FDAがHER2低発現乳がんにトラスツズマブ デルクステカンを承認

2022年8月5日、FDA(米国食品医薬品局)は、転移または再発により化学療法を受けたHER2低発現(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)の手術不能または転移性乳がん患者(術後化学療法中または終了後6カ月以内に再発した患者を含む)に対するトラスツズマブ デルクステカン(販売名:エンハーツ、第一三共株式会社)の使用を承認した。

有効性の評価は、HER2低発現の手術不能または転移性乳がん患者557人を登録した多施設共同ランダム化非盲検試験DESTINY-Breast04(NCT03734029)に基づいて行われた。この試験には2つのコホートが含まれる。すなわちホルモン受容体陽性(HR+)の患者494人とホルモン受容体陰性(HR-)の患者63人である。HER2低発現はIHC 1+またはIHC 2+/ISH-と定義され、判定は中央検査室が行った。患者は2:1の比率で、エンハーツ 5.4 mg/kgを3週間ごとに点滴静注する群(N=373)と医師が選択した化学療法群[N=184、エリブリン(販売名:ハラヴェン)、カペシタビン、ゲムシタビン、nab-パクリタキセル(販売名:アブラキサン)またはパクリタキセルなど]に無作為に割り付けられた。

主要評価項目はHR+の乳がん患者の無増悪生存期間(PFS)であり、RECIST 1.1を用いた盲検下独立中央判定によって評価された。副次的評価項目は、全患者集団(ランダム化されたすべてのHR+患者およびHR-患者)におけるPFS、HR+患者の全生存期間(OS)、および全患者集団におけるOSとした。

患者の年齢中央値は57歳(28~81歳)、24%が65歳以上であった。人口統計学的特性は、女性99.6%、白人48%、アジア人40%、黒人またはアフリカ系アメリカ人2%、ヒスパニック/ラテン系アメリカ人3.8%であった。

HR+患者のPFS中央値は、エンハーツ群で10.1カ月(95% CI: 9.5, 11.5)、化学療法群で5.4カ月(95% CI: 4.4, 7.1) 、ハザード比は0.51(95% CI: 0.40, 0.64; p < 0.0001 )だった。全患者のPFS中央値はエンハーツ群で9.9カ月(95% CI: 9.0, 11.3)、化学療法群で5.1カ月(95% CI: 4.2, 6.8)、ハザード比は0.50(95% CI: 0.40, 0.63; p < 0.0001)だった 。

HR+患者のOS中央値は、エンハーツ群で23.9カ月(95% CI: 20.8, 24.8)、化学療法群で17.5カ月(95% CI: 15.2, 22.4)、 ハザード比は0.64(95% CI: 0.48, 0.86; p=0.0028) だった。全患者のOS中央値はエンハーツ群が23.4カ月(95% CI: 20.0, 24.8)であったのに対して化学療法群では16.8カ月(95% CI: 14.5, 20.0)、ハザード比は0.64(95% CI: 0.49, 0.84; p=0.001) だった。

本試験においてエンハーツが投与された患者に最も多く見られた副作用(発現率20%以上)は、悪心、疲労、脱毛症、嘔吐、貧血、便秘、食欲低下、下痢、筋骨格痛だった。添付文書には、間質性肺疾患のリスクおよび胚・胎児毒性について医療者に注意を求める枠囲み警告が記載されている。

乳がんに対するエンハーツの推奨用量は5.4 mg/kgで、3週間に1回(21日サイクル)の点滴静注を、病勢進行または許容できない毒性が発現するまで行う。

エンハーツの全処方情報はこちらを参照。

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日本語訳監修 :尾崎 由記範(腫瘍内科・乳腺/がん研究会有明病院)

翻訳担当者 岩佐薫子

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原文掲載日 

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