2011/03/22号◆特別リポート「大腸癌における血中の癌幹細胞測定検査」

同号原文NCI Cancer Bulletin2011年3月22日号(Volume 8 / Number 6)

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◇◆◇ 特別リポート ◇◆◇

大腸癌における血中の癌幹細胞測定検査

悪性度の高い大腸癌患者のうち、術後の追加治療の効果があるとみられる患者を特定するのに有用な血液検査が日本人研究者らによって開発され、試験が行われている。

この検査では、CD133タンパク質を含む3つの分子マーカーを有す腫瘍細胞を血中で選別する。このマーカーは、自己複製能など幹細胞の特徴を示す一部の細胞で認められる。CD133なしでは検査結果から情報を得ることはできず、この癌幹細胞マーカーの重要性を示した。

3マーカーのメッセンジャーRNA(mRNA)が検出される細胞を有する患者では、無病生存率と全生存率が、血液検査でこれらのマーカーが陰性の患者より不良である。臨床でこの検査を使用できるようになるまでにはさらなる研究が必要と、帝京大学医学部飯沼久恵医師が率いる研究者らは指摘している。この知見は3月21日付Journal of Clinical Oncology誌電子版に掲載された。

「これはまさに、血中を循環する癌幹細胞の検出が直接に臨床と相関性があると示された最初の研究です」と、ミシガン大学総合がんセンター長で、この結果に関する論説の共著者であるDr. Max Wicha氏は述べた。

癌幹細胞仮説によると、腫瘍には、自己複製および腫瘍内に多様な細胞を産生できる細胞がわずかに含まれる。癌源細胞または癌幹細胞として知られるこれらの強靭な細胞は、疾患の拡大を促すと同時に、従来の治療法に抵抗性を示すと考えられる。

「この研究が示したのは癌幹細胞という存在が腫瘍増殖を促進させる点で重要である一方で、われわれがそれを血中で測定できる方法を得たことだと言えるでしょう。さらに、臨床試験で薬の有効性評価に役立つ可能性があります」とWicha氏は述べた。

より直接的な適用として、大腸癌の再発リスクのある患者を特定するのに有用かもしれない。術後に追加治療(補助療法)の追加は可能であるものの、新たに治療を施行するには、それらの治療で利益を得られる患者、および再発の可能性が低く治療による毒性作用やコストを免れることのできる患者を特定しなければならない。

研究者らはこの研究において、大腸癌患者の血中循環腫瘍細胞より、CD133と他の2つのマーカー(サイトケラチン、癌胎児抗原)のmRNAを検出するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく検査を開発した。

検査は、最初、保管されていた患者420人の検体を用いて、次にプロスペクティブ確認試験に登録した別の患者315人で評価された。

Wicha氏とその共同研究者Dr. Daniel F. Hayes氏は論説の中で、「著者らによって技術的・臨床的に綿密に取り組まれたプロスペクティブな循環腫瘍細胞(CTC)試験」であったと引用している。

すでにCTCを捉えて計測する’CellSearch’という検査の技術は、転移性乳癌、前立腺癌、大腸癌患者での予後判定ツールとして、その使用がFDAの審査を通過している。特定の域値を超えるCTC数(大腸癌では検体当たり3以上)は予後不良と関連し、疾患が進行していることを示していると考えられる。

CellSearchの技術では、EpCAM(上皮細胞接着分子)およびサイトケラチンタンパクに対する抗体を用いてCTCを検出する。しかしこれらの上皮性マーカーは、多くの癌幹細胞および他の形質転換した腫瘍細胞には発現していない可能性があり、それらは血中に流出し体の他の部位においても陰性を示す。

このことは、「一般的なCTCマーカーでは循環中の最も悪性度の高い細胞を検出できない可能性」を示唆している、と著者らは記述する。また、今回の研究で評価した検査の限界は、単一細胞を捉えられないこととも言及している。しかし、この技術にはEpCAM陰性と考えられる一部の癌源細胞を検出する可能性がある。

「CellSearch検査の問題は、癌という疾患に極めて重要と考えられる多くの癌幹細胞を見逃す可能性があることです」とWicha氏は語った。彼らのグループは、幹細胞に関連する複数のマーカーを単一細胞上で検出できる検査の開発に取り組んでいる。「ミシガン大学での今後の臨床試験で、循環中の癌幹細胞を評価する要素を取り入れるつもりです」と同氏は述べた。

「今回の知見はまさに、正確なマーカーを有す適切な細胞の検出技術を開発する上でのわれわれのニーズの方向性に合致するものです。まだ初期段階ではありますが」と付け加えた。

— Edward R. Winstead

参考文献:循環腫瘍細胞(CTC)検査の実用化に向けて(NCIキャンサーブレティン2009年12月15日号クローズアップ記事)

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榎 真由 訳

鵜川 邦夫(消化器内科/鵜川病院) 監修 

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