アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用は一部の神経内分泌腫瘍(NET)に有効な可能性
一部の神経内分泌腫瘍(NET)において、ベバシズマブ(販売名:アバスチン)とアテゾリズマブ(販売名:テセントリク)の併用療法が転帰を改善する可能性が非ランダム化試験で示唆された。
「1件の小規模単群試験の結果だけに基づいて診療を変えることはできないし、変えるべきではないが、一部の神経内分泌腫瘍患者で免疫応答を誘導できる有望な可能性が今回のトランスレーショナル研究の結果で示唆されています」と、ヒューストンのテキサス大学MDアンダーソンがんセンターのDaniel Halperin医師はロイター ヘルスに対し電子メールで答えた。
Halperin医師は、「幸いにも現在、NCT03290079試験(原文)など、同様の方法を探る研究がさらに進行中です。今回の研究で認められた知見をわれわれの仲間がより補強することでこの分野の発展が持続し、患者が有効な免疫療法を選択できるようになることを期待しています」と述べている。
進行性高分化型神経内分泌腫瘍に対する治療法は、「近年進歩が見られ発展してはいるものの、死亡率をみると依然として不十分なままです。他のがんでは、免疫療法により長期の病勢コントロールと腫瘍縮小を得られていますが、神経内分泌腫瘍に対する抗PD-L1 (プログラム細胞死1)抗体単剤での初期の前向き研究では望ましい結果は出ていません」と、Halperin医師らはJAMA Oncology誌で述べている。
Halperin医師らは、膵神経内分泌腫瘍患者(pNET)20人と膵外神経内分泌腫瘍患者(epNET)20人からなるグレード1または2の進行性神経内分泌腫瘍患者(年齢中央値59歳、女性35%)40人を対象に、ベバシズマブ(血管内皮増殖因子阻害薬)+アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)併用療法の単群非盲検非ランダム化試験を実施し奏効率を評価した。
ベバシズマブとアテゾリズマブを標準用量で3週間ごとに患者に静注投与し、がんの進行、患者の死亡または試験中止をもって試験終了とした。主要評価項目は、画像評価による客観的奏効率、副次評価項目は、無増悪生存期間(PFS)とした。
膵神経内分泌腫瘍患者4人(20%)と膵外神経内分泌腫瘍患者3人(15%)に客観的奏効が認めらrれた。無増悪生存期間はそれぞれ14.9カ月、14.2カ月であった。
この結果に対しフィラデルフィアのフォックスチェイスがんセンター(Fox Chase Cancer Center)消化管腫瘍内科副科長のNamrata (Neena) Vijayvergia医師は、「有望ではあるが、S0518試験(原文)の結果が示すように、ベバシズマブ単剤にソマトスタチンアナログ製剤を追加する併用療法では、カルチノイド腫瘍において奏効率12%、無増悪生存期間の中央値約16ヶ月であり、これは本試験の膵外神経内分泌腫瘍群での結果と同等であることがわかります。つまり、アテゾリズマブの付加的有意性は、あったとしてもほとんどわずかなのです」と、コメントしている。
Vijayvergia医師は最後に、「神経内分泌腫瘍に対するがん免疫療法の役割を明らかにし、確立していくためには、前向き比較試験を実施していくことが必要です」と述べている。
出典:https://bit.ly/3E8MClV JAMA Oncology誌 オンライン版 2022年4月7日
翻訳担当者 田代両平
監修 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院)
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