炎症性乳がん患者では脳転移のリスクが高い

炎症性乳がん患者を脳画像検査でモニタリングする意義を研究する必要性を裏付ける研究結果

乳がんでもまれなタイプである炎症性乳がんの患者で脳転移のリスクが高いことが、ダナファーバーがん研究所の新しい研究により明らかとなった。本研究はWileyオンライン版のCANCER誌(アメリカがん協会のピアレビュー誌)にて発表された。

炎症性乳がんの患者に脳転移の発現率が高いことはこれまでの研究で示されているが、詳細な情報は不足している。この患者集団における脳転移の発現率と危険因子についての知見を得るため、ダナファーバーがん研究所のLaura E. Warren医師らは炎症性乳がんのステージ3の患者372人とステージ4の患者159人のデータを解析した。

中央値5年の追跡調査において、1年、2年、5年の時点での脳転移の発現率は、ステージ3の患者でそれぞれ5%、9%、18%、ステージ4の患者でそれぞれ17%、30%、42%であった。トリプルネガティブ乳がんの患者は特にリスクが高く、脳に転移した場合の生存期間はホルモン受容体陽性またはHER2陽性乳がん患者の脳転移の場合に比べて短かった。また、脳以外の部位にがんが転移した患者、特に若年の患者で脳転移のリスクが高くなることがわかった。

「この研究集団では脳転移の発現率が比較的高く、高リスクの患者に対する脳画像のモニタリングに求められる役割に関して今後研究が必要であることが明確となりました。ダナファーバーがん研究所では、この問題を検討する第2相非盲検単群試験が行われています」とWarren医師は言う。「また、この集団で脳転移の発現率が高いことを考慮すると、神経症状のある炎症性乳がん患者で脳画像撮影を行うことの必要性も強調されます」。

この研究で脳転移と診断された患者のほとんどに神経症状が見られたが、中には検出されない無症候性脳転移の患者もいるため、炎症性乳がん患者における脳転移の発現率はWarren医師らの観察よりもさらに高い可能性がある。

付随論説では、炎症性乳がんの患者に定期的な脳画像検査を実施するか検討する際は、脳転移の早期発見が生存率と生活の質の両方の改善につながるかを見極めることが重要になると記されている。

監訳:下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立国際医療研究センター乳腺腫瘍内科)

翻訳担当者 白濱紀子

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