大腸癌と肝転移の患者に対する化学療法にアービタックスを加えることにより生存率が上昇

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Journal of Clinical Oncology誌に発表されたある研究結果によると、切除不能肝転移を伴う大腸癌患者に対して、アービタックス®(セツキシマブ)を標準的化学療法に加えることで、肝転移が切除できるようになるかもしれない。

米国内では依然として大腸癌が、癌による死因の第2位となっている。転移した大腸癌とは、大腸から離れた部位にまで広がった癌のことを言う。

アービタックスは上皮成長因子受容体(EGFR)という、多量のがん細胞の表面にあるタンパク質の一部と結合することで、がんの成長を抑制する標的療法の一つである。 アービタックスは現在、頭頸部進行癌あるいは大腸進行癌に罹る患者の一部、すなわちKRAS遺伝子変異陰性(KRAS遺伝子野生型としても知られる)、EGFR遺伝子陽性、転移の発生した大腸癌患者に対する治療法として認可されている。

研究者らは外科的切除不能な大腸癌肝転移(CLMs)への第一選択療法として、化学療法にアービタックスを加えた場合の効果を評価するため研究を行った。同研究ではKRAS野生型遺伝子大腸癌と、肝臓のみに手術不可能な転移が確認された138人の患者を対象とする。患者はアービタックスを化学療法と併用する群と、化学療法のみの群に無作為に割り当てられた(化学療法はmFOLFOX6もしくはFOLFIRIから成る)。治療は患者の手術への適性、病気の進行、あるいは許容外の毒性を示す反応が出るまで続けられた。

25カ月の経過観察後、無増悪進行生存期間中央値は7.3カ月、生存期間中央値は24.4カ月、そして3年全生存割合は全患者の30%であった。肝転移の切除率は、アービタックスと化学療法を合わせた群では25.7%(患者70人の内、18人)、化学療法のみの群では7.4%(患者68人の内、5人)であった。その上、アービタックスを使用した群では、根治目的の切除率が対照群よりも明らかに高かった。

アービタックス群の患者は化学療法のみを受けた患者に比べ、客観的奏効割合(57.1%対29.4%)、3年全生存割合(41%対18%)が向上し、また生存期間中央値が延長した(30.9カ月対21.0カ月)。肝切除を受けたアービタックス群の患者は切除を受けない患者に比べ、生存期間中央値の向上が顕著であった(46.4カ月対25.7カ月)。

研究者らは、病初では切除不可能なKRAS遺伝子野生型大腸癌の肝転移に罹る患者に、アービタックスが化学療法に加えられることで、肝転移の切除の可能性や奏効割合および生存者数が、化学療法のみの治療と比べ向上したと結論付けた。 

当研究はアジア人のみを対象として行われたため、その結果は多様な人種から構成されるより幅広い研究にて検証される必要がある。

参考文献:
Ye LC, Liu TS, Ren L, et al. Randomized controlled trial of cetuximab plus chemotherapy for patients withKRAS wild-type unresectable colorectal liver-limited metastases. Journal of Clinical Oncology. Published early online April 8, 2013. doi: 10.1200/JCO.2012.44.8308


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翻訳担当者 新保孝史

監修 畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)

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