大腸がんの増殖にFusobacterium nucleatum亜型が最大50%関連
フレッドハッチンソンがん研究センター
Nature誌に発表された研究によると、Fusobacterium nucleatumの亜型がヒトの大腸がん増殖の根底にあり、スクリーニングや治療に有用である可能性が示唆された。
フレッドハッチンソンがん研究センターの研究者らは、口腔内で一般的に認められる微生物の特定の亜型が腸まで移動し、大腸がん腫瘍内で増殖することを発見した。この微生物はがんの進行を促進し、がん治療後の患者の転帰を悪化させる原因ともなる。
3月20日にNature誌で発表された同研究結果によって、大腸がんの治療方法および早期スクリーニングの改善に役立つ可能性がある。アメリカがん協会によると、米国において大腸がんは成人のがん死亡原因の2位である。
フレッドハッチンソンがん研究センターの研究チームは、200人の患者から摘出した大腸がん腫瘍を検査し、Fusobacterium nucleatumのレベルを計測した。症例の約50%において、腫瘍内に微生物の特定の亜型を認め、健常組織と比較して上昇していることを同研究者らは発見した。
研究者らはまた、健常者の便サンプルと比較して、大腸がん患者の便サンプルにこの微生物が多く含まれていることも発見した。
「Fusobacterium nucleatumを保有する大腸腫瘍の患者は、微生物を含まない患者と比較して生存率が低く、予後も不良であることが一貫して示されている」 とフレッドハッチンソンがん研究センターのがん微生物叢研究者であり、共同研究著者であるSusan Bullman博士は説明した。「現在、この微生物の特定の亜型が腫瘍の増殖に関与していることがわかってきました。微生物叢内のこの亜型を標的とする治療法およびスクリーニングは、より悪性度の高い大腸がんリスクの高い人に有用であることが示唆されている」。
本試験では、Bullman博士とフレッドハッチンソンがん研究センターの分子微生物学者である共同著者Christopher D. Johnston博士が、Washington Research Foundationのフェロー兼Johnston研究所のスタッフサイエンティストである筆頭著者Martha Zepeda-Rivera博士と共に、この微生物が、通常の環境である口腔から離れた下部消化管にどのように移動し、がんの増殖にどのように寄与するかを明らかにしようとした。
彼らはまず、将来の治療法にとって重要な発見をした。大腸がん腫瘍におけるFusobacterium nucleatumの優勢群は単一の亜種と考えられていたが、実際には "クレード "と呼ばれる2つの異なる系統群から構成されていたのである。
「この発見は、遺伝学のロゼッタストーンに出くわしたようなものです」とJohnston医学博士はのべた。「系統学的に非常に近い細菌株を持っているので、同じものだと考えていたのですが、腫瘍と口腔内の相対的な存在量に大きな違いがあることがわかりました」。
これらのクレード間の遺伝的差異を分離することにより、腫瘍浸潤性FnaC2型は、口から胃を通って移動し胃酸に耐え、その後、下部消化管で増殖出来ることを示唆する明確な遺伝的特徴を獲得していることを同研究者らは発見した。解析はクレード間の195の遺伝的差異を明らかにした。
次に、大腸がん患者の腫瘍組織と健康な組織を比較したところ、FnaC2亜型のみが大腸がん腫瘍組織に有意に豊富であり、大腸がんの増殖に関与していることを同研究者らは発見した。
200例以上の大腸腫瘍を含む2つの患者群のさらなる分子解析により、症例の約50%にこのFnaC2系統群が存在することが明らかになった。
研究者らはまた、大腸がんのある人とない人の数百の便サンプルで、大腸がんではFnaC2レベルが一貫して高いことも発見した。
「我々は、大腸がんに関連する正確な細菌の系統を特定し、その知識は効果的な予防法と治療法を開発するために重要である」とJohnston博士は述べた。
彼とBullman博士は、この試験が、細菌株を改良したものを用いて腫瘍に直接治療薬を届ける微生物細胞療法の開発に大きな可能性をもたらすと考えている。
本試験は、国立衛生研究所の国立歯科・頭蓋顔面研究所、国立がん研究所、W.M. Keck Research FoundationおよびWashington Research Foundation Fellowshipの支援を受けた。
- 監訳 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)
- 三宅久美子
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- 原文掲載日 2024/03/20
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