セツキシマブを化学療法に加えることにより、肝転移のある進行大腸癌患者の一部は手術を受けることが可能になり、生存は数カ月延長する

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Nicole Racadag
571-483-1354
nicole.racadag@asco.org

ニュースダイジェスト

・Journal of Clinical Oncology誌2013年4月8日電子版で公表された試験の要約によると、セツキシマブ(アービタックス)を化学療法に追加することにより、これまで手術不能であった患者の手術が可能になり、肝転移手術の成功率は3倍に上昇した。
・この患者集団ではセツキシマブと化学療法を併用することにより、化学療法単独と比較し、全生存期間中央値は10カ月延長した。
・American Society of Clinical Oncology Cancer Communications Committeeのメンバーであり消化器癌専門家であるNeal Meropol医師による引用文
・追加情報のリンク先はCancer.NetのASCO癌情報ウェブサイト

上海で実施された臨床試験の最新の結果によれば、セツキシマブ(アービタックス)を標準的化学療法に加えることにより、大腸癌で手術不能肝転移のある患者の一部において、転移病変を外科的に摘出できるようになることがわかった。こうした手術は治癒的なものであり、一般に長期生存には欠かせないものである。この併用療法は多くの進行大腸癌患者にとっては標準治療のひとつであるが、本試験は手術不能肝転移に対する効果を研究した、初めてのランダム化試験である。

4月8日付Journal of Clinical Oncology誌では、手術施行に至らなかった手術不能肝転移患者であっても、化学療法単独と比較して、セツキシマブと化学療法の併用により腫瘍がより縮小し、生存の延長が示唆されることが報告されている。

「中国人患者ではセツキシマブを化学療法に加えることにより、腫瘍量が減少し、肝転移を手術で摘出できるようになる可能は高くなり、生存期間とQOLは改善することが我々の研究から示唆されます」と上席著者であるJianmin Xu医学博士は述べている。「今回の研究は中国人患者しか評価しませんでしたが、この結果は北アメリカおよびヨーロッパの患者にも関連するかもしれません」。

大腸癌は合衆国においては癌死亡の3番目に多い原因である。これらの死亡原因の少なくとも2/3は肝臓への拡散(転移)する腫瘍細胞よるものである。肝転移を起こした大腸癌患者の予後は深刻であり、化学療法を行っても生存期間中央値はわずか20カ月にすぎない。

肝臓は最初の転移部位となることがしばしばあり、進行大腸癌患者の30-40%では転移のみられる唯一の部位である。大腸癌患者では疾患の経過中におよそ50%で肝転移を起こす。本研究は大腸癌の初期診断時に肝転移のあった患者に焦点を合わせており、こうした患者は肝転移のある患者の15-25%を占めている。これらの患者では転移の外科的切除が長期生存の唯一のチャンスである。以前の研究によると、肝転移切除後、患者のおよそ半数が5年経過時点で生存していた。しかし、肝転移のある患者で手術適応のあるのは、わずか10-20%にすぎない。現行の治療ガイドラインでは、手術不能転移を手術可能な腫瘍に転換することを目標に、”downsizing chemotherapy(腫瘍縮小化学療法)”または化学療法と標的療法(例えば、セツキシマブ)を併用したレジメンの適応が推奨されている。本試験は、セツキシマブを化学療法に追加することにより、当初は手術不能であった腫瘍を手術可能な腫瘍に転換することができるかどうかを評価するため、特別に計画された初めての試験である。

今回の第3相臨床試験では、転移が肝臓に限られているステージⅣ大腸癌患者を化学療法とセツキシマブ併用群(A群)または化学療法単独群(B群)に無作為に割り付けた。患者にはFOLFIRI(ロイコボリン、フルオロウラシルとイリノテカン)またはmFOLFOX6(ロイコボリン、フルオロウラシルとオキサリプラチン)のいずれかの化学療法が施行された。これらのレジメンは大腸癌の標準的治療であり、副作用は異なるが、有効性は同等である。

治療後、A群では26%(70例中18例)の患者で肝転移の外科的切除が適応となったが、B群ではわずか7%(68例中5例)であった。A群でこうした転移の切除術を受けた患者は、手術を受けることのできなかった患者と比較し、平均して、有意に長期間生存した(46.4カ月 vs 25.7カ月)。化学療法単独と比較すると、併用療法により肝腫瘍縮小率(57% vs 29%)と予測3年全生存率はいずれも有意に上昇した(41% vs 18%)。全体として、A群の患者の生存期間中央値は30.9カ月、B群の患者では21カ月であった。

セツキシマブはEGFR阻害剤として知られている薬物群に属している。EGFR阻害剤は腫瘍増殖にかかわる特定の分子経路を阻害する。セツキシマブはKRAS遺伝子に変異がある腫瘍には効果のないことが知られているため、本試験はいわゆる野生型(正常)KRAS遺伝子を持つ患者だけを対象とした。大腸癌患者のおよそ60%は、正常で変異のないKRAS遺伝子を持っている。ASCOは、抗EGFR療法を行う前に、KRAS遺伝子変異の検査をルーチン化することを推奨している。

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ASCOの見解

ASCO Cancer Communications委員会のメンバーであり、消化器癌専門医であるNeal Meropol医師

「この研究により、手術不能肝転移のある患者の一部は、化学療法により手術候補者になる可能があるとする証拠がさらに加わった。これらの有力な証拠は、セツキシマブと化学療法との併用により、化学療法単独の場合よりも肝転移を手術可能な状態に転換できることを示しており、こうした多くの患者においてより長期の生存の可能性のあることや治癒の可能性のあることが提示された」。

ニュース報道への引用には、JOURNAL OF CLINICAL ONCOLOGY誌への帰属を明示のこと。

翻訳担当者 小縣正幸

監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/近畿大学付属病院)

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原文掲載日 

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