遠隔転移のある難治性大腸がんにフルキンチニブが有効
MDアンダーソンがんセンター(MDA)
遠隔転移を有する難治性大腸がんにおいて、標的治療薬fruquintinib[フルキンチニブ]が全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことを示す試験結果が、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らにより報告された。本日Lancet誌に公表された国際共同治験であるFRESCO-2試験の結果は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO) 2022で初めて発表されたものである。
全生存期間(OS)中央値はプラセボ群で4.8カ月に対しフルキンチニブ群で7.4カ月、一方、無増悪生存期間(PFS)中央値はプラセボ群で1.8カ月に対しフルキンチニブ群で3.7カ月であった。これらの結果は対照群と比較して統計学的に有意な改善を示している。
「遠隔転移を有する難治性大腸がんは治療の選択肢が非常に限られており、予後も不良です」と臨床試験責任医師のArvind Dasari医師(消化器腫瘍内科準教授)は述べている。「今回の結果は非常に有望であり、これまで他の選択肢がなかった患者にとって、フルキンチニブが新しい治療選択肢となり得ることを確認するものです」。
ランダム化、第3相FRESCO-2試験は、米国、欧州、日本、オーストラリアの153施設で実施された。この二重盲検試験では、複数の治療歴があり遠隔転移を有する治療抵抗性大腸がんを対象に、新規経口治療薬であるフルキンチニブ(低分子の血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)チロシンキナーゼ阻害薬)+支持療法(BSC)による治療と、プラセボ+支持療法による治療とを比較して評価した。主要評価項目は全生存期間(OS)であった。
アメリカがん協会によると、大腸がんは男性、女性ともにがん関連死因の第3位であり、男性と女性を合わせたがんによる死因の第2位である。治療の進歩にもかかわらず、遠隔転移を有する大腸がん患者の長期生存率は依然として低い。いくつかの治療ラインを経て病勢が進行したあと、患者は通常4~5カ月しか生きられない。したがって、現在利用可能な治療をすべて行ったあとの治療選択肢に対するニーズは非常に高い。
2018年9月に中国で本剤が承認されるきっかけとなった当初の第3相FRESCO試験では、遠隔転移を有する大腸がんを対象として第3次治療以降に投与されたフルキンチニブが、プラセボと比較してOS中央値を改善させた(9.3ヵ月対6.6ヵ月)。当時、中国では遠隔転移を有する大腸がんに対する標準治療が米国、欧州連合、日本と異なっていた。
2020年6月、米国食品医薬品局(FDA)は、治療歴のある一部の大腸がん患者に対する治療薬として、フルキンチニブに優先審査指定を与えた。
FRESCO-2試験では、進行・難治性の遠隔転移を有する大腸がん患者691人が無作為化された。患者は、遠隔転移を有する大腸がんと診断され、化学療法、抗VEGF療法または免疫チェックポイント阻害薬(疾患がマイクロサテライト不安定性高値またはミスマッチ修復欠損の場合)のいずれかの治療を受けている場合に治療に適格とされた。患者はECOGパフォーマンスステータス評価尺度のスコアが0か1であり、測定可能な病変があり、予想生存期間が12週間以上であった。
患者は、フルキンチニブまたはプラセボを3週間毎日投与した後1週間休薬する28日サイクルで治療を受けた。その後の抗がん剤治療は、フルキンチニブ群で29.4%、プラセボ群で34.3%に行われた。病勢コントロール率は、フルキンチニブ群で55.5%、プラセボ群で16.1%であった。
グレード3または4の治療関連有害事象は、フルキンチニブ群で62.7%、プラセボ群で50.4%に発現した。フルキンチニブ投与群で特に多く認められた事象は、高血圧(13.6%)、無力症(7.7%)、手足症候群(6.4%)であった。
「本試験は、フルキンチニブの有意義な生存期間の改善と管理可能な安全性プロファイルを支持するものです」とDasari氏は述べている。「この治療が進行大腸がん患者の延命と生活の質の維持につながることを期待しています」。
進行大腸がん患者は、腫瘍量が多く、生活の質を低下させることが知られている、複数の治療による副作用が残存しているため、研究者らは、試験参加者の生活の質のデータを継続して再評価する予定である。進行中および今後の研究では、さらに、大腸がん患者に対するフルキンチニブの併用療法について詳しく調査を行う予定である。
本試験は、Hutchison MediPhama Limited社から支援を受けている。Dasari氏はHutchison MediPharma社から研究支援を受け、アドバイザーを務めている。共同著者のリストと開示情報はこちらを参照。
- 監修 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院)
- 翻訳担当者 山口みどり
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- 原文掲載日 2023/06/15
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