パニツムマブは前治療歴を有する結腸直腸癌患者の転帰を改善する

キャンサーコンサルタンツ
2010年1月

国際ランダム化試験の研究者らは、KRAS野生型の結腸直腸癌患者に対する二次治療として、Vectibix(パニツムマブ)をFOLFIRI(5-フルオロウラシル、Camptosar[イリノテカン]、ロイコボリン)療法へ上乗せすることにより、無増悪生存期間(PFS)が延長することを報告した。この結果は、2010年度米国臨床腫瘍学会消化器癌シンポジウム(ASCO Gastrointestinal Cancers Symposium)で発表された。

Vectibixは、癌細胞表面の特定の標的に結合する新しい標的治療薬である。Vectibixは、癌の増殖や転移に関与する生物学的経路である上皮成長因子受容体(EGFR)を標的にしている。Vectibixは、転移性結腸直腸癌患者の二次治療として米国食品医薬品局(FDA)により承認されている。Vectibixは、KRAS野生型を発現し、KRAS変異型を有しない癌患者に対してのみ有用であると考えられる。それらの患者は、転移性結腸直腸癌の約40〜50%にみられる。KRASの変異状態は、腫瘍組織の標本を検査することによって識別できる。

転移性結腸直腸癌の二次治療におけるVectibixの有効性を評価するために、研究者らは、1,186人の患者を対象とした第3相臨床試験を実施した。試験に参加した患者は、FOLFIRI単独治療群とFOLFIRI+Vectibix併用治療群に割り付けられた。

  • KRAS変異を有しない患者では、Vectibixを上乗せすることにより無増悪生存期間が改善した。無増悪生存期間は、化学療法単独治療群の患者で3.9カ月であるの対し、化学療法とVectibix併用治療群の患者では5.9カ月であった。Vectibixを上乗せすることにより、全生存期間の有意な改善はみられなかった。
  • KRAS変異を有する患者では、Vectibixを上乗せすることにより無増悪生存期間または全生存期間の改善はみられなかった。
  • Vectibixの副作用として、皮膚発疹、低マグネシウム血症、下痢が挙げられる。

コメント:これらの結果から、二次化学療法に標的治療薬Vectibixを上乗せすることによって、転移性結腸大腸癌患者の無増悪生存期間を改善することが確認された。その有用性は、KRAS変異を有しない腫瘍患者に対してのみ当てはまる。

参考文献:

Peeters M, Price T, Hotko Y et al. Randomized phase III study of panitumumab (pmab) with FOLFIRI versus FOLFIRI alone as second-line treatment (tx) in patients (pts) with metastatic colorectal cancer (mCRC): Patient-reported outcomes (PRO). Presented at 2010 ASCO Gastrointestinal Cancers Symposium. Orlando, FL, January 22-24, 2010. Abstract 282.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 森島 由希

監修 千種 葉月(薬学)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

大腸がんに関連する記事

運動で結腸がんサバイバーの生存期間を延長の画像

運動で結腸がんサバイバーの生存期間を延長

ダナファーバーがん研究所が共同で主導した研究により、運動が結腸がんサバイバーの生存期間を延ばし、がんを患っていない人々と同等の生存期間に近づく可能性があることが明らかになった。

ダナファ...
大腸がん、膵がんにおける遺伝子変異がKRAS G12C阻害薬の一次耐性に関与の画像

大腸がん、膵がんにおける遺伝子変異がKRAS G12C阻害薬の一次耐性に関与

フィラデルフィア―KRAS G12C変異を伴う大腸がんと膵管腺がんは、KRAS G12C阻害剤の投与歴がなくとも、KRAS G12C阻害剤への耐性に関連し得るKRAS G12C以外の遺...
大腸がんにエンコラフェニブ+セツキシマブ+mFOLFOX6療法は奏効率を大幅に改善の画像

大腸がんにエンコラフェニブ+セツキシマブ+mFOLFOX6療法は奏効率を大幅に改善

BREAKWATER試験結果第3相BREAKWATER試験では、BRAF V600E変異型転移性大腸がん(mCRC)患者の一次治療として、エンコラフェニブ(販売名:ビラフトビ)...
炎症性腸疾患(IBD)患者の大腸がんリスクをDNA検査が予測の画像

炎症性腸疾患(IBD)患者の大腸がんリスクをDNA検査が予測

ロンドンの英国がん研究所(ICR)の科学者らの研究によると、新しいDNA検査法によって、炎症性腸疾患(IBD)患者のうち大腸がんのリスクが最も高い人を特定できることが判明した。
 
研究チ...