MDA研究ハイライト2022/5/18:乳がん、骨髄腫瘍、ユーイング肉腫他
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1.TDO2がAPC欠損大腸がんの新規治療標的になることを発見(原文)
2.エチリノテカンペゴルは、脳転移を有する乳がん患者の生存率を改善せず
脳転移は転移性乳がんの患者によく見られ、予後不良の原因となる。残念ながら、治療の選択肢は限られており、これらの患者は通常、新しい治療法を研究する臨床試験から除外される。Debu Tripathy医師が主導した第3相ATTAIN試験は、安定した脳転移を有する転移性乳がん患者を対象とし、エチリノテカンペゴル(etirinotecan pegol)または医師が選択した化学療法による治療を比較した数少ない試験の1つである。本試験では、10カ国47施設において178人の患者が登録されたが、両群間で治療成績に統計学的な有意差は認められなかった。全生存期間中央値はエチリノテカンペゴル投与群で7.8カ月、化学療法群で7.5カ月、無増悪生存期間中央値はエチリノテカンペゴル投与群で2.8カ月、化学療法群で1.9カ月であった。本試験は、乳がんと脳転移を有する患者を対象とした最初で最大の試験の一つであり、この結果は、これらの患者に対する今後の研究の参考になると思われる。詳細はJAMA Oncology誌に掲載されている。
3.レナリドミドとTP53変異型治療関連骨髄性腫瘍との関連性
治療関連骨髄性腫瘍(t-MN)は、化学療法や放射線療法(CRT)後にがん患者に発症する二次性白血病の一種である。本疾患は治療抵抗性で生存期間が1年未満であることが多く、その発症を予防する有効な治療法はない。高橋康一医学博士と共同研究者らは、単一施設内で治療を受けた大規模コホートにおいて、t-MNs遺伝子型と過去の化学療法との関連を解析した。その結果、過去にレナリドミドの投与を受けた患者は、TP53変異を特徴とするt-MNsのリスクが高いことが示された。また、in vitro および in vivo のマウスモデルを用いて、ポマリドミド(販売名:ポマリスト)ではなくレナリドミド(販売名:レブラミド)による治療が T53 変異造血幹細胞(HSC)の選択的な増殖を促進することを明らかにした。これらの結果は、t-MNsの発生を理解する上で重要であり、TP53変異造血幹細胞を持つ患者の疾患リスクは、レナリドミドよりもポマリドミドを用いることで軽減される可能性を示唆している。詳細はBlood誌に掲載されている。
4.骨髄線維症患者に有用なナビトクラクスとルキソリチニブの併用療法に関するバイオマーカーの解析
骨髄線維症は、白血病に移行する可能性のある悪性度の高い骨髄増殖性腫瘍である。ルキソリチニブ(販売名:ジャカビ)を含むJAK阻害剤は、骨髄線維症患者における脾臓肥大の縮小やその他の一般的な症状の改善に有効だが、骨髄線維化の回復効果は限定的であった。現在進行中の第2相REFINE試験の主要評価項目解析では、ルキソリチニブにナビトクラクス(navitoclax)を追加することで、ルキソリチニブ単独では効果がなくなった骨髄線維症患者の部分集団において、脾臓体積が35%以上減少し、症状が軽減することが示されている。Naveen Pemmaraju医師が主導したこのコホートの探索的バイオマーカー解析では、骨髄線維化の改善と変異対立遺伝子頻度の減少が見られた患者は、これらの反応が見られなかった患者と比較して、全生存期間が改善することが明らかにされた。この結果から、これらのバイオマーカーは、ルキソリチニブにナビトクラクスを追加することで得られる疾患改善効果を特定するのに有用であり、この併用療法は骨髄線維症患者に対して有効である可能性が示唆された。詳細はThe Lancet Haematology誌に掲載されている。
5.乳がんの骨転移を引き起こす分子経路を解明(原文)
乳がん末期の半数以上で骨転移が起こり、重大な痛みや健康障害を引き起こす。残念ながら、骨転移を治療するための根治的療法は存在しない。エピジェネティック修飾を担うEZH2タンパク質は乳がんの骨転移と相関があるが、このプロセスを制御する役割は解明されていない。このたび、Lin Zhang医学博士、Jingkun Qu医学博士、Dihua Yu医学博士を中心とする研究チームは、EZH2がエピジェネティック機能とは独立した機序で乳がんの骨転移を促進することを発見した。研究チームは、EZH2がインテグリンβ1(ITGB1)の発現を増加させ、下流のfocal adhesion kinase(FAK)およびTGFβシグナル伝達経路を活性化することを明らかにした。実験室モデルでは、FAKを阻害する標的治療が乳がんの骨転移を阻止するのに有効であった。この結果は、FAKがEZH2駆動型乳がん骨転移の新規治療標的となる可能性を示唆している。詳しくは、Nature Communications誌に掲載されている。
6.計算機的手法で、複数の単一細胞データセットを最適に統合することが可能に(原文)
7.前がん病変である膵嚢胞に特有の免疫学的特徴を発見(原文)
8.がん遺伝子の転写を選択的阻害薬が、ユーイング肉腫の治療で有望な結果を示す
ユーイング肉腫(ES)は、小児、青年、若年成人において2番目に多い悪性骨肉腫である。現在、再発したユーイング肉腫に対して承認された治療薬はないため、これらの患者を治療するための治療薬の開発は、臨床上緊急の必要性となっている。Vivek Subbiah医師と研究者らは、非盲検の第2相バスケット試験において、転移性小細胞肺がんに対してFDAが承認した薬剤であるルルビネクテジン(販売名:ZEPZELCA)の安全性と有効性を、28人のユーイング肉腫患者を対象に評価した。4人(14.3%)で確定効果が観察され、その奏効期間の中央値は4.2カ月であった。さらに、39.3%の患者で奏効または病態安定という臨床的有用性が得られ、57.1%の患者で病態制御が確認された。10人(40%)の患者で客観的な腫瘍の縮小が認められた。最も主要なグレード3/4の有害事象は、好中球減少症(57%)、貧血、血小板減少症、治療関連発熱性好中球減少症(各14%)などであった。今回の結果は、ルルビネクテジンが有望な抗腫瘍活性を有し、その安全性プロファイルは制御可能であったことを示している。本薬は現在、進行性ESに対するイリノテカンとの併用療法として、第1b/2相試験で評価されている。詳しくは、Clinical Cancer Research誌に掲載されている。
9.免疫療法研究により、抗腫瘍免疫反応におけるBHLHE40の重要な役割を発見(原文)
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