転移性大腸癌化学療法用の新薬の費用対効果が疑問視される

キャンサーコンサルタンツ
2010年3月

エモリー大学(Emory University)の研究者らは、大腸癌化学療法の新薬は「生存期間の延長に結びつくが、大幅なコスト増大にも結びつく」と報告した。この研究結果は、2010年3月16日にArchives of Internal Medicine誌のオンライン版で発表された。[1]

転移性大腸癌の治療は、米国食品医薬品局(FDA)に1996年に承認されたカンプトサール(イリノテカン)、1998年に承認されたゼローダ(カペシタビン)、2002年に承認されたアバスチン(ベバシズマブ)、および同じく2002年に承認されたアービタックス(セツキシマブ)などの化学療法のための新薬の導入により向上している。

今回の研究では、Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)-Medicareデータベースのデータを使用して、転移性大腸癌治療用の新薬の影響を測る指標として、1995年と2005年の間の期待余命と治療費が評価された。この期間中、転移性大腸癌の患者の期待余命は6.8カ月伸びて、費用は37,000ドル増加した。損失余命削減1年当たりに要する費用は、66,200ドルであった。実際の個人支払いおよびその他の要因について調整後、QOLで調整した生存年数のコストは、99,100ドルであった。研究者らは次のように結論づけている。「これらの医薬品をひとまとめにした費用効果比は、一般に引用されている、生存年数のために支払いたいと考える額の推定よりも低い。しかし、新規の化学療法剤を制限なしに適用するポリシーは、費用が増加し続けるにしたがい、維持が困難になる可能性がある」

コメント:これらのデータにより、比較的利益の小さい新しい医薬品のコストに関する非常に重要な懸念が提起されている。大腸癌に当てはまる事実は、新薬に関して、非小細胞肺癌など他の癌にも当てはまる。

参考文献:

[1] Howard DH, Kauh J, and Lipscomb J. The value of new chemotherapeutic agents for metastatic colorectal cancer. Archives of Internal Medicine. 2010;170: e-pub on March 16.


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翻訳担当者 桝谷哲

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

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