アービタックス+FOLFIRIは転移性大腸癌に対する一次治療として、無再発期間を改善

キャンサーコンサルタンツ
2009年4月

FOLFIRI化学療法にアービタックス®(セツキシマブ)を追加投与すると、転移性大腸癌患者において増悪リスクが減るとCRYSTAL試験の研究者らは報告した。本研究の詳細は、New England Journal of Medicine誌2009年4月2日号に掲載された。[1] 

アービタックスは、上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外ドメインと結合するキメラ型モノクローナル抗体である。アービタックスは現在、放射線治療との併用療法で、局所進行頭頸部癌の治療薬として承認されている。また、単剤では、先行の白金製剤をベースとした諸治療に耐性を示す進行性の上皮成長因子受容体(EGFR)発現のある頭頸部癌の治療薬として承認されている。アービタックスはまたイリノテカン〔日本名:カンプト、トポテシン〕と併用で、上皮成長因子受容体(EGFR)発現のある転移大腸癌で先行のイリノテカンベースの諸治療に抵抗性となった患者に対する治療薬として、さらに、単剤では、上皮成長因子受容体(EGFR)発現のある進行大腸癌でイリノテカンベースの諸治療に不適格の患者に対する治療薬として承認されている。最近のデータでは、KRAS遺伝子変異を有する場合、アービタックスやVectibix®(パニツムマブ)などその他のEGFR阻害剤を大腸癌患者に使用するのは不適切であることが示されている。

上皮成長因子受容体(EGFR)発現のある転移性大腸癌に対する一次治療としてアービタックスを追加したFOLFIRIとFOLFIRI単独療法を比較するCRYSTAL試験の早期報告では、アービタックス追加群における有害事象は認容できる範囲内であったと示されている。

FOLFIRIはよく使われる、イリノテカンをベースとして5-FU、ロイコボリンを用いるレジメンである。ヨーロッパ、中国、ロシアにおける複数の研究機関の研究者らは、FOLFIRIへのアービタックス(第1週に400mg/m2、その後毎週250mg/m2)追加を評価したオープンラベルの第3相多施設ランダム化比較試験の結果を報告した。この試験には、アービタックス/FOLFIRIを投与される599人の患者と、アービタックスなしでFOLFIRI単独投与を受ける599人の患者が参加した。

全体的解析
・完全ないし部分奏効率は、アービタックス投与群が47%、対照群が39%。統計的に有意。

・無増悪生存期間中央値は、アービタックス投与群の8.9カ月に対し、FOLFIRI単独群では8.0カ月。増悪リスクが15%減少し、統計的に有意。

・全生存期間中央値は、アービタックス投与群が20カ月、対照群が19カ月。統計的な有意差はなし。

アービタックスを投与された患者のKRAS遺伝子変異状態ごとの結果

・無増悪生存期間中央値は、KRAS遺伝子変異のない患者が9.9カ月、KRAS遺伝子変異を有する患者が7.6カ月。

・生存期間中央値は、KRAS遺伝子変異のない患者が25カ月、KRAS遺伝子変異を有する患者が17.5カ月。

・奏効率は、KRAS遺伝子変異のない患者が59%、KRAS遺伝子変異を有する患者が36%。

アービタックスによる主な有害事象は、皮膚反応、投与時関連反応、下痢などであった。アービタックスは、野生型KRAS遺伝子(変異なし)の患者には有益であるが、KRAS遺伝子変異を有する患者には有益ではないと、著者たちは結論している。

コメント
これらのデータは、アービタックスがKRAS遺伝子に変異のない患者には有益であるが、KRAS遺伝子に変異を有する患者には有益ではないことを裏づけている。

参考文献
[1] Cutsem EV, Kohne C-H, Hitre E, et al. Cetuximab and chemotherapy as initial treatment for metastatic colorectal carcinoma. New England Journal of Medicine. 360 2009;1408-1417.


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翻訳担当者 盛井 有美子

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

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