研究ハイライト2021/7/14:急性骨髄性白血病、肺がん治療ワクチン、トリプルネガティブ乳がん
急性骨髄性白血病マウスモデルにより併用療法が有望であることが示される
急性骨髄性白血病(AML)は骨髄に生じるがんである。治療にはタンパク質Bcl-2を標的とする薬剤であるベネトクラクスを低メチル化剤と併用することが多いが、ベネトクラクスへの抵抗性を生じて再発する患者が多い。Bing Carter博士とMichael Andreeff医学博士が率いる研究チームは、急性骨髄性白血病の特定のサブセットで働く別のタンパク質、メニン(menin)を阻害する薬物SNDX-50469とベネトクラクスとの併用療法の有効性を検討した。このマウスモデルによる白血病研究では、ベネトクラクス単剤は急性骨髄性白血病に対して効果を示さなかったが、併用療法は強力な抗白血病効果を示し、マウスの生存期間を延長した。併用療法の作用機序、この薬物の適切な投与量、および臨床効果を解明するために、さらなる研究が必要である。詳細はBlood誌を参照。
肺がんの変異タンパク質を標的とする治療ワクチン
ネオアンチゲンは、がん細胞の遺伝子変異によって生じる変異タンパク質であり、免疫系が異常として認識することができる。MDアンダーソンの研究者らは、一部の患者の腫瘍で発見した小さいネオアンチゲン断片であるペプチドを含有する治療ワクチンを開発した。個別化ワクチンは、免疫系を刺激して腫瘍を認識し攻撃するように設計される。Fenge Li医学博士とGregory Lizée博士が率いる第1相臨床試験は、通常の治療法で増悪した非小細胞肺がん患者を対象としてこれらのワクチンを評価した。副作用はごくわずかで、この試験に参加した患者24人のうち7人は臨床的に奏効し、そのうち1人は完全奏効であった。奏効した患者全員にEGFR変異が認められ、免疫モニタリングから、反応はいくつかの共通のEGFRネオアンチゲンに対して生じていることが示唆された。以上の結果から、個別化ネオアンチゲンワクチンは進行肺がん患者に安全で、実現可能であり、有効である可能性があることが示唆される。詳細はJournal for ImmunoTherapy of Cancer誌を参照。
JNKシグナル伝達がトリプルネガティブ乳がんの悪性度を促進
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は悪性度が高い疾患で、乳がん診断の約10~15%を占める。トリプルネガティブ乳がんは予後が悪いため、腫瘍の成長と増悪を促進する機序を解明して新たな治療標的を見つけることが、乳がん研究の主要な注目領域である。上野直人医学博士と千場隆医学博士が率いる研究チームは、トリプルネガティブ乳がんのJNK/C-JUN/CCL2シグナル伝達軸が、腫瘍の増悪に重要な役割を果たしている免疫抑制性の腫瘍微小環境(TME)の形成の一因であることを明らかにした。このチームは、腫瘍関連マクロファージが分泌するJNK制御下CCL2が腫瘍浸潤性制御性T細胞を動員して、トリプルネガティブ乳がんの悪性度を進行させる免疫抑制性腫瘍微小環境を形成していることを確認した。この研究結果から、JNK阻害薬を用いて免疫抑制性腫瘍微小環境を復元できることを実証できれば、トリプルネガティブ乳がんに対する新たな治療戦略を提供できる。JNK阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法は、トリプルネガティブ乳がんの増悪に対する治療効果が期待できる。詳細はJournal of the National Cancer Institute誌を参照。
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