周術期化学療法は、肝転移の転帰を改善する

キャンサーコンサルタンツ
2008年3月

国際多施設ランダム化試験を行った研究者らは、周術期化学療法が結腸直腸癌で肝臓への転移のある患者の転帰を改善すると報告した。本試験の詳細は、Lancetの2008年3月22日号に掲載された。[1]

結腸直腸癌は、依然として米国における癌に関連した死亡原因の第2位である。肝転移は、進行した患者ではよくみられ、中には治癒する者もいると考えられるため、切除可能な肝転移患者に対する最適な取組みが評価され続けている。

今回の試験では、結腸直腸癌からの切除可能な肝転移患者において、術前と術後化学療法の使用を評価した。本試験では、364名の患者を無作為に2つの群に割りつけた。

1群は手術単独、もう1群には、6サイクルで3ヶ月間FOLFOX4レジメン(エルプラット(※シスプラチンの米国商品名) 85mg/m2+ロイコボリン+5-フルオロウラシル)による術前化学療法を行った後、手術を行い、その後さらにFOLFOX4レジメン6サイクルの治療を行った。最終的なITT解析を行った患者は342名であった(各群171名ずつ)。化学療法群の患者151名と手術単独群の152名は、実際に外科的切除を受けた。

3年間の観察で、化学療法を受けた群は、無増悪生存期間が7.3%改善した。外科的切除を受けた患者における改善は、9.2%であった。死亡は、化学療法群で64名、手術単独群で75名であった。手術後の死亡は、化学療法群で1名、手術単独群で2名であった。副作用は、化学療法群でより頻発したが、全ては可逆性であると説明された。

研究者らは、切除可能な結腸直腸癌の肝転移患者において、FOLFOX4による術前と術後化学療法は、手術単独の場合と比較して無再発生存期間を有意に改善すると結論した。さらに、こうした転帰の改善は、重大な毒性なしで達成されると考えられる。

コメント

本研究により、周術期化学療法が、結腸直腸癌からの肝転移患者において有益であり、毒性はあまり大きくないと考えられる。

参考文献
[1]Nordinger B, Sorbye H, Glimellius B, et al. Perioperative chemotherapy with FOLFOXX4 and surgery versus surgery alone for respectable liver metastases from colorectal cancer (EORTC Intergroup trial 40983): a randomized controlled trial. The Lancet. 2008;371:1007-10016.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 入江 瑞穂

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

大腸がんに関連する記事

高用量ビタミンD3に遠隔転移を有する大腸がんへの上乗せ効果はないの画像

高用量ビタミンD3に遠隔転移を有する大腸がんへの上乗せ効果はない

研究要約研究タイトルSOLARIS(アライアンスA021703): 治療歴のない遠隔転移を有する大腸がん患者を対象に、標準化学療法+ベバシズマブにビタミンDを追加投与す...
リンチ症候群患者のためのがん予防ワクチン開発始まるの画像

リンチ症候群患者のためのがん予防ワクチン開発始まる

私たちの資金援助により、オックスフォード大学の研究者らは、リンチ症候群の人々のがんを予防するワクチンの研究を始めている。

リンチ症候群は、家族で遺伝するまれな遺伝的疾患で、大腸がん、子宮...
マイクロサテライト安定性大腸がんに第2世代免疫療法薬2剤併用が有効との初の報告の画像

マイクロサテライト安定性大腸がんに第2世代免疫療法薬2剤併用が有効との初の報告

ダナファーバーがん研究所研究概要研究タイトル再発/難治性マイクロサテライト安定転移性大腸がんに対するbotensilimab + balstilimabの併用:第1相試...
PIK3CA変異大腸がんでセレコキシブにより再発リスクが低下する可能性の画像

PIK3CA変異大腸がんでセレコキシブにより再発リスクが低下する可能性

ステージ3の大腸がん患者を対象としたランダム化臨床試験のデータを解析したところ、PIK3CA変異のある患者が手術後に抗炎症薬であるセレコキシブを服用すると、変異のない患者よりも有意に長...