大腸がんサバイバーの食事に豆を取り入れると腸内環境が改善し免疫・炎症プロセスに好影響

MDアンダーソンがんセンター

食事に白インゲン豆を加えることで腸内細菌叢(マイクロバイオーム)が多様化し、がんの予防や治療に役立つ可能性

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの新たな研究によると、大腸がんサバイバーの食事に白インゲン豆を取り入れると、肥満や病気に関連するマーカーが調節され、腸と宿主の両方の健康に好影響を与える可能性がある。

eBIOMedicine誌(Lancet誌の系列誌)に11月29日に発表された調査結果によると、BE GONE試験の参加者は通常の食事に毎日1カップの白インゲン豆を追加したところ、がん予防や治療成績の改善に関連する腸内細菌叢に好ましい変化が見られた。その変化としては、α多様性すなわち善玉菌(フィーカリバクテリウム、ユーバクテリウム、ビフィドバクテリウム)が増加し、病原性細菌すなわち日和見菌が減少した。

「食事介入だけで腸内細菌叢の多様性の変化を観察することはまれであり、本研究は、容易に入手可能なプレバイオティクス食品がそのような変化をもたらす能力を強調するものです 」と責任著者であるCarrie Daniel-MacDougall博士(疫学准教授)は述べた。「8週間にわたって、参加者の腸の健康状態は改善され、有害な細菌を追い払う善玉菌の増加が顕著でした」

肥満、食生活の乱れ、胃腸の問題は、人の正常な腸内細菌叢バランスを乱す原因となる。大腸がんに罹患したことのある人や罹患している人にとって、こうした変化は炎症を引き起こし、生存に影響を及ぼす可能性がある。がん治療や前がんポリープの切除後であっても、食生活の乱れや腸内細菌叢のアンバランスは、心血管疾患とがんの両方の予防努力に悪影響を及ぼす可能性がある。

豆類、特に小粒の白インゲン豆には、腸をサポートする繊維、アミノ酸、その他の栄養素が豊富に含まれており、大腸内の善玉菌の増殖を助け、免疫系の健康をサポートし、炎症を制御することができるとDaniel-MacDougall博士は説明する。

豆類は入手しやすく費用対効果も高いにもかかわらず、軽度または急性の胃腸への副作用のためにアメリカ人に敬遠されがちであるが、そうした副作用は、適切な調理と継続的な摂取によって軽減できる。

Daniel-MacDougall博士は、適切な指導がなければ悪影響を及ぼす可能性があるため、医師に相談せずにこの食事療法を試みるべきではないと注意を促している。食事内容の変更ががんのリスク低下や治療成績の改善にどのように役立つかを明らかにするためには、さらなる研究が必要である。

ランダム化比較試験として実施されたBE GONE試験では、体格指数(BMI)またはウエストサイズによる肥満の基準を満たし、腸病変の既往がある30歳以上の男女48人を追跡調査した。この中には、大腸がんの既往歴のある患者(75%)や大腸内視鏡検査で検出された高リスクの結腸または直腸の前がん性ポリープを有する患者が含まれていた。参加者は8週間にわたり、通常の食事に従うか、圧力調理した有機白インゲン豆の缶詰を毎日1カップ摂取した。

患者は、栄養士による綿密なフォローアップとカウンセリングを受けながら、自分で食事を選択し、調理することができた。参加者は4週間ごとに便と空腹時の血液サンプルを提供し、腸内細菌叢の変化と宿主の代謝産物やマーカーを評価した。参加者は、介入期間中に少なくとも規定量の80%の豆を摂取し規定されたレジメンに週5日以上従った場合、遵守しているとみなされた。この研究の限界は、参加者が白インゲン豆の継続的な摂取を嫌がったことである。重篤な副作用は報告されなかった。

「豆が腸の炎症を誘発したり排便習慣に深刻な影響を与えることはありませんでしたが、これは大腸がんサバイバーや患者にとってきわめて重大なことです」とDaniel-MacDougall博士は語った。「しかし、参加者が豆を食べるのを止めるとプラスの効果は急速に薄れるため、健康的な習慣を維持する方法について患者を教育する必要性が浮き彫りになりました」

この研究は、天然のプレバイオティクスが豊富に含まれる食品の治療的役割を強調するとともに、高リスクのがん患者に対する一貫した持続可能な食事調整の必要性をさらに強調している。次のステップでは、研究者らはより多様なプレバイオティクス食品および腸内細菌叢の変化が免疫療法を受ける患者にどのような影響を与えるかに焦点を当てる予定である。

本試験はアメリカがん協会 (ACS)より資金提供を受け、MDアンダーソン機関研究助成金(MD Anderson Institutional Research Grant)より初期支援を受けた。追加の資金援助は、米国国立がん研究所(NCI)(P30 CA016672)、Andrew Sabin Family Fellowship Program、Cancer Prevention and Research Institute of Texas(CPRIT)(RP160097)、およびMDアンダーソンのMoon Shots Program®から提供された。研究用豆は、Northarvest Bean Growers Association, Communique Inc.が、豆とヒトの健康に関する研究を支援するために NIH に資金を申請する研究者を特定し奨励するために創設した査読付き奨励賞である Dry Bean Health Research Program の資金で独自に購入した。共著者の全リストと開示情報はこちら

  • 監訳 大野智(補完代替医療/島根大学 臨床研究センター)
  • 翻訳担当者 青山真佐枝
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2023/11/29

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

 

大腸がんに関連する記事

高用量ビタミンD3に遠隔転移を有する大腸がんへの上乗せ効果はないの画像

高用量ビタミンD3に遠隔転移を有する大腸がんへの上乗せ効果はない

研究要約研究タイトルSOLARIS(アライアンスA021703): 治療歴のない遠隔転移を有する大腸がん患者を対象に、標準化学療法+ベバシズマブにビタミンDを追加投与す...
リンチ症候群患者のためのがん予防ワクチン開発始まるの画像

リンチ症候群患者のためのがん予防ワクチン開発始まる

私たちの資金援助により、オックスフォード大学の研究者らは、リンチ症候群の人々のがんを予防するワクチンの研究を始めている。

リンチ症候群は、家族で遺伝するまれな遺伝的疾患で、大腸がん、子宮...
マイクロサテライト安定性大腸がんに第2世代免疫療法薬2剤併用が有効との初の報告の画像

マイクロサテライト安定性大腸がんに第2世代免疫療法薬2剤併用が有効との初の報告

ダナファーバーがん研究所研究概要研究タイトル再発/難治性マイクロサテライト安定転移性大腸がんに対するbotensilimab + balstilimabの併用:第1相試...
PIK3CA変異大腸がんでセレコキシブにより再発リスクが低下する可能性の画像

PIK3CA変異大腸がんでセレコキシブにより再発リスクが低下する可能性

ステージ3の大腸がん患者を対象としたランダム化臨床試験のデータを解析したところ、PIK3CA変異のある患者が手術後に抗炎症薬であるセレコキシブを服用すると、変異のない患者よりも有意に長...