タキソール®による維持療法は転移性乳癌の生存期間を改善しない
キャンサーコンサルタンツ
2009年8月
TASMAN臨床試験に参加したスペインの研究者グループは、タキソール(パクリタキセル)とエピルビシン(日本では商品名ファルモビシン)による導入治療後のタキソールによる維持療法は、無進行生存期間を改善しなかったと報告した。本件研究の詳細は2009年5月から6月にかけて行われたAmerican Society of Clinical Oncologyで発表された。[1]
転移性乳癌における維持療法の役割はよくわかっていない。ここ10年から20年ほど維持的化学療法は、薬物の毒性や、抵抗性を引き起こし二次治療のサルベージ療法に悪影響があるのではないかという懸念から、支持されない傾向があった。転移性乳癌患者の多くは維持的化学療法を受けていないとみられる。しかしながら、標的剤やモノクローナル抗体が開発され、これらの薬剤は毒性や抵抗性の問題が少ないために、維持療法は近年再び注目を集め始めている。
最近ではまた、乳癌治療におけるAC-P療法、すなわちアドリアシン(アドリアマイシン®、ドキソルビシン)、サイクロフォスファミド、タキソールの持続的(メトロノミック)療法にも関心が持たれている。メトロノミック療法は、投薬量を少なくし休薬期間を短期間として毒性を低くしている。実験的段階では、メトロノミック療法の場合には化学療法のもつアポトーシス効果が高まることが示唆されており、さらにこの療法の有効性を確かめる臨床試験が続けられている。しかしながら、カナダの研究者らは低用量のタキソテール®(ドセタキセル)の週ごとの投与に加え、ゼローダ®(カペシタビン)を連日投与することが、アントラサイクリン系抗癌剤に抵抗性の転移性乳癌患者にかなりの割合で有効であると報告した(関連記事参照)。今までのところこの療法ついては、維持療法として有効性を確かめることはなされていない。
本研究は、エピルビシン投与を3週ごとに3サイクル行った後、タキソールを3週ごとに3サイクル投与した転移乳癌女性180人を対象とした。対象はランダムに2つのグループにわけ、これらの薬剤投与の後何も行わないグループと、症状の進行が見られるまでさらにタキソールを週ごとに投与するグループとした。
●無進行生存期間の中央値は、維持療法を行わなかったグループで8カ月、維持療法を行ったグループで12カ月であった。
●生存期間の中央値はいずれのグループも24カ月であった。
この研究者らは、週ごとにタキソールを投与する維持療法は、転移性乳癌患者によい結果をもたらさなかったと結論づけた。
コメント:
転移性乳癌患者においては、標的剤やモノクローナル抗体あるいはメトロノミック療法といった、他の維持療法の研究がさらに進められるであろう。
参考文献:
Mayodomo JI, Abena JM, Cirera L, et al. Final results of a randomized trial on the role of maintenance chemotherapy with weekly paclitaxel for patients with metastatic breast cancer. Journal of Clinical Oncology 2009;27:15s, (Supplement;abstract 1001).
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