大腸癌の再発予防法を探るための新臨床試験(PACES)開始

米国国立がん研究所(NCI)バックグラウンダー

原文掲載日 :2013年7月25日

米国において発症率が第3位の癌(皮膚癌以外)であり、また癌関連の死亡も第3位である大腸癌は深刻な病である。

しかしながら2006〜2010年に調査されたNCIの最新の統計によると、治療法の向上や、死亡を減少させることが明らかである大腸癌検診の検査が一般に受け入れられたことにより、大腸癌の死亡者数は減少している。

大腸癌は今でも死に至る病気である。そして大腸癌と診断され治療を受けた人は、その後に新たな大腸癌を発症するリスクが高い。

初回治療後の大腸癌の再発懸念に対処するため、NCIはSWOG(NCI’s National Clinical Trials Networkである5つの臨床試験協力団体の1つ)やCancer Prevention Pharmaceuticals, Incと共同で第3相試験の発表を最近行った。

PACES(The Preventing Adenomas of the Colon with Eflornithine & Sulindac)試験は、過去に大腸癌の治療を行った患者は、エフロルニチンとスリンダクのどちらかまたは両剤を定期的に服用することで新たな大腸癌や大腸腺腫(大腸壁に発生するポリープの1種で前癌状態の場合がある)の発生リスクを減少させるかどうかを検討するものである。

この2つの薬剤は、体内のポリアミン値を低下させる作用がある。ポリアミンとは自然に形成される分子で、大腸癌の発生に関わっている。また両剤は異なる機序で作用しており、エフロルニチンはポリアミンの産生を遅らせる効果があり、スリンダクは過剰なポリアミンを排除する効果がある。

「PACES試験は、大腸癌治療後の再発予防の研究に加えて、治療後の再発リスクが最大である患者を特定する上で助けとなる新しいゲノム技術を用いる重要な試験である」と、NCI癌予防部門のCommunity Oncology and Prevention Trials Research GroupのチーフであるDr. Worta McCaskill-Stevens医師は述べた。

この2剤が選ばれた理由は、前回の試験で、大腸から少なくとも1個の腺腫を切除した患者でそれらの予防効果を認めたためである。その試験で両剤の併用群と対照となる非服用群の患者の新たな大腸腺腫の発生を比較したところ、その後3年間における併用群の腺腫発生率は非服用群の3分の1以下であった。

そして両剤は、高リスクの腺腫または複数の腺腫が発生する可能性を90%低下させた。McCaskill-Stevens氏は、「この試験は、エフロルニチンとスリンダクの効果を最大に得ることができる人の特定に役立つであろう」と述べた。

SWOG(かつてのSouthwest Oncology Group)は、主にNCIの研究助成金を得て、成人における予防と癌治療のための臨床試験を実施している。SWOGは、米国において最大の癌臨床試験共同研究グループの1つである。

原文

翻訳担当者 野川恵子

監修 畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)

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