トリネガ乳がん術前化学療法へのカルボプラチン併用は有効
乳がん術前化学療法におけるパクリタキセルへのカルボプラチン併用により、トリプルネガティブ乳がん女性患者の病理学的完全奏効率と無イベント生存率が改善することが、BrighTNess試験の長期追跡データで確認された。
しかし、カルボプラチン+術前化学療法パクリタキセルにPARP阻害薬veliparib[ベリパリブ]を併用しても、さらなる有益性はみられなかった。
「これらの知見により、ステージ2または3のトリプルネガティブ乳がん術前化学療法へのカルボプラチン併用が、生殖細胞系のBRCA遺伝子の状態を問わず支持されました」と、Sibylle Loibl医師(ドイツ・フランクフルト大学)は欧州臨床腫瘍学会(ESMO)総会での本データ発表時に述べた。
BrighTNess試験には、世界の145施設から、治療歴のない手術可能なステージ2または3のトリプルネガティブ乳がん女性634人が参加した。参加者は術前療法のパクリタキセルに加え、ベリパリブとカルボプラチンを併用する群、カルボプラチンを併用する群、プラセボを併用する群に無作為に割り付けられた。続いてドキソルビシンとシクロホスファミドの投与を受けた後に手術となった。
初期の所見では、パクリタキセル+カルボプラチン併用はベリパリブ投与の有無にかかわらず主要評価項目である病理学的完全奏効率を有意に改善し、安全性も許容範囲内であった。
Loibl医師は、副次的評価項目である無イベント生存と全生存期間、さらに二次性悪性腫瘍に関する4年以上の追跡調査データをESMO総会で報告した。
追跡期間中央値は4.5年で、無イベント生存率はカルボプラチン+ベリパリブ+パクリタキセル3剤併用で78.2%、カルボプラチン+パクリタキセル2剤併用で79.3%、パクリタキセル単独投与で68.5%となった。
無イベント生存のハザード比に関して、3剤併用群(カルボプラチン+ベリパリブ+パクリタキセル)はパクリタキセル単独と比較して有意に高かった(ハザード比0.63)が、2剤併用群(カルボプラチン+パクリタキセル)に対する優位性はなかった(ハザード比1.12)。事後解析でカルボプラチン+パクリタキセル併用とパクリタキセル単独を比較した場合、無イベント生存のハザード比は0.57であったとLoibl医師は報告した。
死亡率は、カルボプラチン+パクリタキセル群10.0%、カルボプラチン+パクリタキセル+ベリパリブ群12.0%、パクリタキセル単独群13.9%と、すべての治療群で低かった。
「追跡期間中央値4.5年では全生存期間における統計学的有意差はまだ確認されていませんが、カルボプラチン投与群がカルボプラチン非投与群よりも優位性を示す傾向がみられました」とLoibl医師は報告した。
これらのレジメンは管理可能な安全性を示しており、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病、その他の二次性悪性腫瘍のリスクは増加しなかった。
マウントサイナイ医科大学の血液学・腫瘍学教授であり、ニューヨークのティッシュがんセンター(Tisch Cancer Center)の乳腺腫瘍医であるCharles Shapiro医師は、BrighTNess試験で5年近くの追跡調査をした結果、「トリプルネガティブ乳がんに対して週1回のパクリタキセルにカルボプラチンを追加した場合、病理学的完全奏効率が増加するだけでなく、無イベント生存率も増加することが証明されました」とロイター・ヘルスへのメールで述べている。
「過去に行われた5つのランダム化試験では、カルボプラチンへのパクリタキセル追加で病理学的完全奏効率が統計学的有意に増加することが確認されていますが、初期段階の無イベント生存率について十分な追跡調査を行い肯定的な結果を報告している試験はほとんどありません」と、Shapiro医師は指摘している。同医師は本試験には関与していない。
予想に反して、ベリパリブ併用で病理学的完全奏効率を上げることができなかったと同医師は言う。「PARP阻害薬にもさまざまあり、それぞれに前臨床的な違いがあるので、おそらく今回の場合、ベリパリブは不適切だったのでしょう」。
「最も興味深いのは、トリプルネガティブ乳がんの術前化学療法(KEYNOTE-522試験)で免疫チェックポイント阻害薬のペムブロリズマブが使われたことです。ベリパリブとは異なり、術前化学療法中と後にパクリタキセル+カルボプラチンにペムブロリズマブを併用した場合、病理学的完全奏効率と3年後の無イベント生存率が統計学的有意に増加しました。さらに、これらの結果は、腫瘍のPD-L1の状態とは無関係でした」とShapiro医師は述べている。
本試験はAbbVie社の支援を受けて行われた。数名の著者は同社との経済的関係を公表している。
出典:https://bit.ly/3nNaaXt 2021年9月17日ESMO総会にて発表
翻訳担当者 白濱紀子
監修 東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/福島県立医科大学白河総合診療アカデミー)
原文掲載日
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
乳がんに関連する記事
欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライト
2024年12月20日
喫煙はいかにして乳がん放射線治療を複雑にするのか
2024年12月16日
放射線治療は、放射線(通常はX線)を用いてがん細胞のDNAを損傷させ、がん細胞を破壊...
がんにおけるエストロゲンの知られざる役割ー主要な免疫細胞を阻害
2024年12月2日
乳がん個別化試験で、免疫陽性サブタイプにDato-DXd+イミフィンジが効果改善
2024年12月3日