非侵襲的な便DNAメチル化検査が複数の消化器がんの検出に有望
米国臨床腫瘍学会(ASCO)
ASCOの見解
「本研究結果は、ゲノミクスに応用した機械学習が、今後がんの検出に大いに役立つだろうことを示唆しています。これらの知見は、より大規模で前向きな多施設共同研究で確認する必要があります」とASCO専門家のPeter Paul Yu医師(FACP:米国内科学会フェロー、FASCO:ASCOフェロー)は述べた。
新しいマルチターゲット便DNAメチル化検査が、複数の消化器(GI)がんの原発組織を正確に検出・同定した。本研究は、8月3日から5日まで横浜で開催される2023年米国臨床腫瘍学会(ASCO)Breakthrough会議で発表された。
試験について
著者らによると、消化器がんは世界のがんの約3分の1を占めている。大腸がんの早期発見を目的とした非侵襲的検査はいくつかあるが、他の消化器がんには早期発見のための信頼できる非侵襲的検査はない。
「便は、消化管粘膜から脱落した細胞や消化器がん細胞由来の循環遊離DNAを含むため、消化器がん検出に適したサンプルです。われわれの研究は、消化器がんを早期に発見し部位を特定するための非侵襲的なマルチターゲット便DNAメチル化検査を開発することを目的としています」と、本試験の筆頭著者であるLi-Yue Sun医師
(広東省第二総合病院第二腫瘍科)は述べた。
中国で実施されたこの研究では、治療を受けていない消化器がん患者124人(男性68人、女性56人)(ステージIIが14人、ステージIIIが27人、ステージIVが81人)と、3年ごとに消化器がん関連検査を受けた健康な患者92人が前向きに登録された。研究参加者の年齢中央値は、消化器がん患者が60歳、健康な患者が57歳であった。
各参加者の便サンプルをDNA分析し、それをメチル化解析にかけた。腫瘍のDNAでは、メチル化のパターンが健康な細胞とは異なっている。このパターンは、がんの存在とがんの位置を示すシグネチャーとして機能する。
メチル化解析を用いて、すでに消化器がんと診断された患者の79%において、がんの存在と位置を正確に特定することができた。研究者らは次に、メチル化解析を多重ロジスティック回帰モデルを用いた機械学習と組み合わせ、消化器がんを正確に検出し、その部位を特定する能力を向上させた。
主な知見
全体として、本試験ですでに消化器がんと診断された患者の79%(124人中98人)が陽性と判定され、健康な患者の96%(92人中88人)が陰性と判定された。
各消化器がんタイプにおける陽性率は以下の通りであった:
・大腸がん 71%(34人中24人)
・胃がん 83%(23人中19人)
・食道がん 75%(24人中18人)
・膵臓がんでは 81%(21人中17人)
・十二指腸乳頭部がん 91%(22人中20人)
研究者らは、機械学習を用いて多重ロジスティック回帰モデルを作成した。DNAメチル化解析と機械学習を組み合わせることで、消化器がん患者の陽性率は次のように増加した:
・大腸がん 88%(34人中30人)
・胃がん 91%(23人中21人)
・食道がん 88%(24人中21人)
・膵臓がん 90%(21人中19人)
・十二指腸乳頭がん 95%(22人中21人)
消化器がんが陽性と判定された4人の健康な患者のうち、3人は進行した腺腫と診断された。腺腫は腺がん(多くの臓器に見られる粘液産生細胞から始まるがんの一種)を発症する前駆病変であることが判明している。
次のステップ
将来、研究者らは、このような非侵襲的で複数のがんを検出するスクリーニング検査が、がんの早期発見のための検査や予後においてどのような役割を果たすことができるかを調査するため、複数の施設で前向き研究を行いたいと考えている。
本研究は、広州市科学技術計画プロジェクト、広東省第二総合病院のDoctoral Workstation基金、広東省第二総合病院科学基金の助成を受けて行われた。
アブストラクト全文
- 監訳 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院)
- 翻訳担当者 奥山浩子
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- 原文掲載日 2023/07/31
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