研究ハイライト2021/8/25:急性骨髄性白血病、非浸潤性乳管がん、HBOC遺伝カウンセリング

若年の急性骨髄性白血病患者に対する強力な化学療法とベネトクラクスの併用療法

これまでの研究では、高齢の急性骨髄性白血病(AML)患者において、低強度の化学療法と、BCL2を阻害する薬剤であるベネトクラクスを併用することで生存率が向上することが示されてきた。Tapan Kadia医師らは、体力のある若年患者を対象に、強力な化学療法とベネトクラクスの併用療法を評価した初めての試験を主導した。ベネトクラクスと、クラドリビン+高用量シタラビン+イダルビシン(CLIA)の併用療法は、65歳未満の、初発急性骨髄性白血病または高リスク骨髄異形成症候群患者において安全かつ有効であった。患者50人のうち、複合完全奏効を示したのは47人(94%)で、検出可能微小残存病変(MRD)が認められなかったのは37人(82%)であった。また、1年後の全生存率は85%であった。発熱性好中球減少症や感染症などの有害事象が発生した患者もいたが、治療に関連した死亡例はみられなかった。総じて、本試験では、ベネトクラクスとCLIAの併用により、微小残存病変陰性の持続的な寛解が高率に得られ、患者の生存率が向上することが示された。詳細はThe Lancet Haematology誌に掲載。

単一細胞の評価により、非浸潤性乳管がんの悪性病変と良性病変を区別

非浸潤性乳管がん(DCIS)は、非浸潤性の病変で、浸潤性乳がんの前駆病変と考えられている。残念ながら、どの病変ががんに進行し、どの病変が良性にとどまるかは現在のところ不明である。Vidya C. Sinha博士とHelen Piwnica-Worms博士らが率いる研究チームは、ある乳がんモデルシステムで、悪性度が低い病変(ゆっくり成長する病変)と、悪性度が高い病変を調査した。悪性度が低い病変と、高い病変とでは、遺伝子の発現プロファイルが明確に異なり、細胞の種類もそれぞれ異なっていた。しかし、これらの病変は、局所環境から離れると区別がつかなくなることから、外的要因が関与していることが示唆された。実際、病変によって免疫細胞の構成に明らかな違いが見られ、悪性度が高い病変部は、より抑制的な免疫細胞に囲まれていた。抑制性の免疫シグナルであるIL-17は、悪性度が高い病変の進行に重要であると考えられた。これらの知見により、非浸潤性乳管がんの病変を区別する特徴について、重要な洞察を得ることができる。詳細はNature Communications誌に掲載。

遺伝カウンセリングや遺伝子検査の対象となる女性を同定する調査

BRCA遺伝子変異を持つ女性は、乳がんや卵巣がんの生涯リスクが高いと言われている。このようなリスクがあり、またリスク低減のための介入を推奨するガイドラインがあるにも関わらず、BRCA1/2遺伝子検査の基準を満たした人のうち、遺伝カウンセリングや遺伝子検査の紹介を受ける人は、半数にも満たない。Banu Arun医師率いる研究チームは、地域の乳房画像診断センターでマンモグラフィを受けた34,851人の患者を対象に質問票を作成した。この研究では、遺伝カウンセリングの紹介や遺伝子検査の対象となる女性を同定するための、大規模スクリーニングの実現可能性が示された。またこの研究では、BRCA遺伝子変異のある女性と、乳がんの生涯リスクが高い女性が同定された。これにより、医療関係者らが通常のマンモグラフィに加えて乳房MRIや化学的予防を行うなど、より良いリスク管理戦略を共有することが可能となる。詳細はCancer誌に掲載。

翻訳担当者 平沢沙枝

監修 佐々木裕哉(白血病/MDアンダーソンがんセンター)

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