目の色を決定する色素沈着遺伝子が眼がんのリスク増加と関連

オハイオ州立大学総合がんセンター

ある遺伝性の遺伝子変異が、眼球メラノーマ(ブドウ膜メラノーマ)のリスク増加と関連することが、新たな研究で指摘されている。ブドウ膜メラノーマは、目の色を決定する色素細胞から生じるまれなメラノーマである。

米国では、年間約2500人がブドウ膜メラノーマと診断される。これまでの臨床データでは、ブドウ膜メラノーマは白人や目の色が薄い人に多いことが示唆されているが、がん発生の遺伝的メカニズムについてはほとんどわかっていなかった。

本研究は、オハイオ州立大学総合がんセンター Arthur G. James Cancer Hospital and Richard J. Solove Research Instituteの眼病理学者であり、がん遺伝学者でもあるMohamed Abdel-Rahman医学博士と、ニューヨーク大学医学部Perlmutter Cancer Centerのがん遺伝学者であるTomas Kirchhoff博士の共著によるもので、目の色に関わる遺伝子とブドウ膜メラノーマの発症に強い関連があることを初めて報告した。

報告によると、目や皮膚の色素沈着と関連した遺伝性の遺伝的要因により、ブドウ膜メラノーマのリスクが高まる可能性が示唆された。

Abdel-Rahman博士とKirchhoff博士らの研究結果はScientific Reports誌に掲載された。

「これは大変重要な発見であり、今後の研究を、眼球メラノーマのように日光曝露とは関連のないがんにおける、色素沈着遺伝子と他の遺伝的・環境的危険因子との相互作用の研究へと方向付けるでしょう。それによって、この領域でのパラダイムシフトが起こるかもしれません。われわれの研究により、眼球メラノーマでは色素沈着の違いが、日光からの保護とは無関係に、がん化の促進に直接作用する可能性が示唆されました」とAbdel-Rahman博士は述べた。

他の固形がんとは異なり、ブドウ膜メラノーマの発症における遺伝的危険因子の影響がほとんど解明されていない主な理由は、これがまれなタイプのがんで大規模コホート検体がなく、患者の包括的な遺伝子情報が得られていないことだと研究者らは言う。

こういった制約を克服するために、研究者らは270人以上のブドウ膜メラノーマ患者の検体を解析した。そのほとんどがオハイオ州で治療を受けた患者である。

眼球メラノーマと皮膚がんには臨床的関連があることが知られているため、本研究では、2つの疾患に共通する遺伝的危険因子の有無を調べることを目的とした。皮膚メラノーマにおける遺伝性の遺伝的危険因子はこれまでの研究でより広範に調べられている。

研究チームは、これまでの研究で皮膚メラノーマと関連付けられていた29の遺伝性の遺伝子変異について解析し、ブドウ膜メラノーマのリスクと関連するかどうかを調べた。

その結果、5つの遺伝子変異がブドウ膜メラノーマのリスクと有意に関連することが明らかとなった。最も高い有意性示した3つの遺伝的関連は、いずれも目の色を決定する遺伝子領域で見られた。

「ブドウ膜メラノーマに対する遺伝的感受性は、家族歴を持つ少数の患者に限定されるものと考えられてきましたが、われわれの頑健なデータにより、ブドウ膜メラノーマ患者集団において、この疾患と関連する新たな遺伝的危険因子の存在が示されました。また、このデータは、目の色の遺伝学的な決定を介して皮膚メラノーマとブドウ膜メラノーマには共通の遺伝的感受性があることを初めて示した点でも重要です。この知見は、両疾患の分子レベルでのより詳細な理解に直接的な影響を与えるでしょう」とKirchhoff博士は述べた。

研究者らは、本研究で示されたデータをきっかけに、全米および国際的な大規模共同研究が展開され、遺伝性の(生殖細胞)ゲノムデータに関する包括的・体系的解析が、ブドウ膜メラノーマ患者の大規模コホートで実施されることを期待している。

「このような共同研究は、ブドウ膜メラノーマに特異的な可能性のある遺伝的危険因子への対処について調べるうえで、特に必要とされています。これは、この疾患の予防や早期診断に重要であるだけでなく、リスクがある患者の治療の改善にも役立つ可能性があります」とKirchhoff博士は述べた。

「眼球メラノーマのようなまれながんの研究には連邦政府の資金援助が非常に重要です。本研究でも示されたように、まれながんの研究は他のタイプのがんにも影響を与える可能性がありますから」とAbdel-Rahman博士は述べた。

本研究の共同研究者は以下の通りである。Robert Ferguson (筆頭著者), Matjaz Vogelsang, Esma Ucisik-Akkaya, Carlos Martinez, Justin Rendleman, Esther Kazlow, Khagay Nagdimov, Iman Osman of the NYU; Karan Rai, MSc, Robert Pilarski, MSc, CCG, Fredrick Davidorf, MD and Colleen Cebulla MD, PhD of Ohio State; and Robert Klein of Mt. Sinai. 本研究は、米国立がん研究所、米国立眼病研究所、および個人の寄付や民間財団からの資金提供を受けた。

翻訳担当者 伊藤 彰

監修 北丸綾子

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