペイン語を話す人、人種を明かさない人、無職・退職者は、障壁の数が最大で2倍となり、障壁数の多さは、電話転送受け入れの予測因子であった。
・費用や、検査や検査結果への恐怖が障壁となっている患者では、大腸内視鏡検査を完了する確率は低かったが、無職/障害者である患者は、電話転送を受け入れる確率が最も高く、電話転送を受け入れた患者は完了する確率が25%高かった。
・著者らによると、今回の知見は、十分なサービスを受けていない多様な英語話者およびスペイン語話者にMyEleanorが好評であったことを示している。
次のステップ
研究者らは現在、MyEleanorの効果をさらに多くの分野で測定している:
・受け損ねた大腸内視鏡検査の完了、大腸内視鏡検査前に必要な薬の受け取りと事前指示に関する3日前と7日前の事前通知電話の利用。AIシステムは、薬の受け取りを調整し、事前ケア指示を伝え、ケア評価の障壁を解析することができる。
・著者らは、MyEleanorが肺がんおよび乳がんの検査受診を支援する可能性を検討している。
・患者ナビゲーターの負担と満足度、患者の満足度、ケアコストに対するMyEleanorの効果を測定する。
・さまざまながん検診プログラムにおけるがん検診の障壁の増加、パターン、および予測因子を調査する。
本研究は、モンテフィオーレ・アインシュタイン総合がんセンターの質改善に特化した内部資源から資金提供された。
アブストラクト全文はこちら。
- 監訳 加藤恭郎(緩和医療、消化器外科、栄養管理、医療用手袋アレルギー/天理よろづ相談所病院 緩和ケア科)
- 記事担当者 山田登志子
- 原文を見る
- 原文掲載日 2024/05/23
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