新たな遺伝子分類法により非浸潤性乳管がん(DCIS)の進行リスクを予測する
予測モデルにより、乳がんの前がん病変DCISに対する過剰治療を減らせる可能性
非浸潤性乳管がん(DCIS)の分子アトラスを作成する研究チームにより、乳房内の早期前がん病変が浸潤がんに進行するか、変化しないままであるかを判別する方法が大きく前進した。
この研究チームは、非浸潤性乳管がんの部位を切除する手術を受けた患者の検体を解析し、がんの進行に関連する812の遺伝子を同定した。この遺伝子分類法を用いて、がん細胞が再発または進行するリスクを予測することができた。
この研究は、デュークがん研究所のE. Shelley Hwang医師とスタンフォード大学メディカルセンターのRob West医学博士が主導し、今週Cancer Cell誌に発表された。彼らの研究は、米国国立がん研究所(NCI)が資金提供するムーンショット計画下のプロジェクト、Human Tumor Atlas Networkの一環である。
「非浸潤性乳管がんががんの状態であるか、(がんになる前の)高リスクの状態にとどまるのかについては、長年の議論がありました」と、Hwang医師は述べた。「その判断を下す方法がないため、現在ではすべての人に手術、放射線、またはその両方による治療を行っています」。
「年間5万人以上が非浸潤性乳管がん(DCIS)と診断され、その約3分の1が乳房切除術を受けているので、多くの患者が過剰な治療を受けているのではないかとの懸念が高まっています。DCISの生態をもっと解明する必要があり、それこそがわれわれの研究の目的です」。
Hwang医師とWest医学博士らは、非浸潤性乳管がん患者542人(治療後中央値7.4年)からの検体774件を解析し、治療から5年以内の再発に関連する812の遺伝子を同定した。
この遺伝子分類法は、がんの再発および浸潤がんへの進行の両方を予測することができた。進行は、浸潤性の形態を示す乳管内がん細胞と腫瘍環境の特殊性がお互いに影響し合う、あるプロセスによって起こるようであった。
Hwang医師によると、本研究で解析された非浸潤性乳管がん(DCIS)の多くは、がんの進行や再発のリスクが低いことが確認された。このことからも、臨床検査の際に治療の指針として使用できる正確な予測モデルが必要であることは明らかである。
「われわれのDCISに関する理解は大きく進歩しました。この研究により、がん進行のリスクに応じて治療を増減し医療の個別化を図る、現実的な道すじが見えてきました」と、Hwang医師は述べた。「真の目標は、治療成果を損なうことなく治療に関連する害を減少させることであり、非浸潤性乳管がん患者のためにこれを達成できるのではないかと期待しています」。
Hwang医師とWest医学博士のほか、本研究の共同研究者は以下のとおりである:co-principal investigator Carlo Maley, Ph.D., of Arizona State School of Life Sciences, and Graham Colditz, Ph.D., of Washington University at St. Louis, for the Breast Pre-Cancer Atlas Center, as well as collaborators from 12 other institutions as part of the Translational Breast Cancer Consortium.
この研究は、米国国立衛生研究所(NIH)の一部である米国国立がん研究所(NCI)のHuman Tumor Atlas Network Consortiumの一環として行われている(R01 CA185138-01, U2C CA-17-035, UO1 CA214183, R01CA193694)。その他に、国防総省(BC132057)、The Breast Cancer Research Foundation(19-074, 19-028, 18-006)、PRECISION CRUK Grand Challenge(AEI RYC2019- 026576-I)、”la Caixa” Foundation(LCF/PR/PR17/51120011)、Lundbeck Foundation(R288-2018-35)Danish Cancer Society(R229-A13616)、Susan G. Komenから資金援助を受けた。
監訳 小坂泰二郎(乳腺外科・化学療法/医療社会法人石川記念会 HITO病院)
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原文掲載日 2022/11/18
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