アスピリン服用による乳がん再発予防効果はない

ASCOの見解

「今回のデータから明らかになったのは、ER+またはトリプルネガティブ乳がん患者にとって、アスピリンはがん再発リスクを下げる手段となる可能性が低いということです。しかしながら、他の理由でアスピリンを服用する必要がある場合は、乳がんの転帰を改善も悪化もさせないと考えられるため、当然ながら服用すべきです」- ASCOの乳がんエキスパートErika P. Hamilton医師

2022年2月15日のASCO Plenary Seriesセッションで発表された試験によると、アスピリンを毎日服用しても乳がん患者の無浸潤生存期間(iDFS)は改善されなかった。

これまでの観察研究および心血管疾患に関する試験において、アスピリン常用者は乳がん生存期間を改善し、あらゆる種類の転移がんのリスクを減少させたことが示唆されている。今回の試験は、乳がんサバイバーを対象としてアスピリンの乳がん再発予防の有効性を評価する初めてのランダム化プラセボ対照試験である。

この二重盲検試験では、高リスクのHER2陰性乳がん患者3,021人を無作為に選び、5年間、アスピリンまたはプラセボのいずれかを1日1回投与した。191件のiDFS事象(アスピリン投与群107件、プラセボ投与群84件)が発現し、中央値20カ月間の追跡期間後、アスピリンが乳がん再発予防に有用であるとは考えにくいというデータが示されたことから、本試験は早期に終了となった。なお、グレード3および4の有害事象の発現頻度について、投与群間で差は認められなかった。

本試験の著者らは、ベースライン時に参加者から採取した腫瘍および血液検体と、2年目に再採取した血液検体の追加解析を行うことを計画している。

「炎症ががん進行に関与している可能性は依然としてあるが、乳がんの再発予防にアスピリンを使用することは推奨されない」と、筆頭著者であるダナファーバーがん研究所の腫瘍内科医のWendy Y. Chen医師(公衆衛生学修士)は述べている。

翻訳担当者 瀧井希純

監修 辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

米国公衆衛生局長官がアルコールとがんリスクの関連について勧告の画像

米国公衆衛生局長官がアルコールとがんリスクの関連について勧告

米国保健福祉省(HHS)ニュースリリース飲酒は米国におけるがんの予防可能な原因の第3位本日(2025年1月3日付)、米国公衆衛生局長官Vivek Murthy氏は、飲酒とがんリ...
【SABCS24】乳がんctDNAによるニラパリブの再発予測:ZEST試験結果の画像

【SABCS24】乳がんctDNAによるニラパリブの再発予測:ZEST試験結果

ステージ1~3の乳がん患者において治療後のctDNA検出率が低かったため、研究を早期中止

循環腫瘍DNA(ctDNA)を有する患者における乳がん再発予防を目的とするニラパリブ(販売名:ゼ...
【SABCS24】CDK4/6阻害薬の追加はHR+/HER2+転移乳がんに有効の画像

【SABCS24】CDK4/6阻害薬の追加はHR+/HER2+転移乳がんに有効

「ダブルポジティブ」転移乳がん患者において、標準療法へのCDK 4/6阻害薬追加により、疾患が進行しない期間(無増悪期間)が有意に延長したことが、サンアントニオ乳がんシンポジウ...
【SABCS24】中リスク乳がん患者のほとんどは乳房切除後の胸壁照射を安全に回避できる可能性の画像

【SABCS24】中リスク乳がん患者のほとんどは乳房切除後の胸壁照射を安全に回避できる可能性


BIG 2-04 MRC SUPREMO臨床試験によると、中リスク乳がん患者は乳房切除後に胸壁照射(CWI)を受けても受けなくても、10年生存率は同程度であったという結果が、2024年...