タモキシフェンとラロキシフェン臨床試験(STAR)の初期結果:骨粗しょう症薬ラロキシフェンは、浸潤性乳癌の予防にタモキシフェンと同等に有効
臨床試験結果より
タモキシフェンとラロキシフェン臨床試験(STAR)の初期結果:骨粗しょう症薬ラロキシフェンは、浸潤性乳癌の予防にタモキシフェンと同等に有効
(Posted: 04/17/2006)
タモキシフェンとラロキシフェン臨床試験STARの初期結果で、現在閉経後女性の骨粗しょう症予防薬として用いられているラロキシフェンは、タモキシフェンと同等にこの疾患のリスクノ高い閉経後女性浸潤性において乳癌リスクを減少させる。Questions and Answers
タモキシフェンおよびラロキシフェンの臨床試験すなわちSTARの初期段階の結果から、現在閉経後の女性の骨粗しょう症の予防および治療用に使用されている薬剤ラロキシフェンが、乳癌のリスクが高い閉経後の女性の乳癌のリスクを低減させるタモキシフェンと同程度の効果があることが確認されました。STARでは、ラロキシフェンおよびタモキシフェンはともに浸潤性乳癌が発症するリスクを約50%低減させました。さらに、本臨床試験で、前向き、無作為にラロキシフェンを毎日服用する群に割り当てられ、平均約4年間追跡調査を受けた女性は、タモキシフェンを服用する群に割り当てられた女性よりも、子宮癌が発症する割合が36%低く、血栓ができる割合が29%低いことが分かりました。子宮癌、特に子宮内膜癌の発症はまれではあるが、タモキシフェンによる重篤な副作用です。タモキシフェンおよびラロキシフェンはともに女性の血栓のリスクを増大させることで知られています。
STARは、実施された試験の中で最も大規模な乳癌予防の臨床試験のひとつで、乳癌のリスクの高い閉経後の女性19,747例が登録されました。参加者は、毎日5年間、ラロキシフェン(EvistaR)を60mg、タモキシフェン(NolvadexR)20mgのいずれかを服用する群に無作為に割り当てられました。この臨床試験は、癌研究の専門家ネットワークであるNational Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project(NSABP)が調整役を努め、国立衛生研究所の一部である米国立癌研究所が資金を提供しています。
「STARから得たこのようなの楽観的な報告は乳癌予防に大きな前進となります。」と現在NCIで陣頭指揮を取っているJohn E. Niederhuber医師は語りました。「これらの結果は、私たちがエビデンスに基づいた治療を確立するために臨床試験が非常に重要であることを再度証明しています。」
「1998年の画期的な乳癌予防の臨床試験では、タモキシフェンが閉経前および閉経後の女性の浸潤性乳癌のリスクを50%近く低減させる可能性があることが確認された。」とNSABPの責任者であるNorman Wolmark医師は語りました。「現在、ラロキシフェンは乳癌のリスクが高い閉経後の女性にはタモキシフェンと同じくらい効果的で、タモキシフェンで発症することが知られている重篤な副作用もラロキシフェンでは発症しないということが言えます。」
脳梗塞、心臓発作および骨折が起きた女性の人数は、いずれの薬剤の場合も同等でした。ラロキシフェン、タモキシフェンは共に骨の健康を守ることが知られており、閉経後の女性50万人が現在、骨粗しょう症の予防および治療のために処方によるラロキシフェンを服用していると推定されています。加えて、STARの初期段階の結果は、ラロキシフェンがタモシキフェンほどは、白内障の発症するリスクを増大させないと示唆しています。
「副作用のない薬剤はないが、タモキシフェンおよびラロキシフェンは乳癌のリスクが高いため対策を取りたいと思っている女性にとって極めて重大な選択肢です。」とNCIのDivision of Cancer Prevention(癌予防部門)の臨床研究担当副部長のLeslie Ford医師は語りました。「多くの女性にとって、ラロキシフェンの有効性は、リスクに勝りますが、タモキシフェンの有効性はリスクを上回らないと考えられるでしょう。」
STARの医師たちはまた、両方の薬剤で発症することが分かっている更年期副作用を追跡し、参加者の生活の質を観察しました。データは、両方の薬剤の副作用の重篤度が軽度から中等度であり、生活の質は両方とも同程度であること示しています。
STARの参加者は、今では、どちらの薬剤を服用していたかという情報を得ています。ラロキシフェン群の女性は、5年間の治療が終了するまで薬剤の提供が続きます。タモキシフェン群の女性は、タモキシフェンの服用を継続するか、ラロキシフェンを服用して5年間の治療を終了するかを選択できます。
臨床試験の詳細は以下のとおりです。
STARでは、19,747例の女性が登録されました。データの分析は、臨床試験情報一式が有効な女性19,471例をもとに行われました。
両群の女性の浸潤性乳癌の数は有意に同等でした。
浸潤性乳癌は、タモキシフェン群が9,726例中163例だったのに対し、ラロキシフェン群は9,745例中167例に発症しました。
