授乳は高リスクの閉経前女性の乳癌リスクを低下させる
キャンサーコンサルタンツ
2009年8月
授乳が、第一度近親者に乳癌患者を持つ閉経前女性の乳癌リスクを低下させることをNurses’ Health Study IIに参加している研究者らが報告した。この研究の詳細はArchives of Internal Medicine誌の8月10/24日号に掲載された。[1]
女性は早く出産するほど、多く子供を産むほど、乳癌の発症率は低くなると長い間考えられてきた。この見解は、米国などの先進国と、女性が若年齢で出産し一般的に子供の数が多い発展途上国における乳癌発生率の差を説明するために用いられてきた。乳癌の女性は、乳癌を持たない女性より出産回数が少ないことは、これまでの研究によって明らかにされてきた。また乳癌は、授乳歴のある女性より授乳歴のない女性においてより多くみられている。乳癌リスクは、出産ごとに7%低くなることに加えて、授乳期間が一年増えるごとに4.3%低くなると推定されている。もし家族の人数の減少や授乳期間の短縮がなければ、乳癌の発症率は今日の半分になっていただろうと推測されている。
また一年を超える授乳が、BRCA2遺伝子ではなく特定のBRCA1遺伝子を有する女性における乳癌発症率を低下させることを52施設の研究者らは報告した。この研究は、BRCA1、BRCA2遺伝子両方、またはいずれか一方に変異を有する女性を対象としたデータベースに参加している施設で行われた。
この研究には、BRCA1変異を有する685人の女性および、BRCA2変異を有する280人が参加した。一年を超えて授乳したことのあるBRCA1変異を有する女性は乳癌発症率が44%低下したが、BRCA2変異を有する女性ではそのような低下は見られなかったことを研究者らは報告した。授乳によって乳癌発症率が44%低下することは、乳癌の遺伝的素因がない女性集団(これらの女性の場合、乳癌発症率は約4%低下)と比較して低下率がとても高いことを著者らは指摘した。BRCA1変異はホルモンの変化の影響を受けやすいが、BRCA2遺伝子変異はホルモンの変化とは関連がないことをこれらのデータは示唆している。
今回の研究により60075人の経産婦における乳癌発生率が評価された。このグループ中では閉経前乳癌は608人であった。授乳歴のある女性は閉経前乳癌の発症リスクが25%低下した。授乳期間については、傾向は見られなかった。第一度近親者に乳癌患者を持ち授乳歴のある女性においては、授乳歴のない女性と比較して閉経前乳癌の発生リスクが59%低下した。乳癌の発症リスクが高くない女性においては、授乳と閉経前乳癌の発生リスクには関連が見られなかった。
コメント:これは、乳癌の予防における授乳の利点をさらにサポートする興味深い研究である。しかし、他のすべて研究で認められた結果であるのに、この研究者らが乳癌発生率に授乳期間が影響しないと明らかにしたことは不可解である。
参考文献:
[1]Stuebe AM, Wiollett WC, Xue F, et al. Lactation and incidence of premenopausal breast cancer. Archives of Internal Medicine. 2009;169:1364-1371.
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張 知子 訳
大藪 友利子(生物工学)監修
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