イリノテカン単剤に奏効しない難治性大腸癌患者においてアービタックス/アバスチンより、アービタックス/アバスチン/ Camptosar®は効果的である

キャンサーコンサルタンツ
2007年10月

BOND-2試験に携わっている研究者らが、Camptosar〔日本名:カンプト〕 (イリノテカン) の有無に関わらず、Erbitux〔アービタックス〕(cetuximabセツキシマブ)へのアバスチン(ベバシズマブ) の追加が、Camptosar単剤に奏効しない進行結腸直腸癌患者に効果的である、と報告した。この試験の詳細はJournal of Clinical Oncology誌2007年10月10日号に掲載された。

アービタックスは一部の癌の増殖や転移を防ぐ標的薬剤である。アービタックスは細胞の増殖や転移に必要な生物学的経路の構成物である上皮増殖因子受容体(EGFR)を標的として結合する。Camptosarにアービタックスの追加はCamptosar単剤に奏効しない患者において効果が実証された。アバスチンもまた癌細胞への血管供給に必要な血管内皮成長因子受容体(VEGF)を標的とすることで、一部癌の増殖や転移を遅らせたり防いだりする。血管は酸素や栄養素を運び、癌細胞の増殖や転移を可能とする。アービタックスとアバスチンは細胞増殖に異なる経路を標的とするため、単剤での使用より併用することで抗癌活性が増加すると考えられている。

研究者らは、肝転移した結腸直腸癌患者の治療における、アービタックスを評価する臨床試験を最近実施した。この試験はCamptosar単剤には奏効しなかった進行直腸結腸癌患者83名を含む。いずれの患者もアービタックスもしくはアバスチン治療は以前受けていない。ひとつの患者群はアービタックス+アバスチン+Camptosarの治療を受け、もうひとつの群はアービタックス+アバスチンの治療を受けた。

 癌進行までの期間は、アービタックス+アバスチンの治療を受けた患者の4.9ヶ月に対して、アービタックス+アバスチン+Camptosarの治療を受けた患者は7.3ヶ月であった。
 奏効率は、アービタックス+アバスチン治療を受けた患者では20%だったのに対してアービタックス+アバスチン+Camptosarの治療を受けた患者では37%だった。
 全生存は、アービタックス+アバスチン治療を受けた患者の11.4ヶ月に比べ、アービタックス+アバスチン+Camptosarを受けた患者は、14.5ヶ月だった。

これらの研究者らはアービタックス単剤のデータを含む過去のデータと比較した場合、アービタックスおよびCamtosarにアバスチン追加、また、アービタックスのみに対するアバスチンの追加はCamptosar単剤に奏効しない進行性直腸結腸癌患者の治療効果を高めると結論づけた。なお、アバスチン+アービタックスへのCamptosar追加は、アバスチン+アービタックスだけよりも抗癌活性の改善をもらたす。

コメント

これらのデータは、進行性および難治性結腸直腸癌の治療におけるアービタックスとアバスチン併用の有効性を立証する。

参考文献:

Saltz L, Lenz H-J, Kindler H, et al. Randomized Phase II trial of cetuximab, bevacizumab, and irinotecan compared with cetuximab and bevacizumab alone in irinotecan-refractory colorectal cancer: The BOND-2 Study. Journal of Clinical Oncology. 2007; 25:4557-4561.

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翻訳担当者 下和田 篤子

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

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