2010/07/27号◆特集記事「FDA諮問委員会は、転移性乳癌に対するベバシズマブの使用を推奨しない」
同号原文|
NCI Cancer Bulletin2010年7月27日号(Volume 7 / Number 15)
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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇
FDA諮問委員会は、転移性乳癌に対するベバシズマブの使用を推奨しない
7月20日、FDA医薬品評価研究センターの抗腫瘍薬諮問委員会(ODAC)は、投票の結果、12対1で、転移性乳癌の一次治療に化学療法と併用でのベバシズマブ(アバスチン)の使用を推奨しないことを決定した。FDAはベバシズマブのこの適応について2008年3月に迅速承認を行ったが、進行中の臨床試験で肯定的な結果がさらに得られることを条件としていた。
先週の会議で委員会のメンバーがこれらの臨床試験の最終結果を審議したところ、迅速承認を支持するデータは確認できなかった。E2100と呼ばれる初回試験で、局所再発または転移性乳癌患者はパクリタキセル(タキソール)単独投与またはパクリタキセル+ベバシズマブ投与のいずれかを受けた。E2100ではベバシズマブ併用投与を受けた患者は、パクリタキセル単独投与を受けた患者に比べ、腫瘍が増殖しない無増悪生存期間(PFS)中央値が5.5カ月間延長した。
ODACは2007年12月に承認を5対9で否決しており、FDAの迅速承認の決定はODACの勧告に反していた。多くの場合FDAは諮問委員会の勧告に従うが、必ずしも従う必要はない。E2100の結果では全生存期間の延長は示されておらず、PFSは依然として、癌の臨床試験における異論の多い代替評価項目である。
「PFSを規制上の評価項目として受け入れるには、PFS延長度を十分に調査し、リスク便益分析で綿密に評価する必要があるとFDAは考えています」と先週の会議の冒頭挨拶でFDA抗腫瘍薬製品室長のDr. Richard Pazdur氏は述べた。「アバスチンによる治療は相当な毒性を伴うため、特に、全生存期間の延長による裏づけがない場合、PFS延長度は、実質的で、また臨床的に意義のあるものでなければならず、追加試験で再現されなければなりません」。
AVADOおよびRIBBON1と呼ばれる追加試験は、ベバシズマブの製造業者であるGenentech社が施行し、合わせて約2,500人の女性患者が参加した。AVADOでは患者の無作為割付けを行い、ドセタキセル(タキソテール)+プラセボまたはドセタキセル+ベバシズマブの化学療法を行った。E2100試験とは大きく異なり、AVADOのベバシズマブ群のPFS中央値の延長は1カ月以下であった。
RIBBON1では、主治医の裁量で、タキサン、アントラサイクリンまたはカペシタビン(ゼローダ)いずれかを併用した化学療法群に患者を割り付けた。これら3群内で、研究者が患者の無作為割付けを行い、ベバシズマブまたはプラセボを追加投与した。ベバシズマブ追加群のPFS延長期間はAVADOより長かったが、それでもE2100で認められた延長期間よりかなり短く、タキサン群およびアントラサイクリン群では1.2カ月、カペシタビン群では2.9カ月であった。
いずれの試験でも、ベバシズマブ群の患者は死亡リスクが上昇した。FDAが作成した試験データの解析結果では、ベバシズマブ治療を受けた患者のうち、AVADOで0.8%、RIBBON1で1.2%が薬剤に関連すると考えられる副作用によって死亡していた。
ベバシズマブの副作用と、全生存期間が延長しないことを考慮すると、「転移性乳癌の女性にとって(PFSは)どんな価値があるのかを考える必要があります」とクリーブランド・クリニック・タウシッグ癌研究所の医学部准教授でありODACのメンバーであるDr. Mikkael Sekeres氏は言う。
「PFSは研究中の評価項目です」ODACの議長であるDr. Wyndham Wilson氏はこう述べる。「ですから、われわれがここで判断すべきことは、アバスチン投与を受けた患者と受けなかった患者の間に、(患者の立場から)生活の質[の差]において臨床的意義があるかどうかです」。
試験では、PFSと同時に症状や心理的状態の改善をみることのできる、患者自らの報告によるQOLに関するデータを収集していないため、このような差を確認することは不可能であることに委員会は気づいた。AVADOではQOLに関して一連のデータを収集していたが、そこで示されたのは、ベバシズマブの追加投与により患者のQOLは低下しなかった、ということだけであった。
PFSを評価する今後の試験のスポンサーはこの問題について真剣に考えるべきであるとPazdur氏は述べた。「スポンサーは生活の質の測定に細心の注意を払って、慎重にプロトコールにそれを組み込み、同程度の慎重さと情報をもって主要評価項目に取り組む必要があります」とPazdur氏は言う。
委員会がベバシズマブの適応疾患から転移性乳癌を除外する勧告を決定したからといって、FDAは迅速承認を行ったことを悔いているわけではないとPazdur氏は言う。「われわれはこれを過ちとは考えていません」そして、こう結論づけた。「こうした薬剤の承認には…リスクがつきまといます。今回のことは(本日の過程)は、そのリスク管理なのです」。
—Sharon Reynolds
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川瀬 真紀 訳
上野 直人 (乳癌/M.D.アンダーソンがんセンター教授)監修
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