PREMMplusオンラインツールで遺伝的がんリスク検査が有効な人を特定
ダナファーバーがん研究所の研究者と医師が開発したオンラインツールにより、特定のがんの発症リスクを高める遺伝的変異について検査を受けるべき人々を正確かつ迅速に特定できることが、新しい研究で示された。
PREMMplusと呼ばれるこのツールは、がんに関連する約20の遺伝子に遺伝的変異または生殖細胞系列変異が存在する可能性が高い患者を評価する。高確率を示した人は、遺伝子検査を受けてそのような変異があるかどうかを判定し、がんを予防したり、できるだけ早期の発見をしたりする対策を講じることができる。
このツールは、がんの遺伝的リスクと遺伝カウンセリングの分野が急速に変化している現在、明確なニーズを満たすものであると、Journal of Clinical Oncology誌に本日オンライン掲載された研究論文の著者らは述べている。
「わずか10年前と比べても、より多くのがんに関連する遺伝的変異が現在わかっており、多くのがんセンターでは患者や家族に対してこれらの変異を検査することが標準となっています」と、この新しい研究の統括著者であるダナファーバーがん研究所およびブリガム&ウィメンズ病院のSapna Syngal医師・公衆衛生学修士は述べている。「どのような人が生殖細胞系列検査を受ける価値があるのかを判断することは、ますます複雑になっています。同時に、検査に先立って従来型の面談を行うことが可能な遺伝カウンセラーは不足しています」。
PREMMplusは、年齢、性別、人種、18種類のがんの罹患歴、家族歴について質問し、これらのがんに関連する19種類の遺伝子のいずれかが遺伝的に変異している確率を算出する。そして、これらのがんに関連する19の遺伝子のいずれかに遺伝性の変異がある確率を計算する。研究者は、その確率が2.5%以上の人に、その突然変異を持つかどうかを確認するための検査を推奨する。
PREMMplusモデルは、ダナファーバーの遺伝学プログラムにおいて15年間に遺伝性がんリスクの検査を受けた成人7,280人のデータを用いて開発されたものである。遺伝カウンセラーが参加者一人一人と面談し、個人データとがん発症に関する詳細な家族歴を収集した。ダナファーバーのデータサイエンティストは、遺伝子検査の結果とカウンセラーが収集した情報を関連付けることで、個人が19のがん関連遺伝子のいずれかに遺伝的変異を持つ可能性を予測するアルゴリズムを作成した。
今回の研究では、ダナファーバーとカリフォルニアに拠点を置くAmbry Genetics社で、複数のがん感受性遺伝子の生殖細胞系列検査を受けた3万人以上の人々を対象に、PREMMplusの予測力を検証した。特定の生殖細胞系列の変異を有すると予測された人の大多数が、遺伝子検査によって実際にその変異を有していたことから、PREMMplusの感度の高さが示された。同様に、特定の生殖細胞系列の変異を持たないと予測された人が、遺伝子検査によって実際にはその変異を持たなかったことから、高い特異度も示された。
「今回の結果は、PREMMplusが、患者や家族が遺伝子検査や遺伝カウンセリングを受ける際のモデルを変える可能性があることを示しています」とSyngal氏は述べている。従来、医師や患者ががんの家族歴について心配する場合、患者は遺伝クリニックに紹介され、そこでカウンセラーが完全な家族歴を聴取していた。PREMMplusは、患者の電子カルテに直接組み入れることができ、患者自身がアンケートに答えることができる。その結果に基づいて、医療従事者は遺伝子検査を受けるべき人を決定することができる。
「遺伝カウンセラーが不足している現在、PREMMplusはリスク評価を効率化し、遺伝子検査の結果やがん感受性遺伝子が見つかった場合の選択肢を理解してもらうという、遺伝カウンセラーが最も必要とされることに時間を集中させることができます」。
本研究の筆頭著者は、ダナファーバーがん研究所およびブリガム&ウィメンズ病院のMatthew B. Yurgelun医師とダナファーバーの宇野一博士である。 共著者はC. Sloane Furniss博士、Chinedu Ukaegbu医学士・公衆衛生学修士、Miki Horiguchi医学博士とAnu Chittenden修士・機関遺伝カウンセラー(以上ダナファーバーがん研究所)、ダナファーバーがん研究所およびブリガム&ウィメンズ病院のJudy E. Garber医師・公衆衛生学修士、Ambry Genetics社のAmar YussufとHolly LaDuca修士・認定遺伝カウンセラーである。
本研究は、米国国立衛生研究所 R01 CA132829 により資金提供を受けた。
日本語記事監訳:石井一夫(計算機統計学/公立諏訪東京理科大学工学部 情報応用工学科)
翻訳担当者 伊藤彰
原文掲載日
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