STARに参加した女性の半数以上は、子宮を切除していたため子宮癌のリスクがありませんでした。子宮のある女性については、ラロキシフェン群の女性が4,712例中23例であったのに対し、タモキシフェン群では4,732例中36例に子宮癌(主に子宮膜癌)が発症しました。
STARでは、ラロキシフェン群の女性は、タモキシフェン群よりも深部静脈血栓(静脈内の血栓)および肺動脈塞栓(肺の血栓)の発生する割合が29%低いことが確認されました。具体的には、ラロキシフェン群の女性が9,745例中65例であったのに対し、タモキシフェン群の女性9,726例中87例に肺動脈塞栓が発生しました。また、ラロキシフェン群の女性が9,745例中35例であったのに対し、タモキシフェン群は9,726例中54例に肺動脈塞栓が発生しました。
両群の女性に発症する脳梗塞の数は統計上同等でした。タモキシフェン群の女性9,726例中53例、ラロキシフェン群の女性が9,745例中51例に臨床試験中に脳梗塞が発症しました。脳梗塞による死亡率に差異はありませんでした。タモキシフェン群の女性9,726例中6例、ラロキシフェン群の女性9,745例中4例が脳梗塞で死亡しました。脳梗塞のリスクの高い女性(管理不良高血圧または管理不良糖尿病、脳梗塞の病歴、一過性脳虚血発作または心房細動を持つ人)は、STARへの参加資格はありませんでした。
タモキシフェンが上皮内小葉癌(LCIS)および非浸潤性乳管癌(DCIS)の発症を半分に低減させたことが確認されましたが、ラロキシフェンはこのような診断に効果がありませんでした。(LCISおよびDCISは非浸潤性乳癌と呼ばれることもあります。)ラロキシフェン群が9745例中81例であったのに対して、タモキシフェンを服用した女性の9,726例中57例がLCISまたはDCISを発症しました。この結果は、2004年に報告されたラロキシフェンの大規模試験すなわちContinued Outcomes Relevant to Evista(CORE試験)のデータを裏付けています。
STARに参加した女性は35歳以上の閉経後の女性で、年齢、家族の乳癌歴、既往歴、初潮を迎えた年齢、および初産年齢をもとにして割り出した乳癌のリスクが高い人たちでした。本臨床試験に参加する前に、女性たちはタモキシフェンおよびラロキシフェンの潜在的リスクおよび効果について指導を受け、同意書に署名をするよう求められました。
STARの研究者たちは、ジョージア州アトランタで2006年6月2~6日に開催される第24回米国臨床腫瘍学会(ASCO)総会で追加データを提示します。「これは重要かつ待ち望んでいた臨床試験です。」とASCO会長のSandra J. Horning医師は語りました。「また私たちは、この2つの治療法により実際に認められた毒性の差異および非浸潤性乳癌の予防に関してASCOの総会でさらなる議論と分析をすることを楽しみにしています。」また、論文審査のある学術専門誌に発表するため、原稿が提出されています。
タモキシフェンのメーカー、AstraZeneca Pharmaceuticals社(デラウェア州ウィルミントン)およびラロキシフェンのメーカー、Eli Lilly and Company社(インディアナ州インディアナポリス)は、本臨床試験のために同社の薬剤および同等のプラセボを参加者に無料で提供しました。Eli Lilly and Company社はまた、試験参加施設での募集費用を負担し、地方の研究者たちが臨床試験を実施できるようするなどNSABPを支援しました。
####
メディアマテリアルおよびファクトシートへのリンクを含むSTARの詳細ついては、NCIのSTARのホームページまたはNSABPのウェブサイト(http://www.nsabp.pitt.edまたは http://foundation.nsabp.or)をご覧ください。
STARの結果に関するQ&Aについては、http://www.cancer.gov/newscenter/pressreleases/STARresultsQandをご覧ください。
STARの結果に関するBロールは、www.thenewsmarket.comで電子版をダウンロードするか、NCI Media Relations Branch(301- 496-6641)に電話してベータテープのコピーをお求めください。
女性の乳癌のリスク計算に使用したするツールについては、http://cancer.gov/bcrisktooまたはhttp://breastcancerprevention.coをご覧ください。
(ポメラニアン 訳、林 正樹(血液・腫瘍科) 監修 )
原文掲載日
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
乳がんに関連する記事
がんにおけるエストロゲンの知られざる役割ー主要な免疫細胞を阻害
2024年12月2日
乳がん個別化試験で、免疫陽性サブタイプにDato-DXd/イミフィンジが効果改善
2024年12月3日
転移トリネガ乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の効果予測ツールを開発
2024年11月13日
FDAが高リスク早期乳がんに対し、Kisqaliとアロマターゼ阻害剤併用およびKisqali Femara Co-Packを承認
2024年10月24日