セレブレックス®は大腸腺腫の再発を減少させるが、心血管系疾患のリスクを高める

キャンサーコンサルタンツ
2006年8月

2つのランダム化試験によって、セレブレックス(セレコキシブ)が結腸直腸腺腫再発のリスクを減少させることがわかった。しかし、セレブレックスの使用は、心血管系の副作用のリスクを増加させた。これら2つの試験の詳細は、New England Journal of Medicineの2006年8月31日号に掲載された。

シクロオキシゲナーゼ(COX)はプロスタグランジン合成を触媒する酵素である。COX-1及びCOX-2は2種類のアイソフォームで、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)により阻害される。COX-1は、多くの細胞種において構成的に発現しており、一方COX-2は誘導酵素で、その発現及び活性は、種々のサイトカイン、成長因子、発癌プロモーターに対する反応によって亢進される。シクロオキシゲナーゼ2は結腸直腸癌の71%から85%において過剰発現している。2つの強力なCOX-2阻害剤、セレブレックス及びVioxxは、結腸直腸癌の予防に対する第3相試験中であったが、心血管毒性の増加に対する懸念から、最近これらの試験は中止された。

1つ目の臨床試験は、特発性結腸直腸腺腫ポリープの予防(PreSAP)試験と呼ばれ、事前に腺腫を摘出した1561人の患者が参加した。これらの患者のうち、840人が毎日400mgのセレコキシブ投与を受け、557人はプラセボを投与された。フォローアップのための結腸内視鏡検査を、1年後には89%の患者が受け、3年後には79%が受けた。

・3年後の時点で、腺腫は、セレブレックスを投与された患者のうち33.6%に検出されたのに対し、プラセボを投与された患者では49.3%であった。
・3年後の時点で、進行性の腺腫は、セレブレックスを投与された患者のうち5.3%に検出されたのに対し、プラセボを投与された患者では10.4%であった。
・重篤な心血管系副作用は、セレブレックスを投与された患者のうち2.5%に発生したのに対し、プラセボを投与された患者では1.9%であった。

腺腫予防試験(Adenoma Prevention with Celecoxib Trial:APC)試験医師により実施されたセレコキシブの試験は、結腸直腸腺腫の既往歴のある2035人の患者において、プラセボに対する1日用量200mgと400mgの比較を行った。患者は、薬剤又はプラセボの投与を2.8~3.1年間受けた。最初の分析データが、2005年3月にNew England Journal of Medicineに掲載された(関連ニュース参照)。現在の分析では、1年後の90%の患者及び、3年後の76%の患者における、結腸内視鏡フォローアップ試験も含まれている。

・3年以内に、フォローアップ結腸内視鏡試験により、プラセボを投与された患者の約61%、低用量のセレブレックスを投与された患者の43.2%、高用量のセレブレックスを投与された患者の37.5%に、腺腫が検出された。
・重篤な副作用は、コントロール群では19%の患者に発生したのに対し、セレブレックス群では20.4%であった。
・心血管系副作用のリスクは、低用量セレブレックス群では2倍、高用量セレブレックス群では6倍増加した。

試験医師らは、セレブレックスの使用は、以前に腺腫の診断を受けた患者において、その後の結腸直腸腺腫のリスクを有意に減少させる、と結論付けた。しかし、セレブレックスの使用はまた、心血管系副作用のリスク増加を伴うことから、予防的薬剤としての使用には安全でない可能性がある。

コメント

COX-2阻害剤は、大腸における腺腫の再発を予防することは明かであるが、心血管毒性の有意な増加の可能性も伴うことから、本目的のための使用は除外されるだろう。加えて、このようなポリープ再発の予防が、結腸直腸癌の罹患を減少させるのかどうか、いまだ立証されていない。


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 Oonishi

監修 瀬戸山 修(薬学)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

大腸がんに関連する記事

高用量ビタミンD3に遠隔転移を有する大腸がんへの上乗せ効果はないの画像

高用量ビタミンD3に遠隔転移を有する大腸がんへの上乗せ効果はない

研究要約研究タイトルSOLARIS(アライアンスA021703): 治療歴のない遠隔転移を有する大腸がん患者を対象に、標準化学療法+ベバシズマブにビタミンDを追加投与す...
リンチ症候群患者のためのがん予防ワクチン開発始まるの画像

リンチ症候群患者のためのがん予防ワクチン開発始まる

私たちの資金援助により、オックスフォード大学の研究者らは、リンチ症候群の人々のがんを予防するワクチンの研究を始めている。

リンチ症候群は、家族で遺伝するまれな遺伝的疾患で、大腸がん、子宮...
マイクロサテライト安定性大腸がんに第2世代免疫療法薬2剤併用が有効との初の報告の画像

マイクロサテライト安定性大腸がんに第2世代免疫療法薬2剤併用が有効との初の報告

ダナファーバーがん研究所研究概要研究タイトル再発/難治性マイクロサテライト安定転移性大腸がんに対するbotensilimab + balstilimabの併用:第1相試...
PIK3CA変異大腸がんでセレコキシブにより再発リスクが低下する可能性の画像

PIK3CA変異大腸がんでセレコキシブにより再発リスクが低下する可能性

ステージ3の大腸がん患者を対象としたランダム化臨床試験のデータを解析したところ、PIK3CA変異のある患者が手術後に抗炎症薬であるセレコキシブを服用すると、変異のない患者よりも有意に長...