特定の遺伝性乳がんのASCO迅速推奨ガイドライン更新ー術後オラパリブ推奨を追加
最新の研究で、HER2陰性で高リスクの早期乳がん、および生殖細胞系BRCA遺伝子変異を有する患者へのオラパリブ投与を支持
米国臨床腫瘍学会(ASCO)の新たなガイドライン更新で、HER2陰性の高リスクの早期乳がんで、生殖細胞系BRCA遺伝子変異を有する患者に対し、術前/術後化学療法および放射線を含む局所治療が終了した後に、1年間の術後療法としてオラパリブ(販売名:リムパーザ)による治療を推奨した。これはASCO、米国放射線腫瘍学会(ASTRO)、外科腫瘍学会(SSO)が遺伝性乳がんの管理について発表した2020年のガイドラインを更新するもの[1]。
この推奨の更新はASCOの新たな戦略にもとづき、診療を変えるような最新の研究結果を反映した実際的なガイドラインを、迅速に臨床医に提供することを目的としている。推奨更新には、2021年のASCO年次総会で発表され、2021年6月3日にNew England Journal of Medicine誌に掲載されたOlympiAランダム化比較試験のエビデンスが反映された[2]。
「従来、ガイドラインの更新には、新たなデータのレビュー、専門家パネルの編成、推奨事項の作成、承認、発表までと数カ月を要していました。このため、急速に進歩する研究を活かそうとする臨床医にタイムリーなサポートを提供することが困難でした。迅速なガイドライン更新というASCOの新たな戦略は、診療を変えるような臨床試験について迅速なエビデンスレビューと普及で、こうしたニーズに応えるものです」と、ASCOの最高経営責任者であるClifford A. Hudis医師(FACP:米国内科学会フェロー、FASCO:ASCOフェロー)は述べている。
OlympiA試験の著者らは、再発リスクの高いHER2陰性の早期乳がんで、生殖細胞由来のBRCA1またはBRCA2(*遺伝性BRCA変異)という病原性または病原性の可能性が高い変異を有する患者には、ポリ(アデノシン二リン酸リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤であるオラパリブを術後治療に使用することで、プラセボと比較して、浸潤および遠隔の無病生存率が有意に改善することを報告した[2]。これらの明白かつ肯定的なデータにもとづき、ASCOは同条件下でのオラパリブの役割に特化してガイドライン推奨の暫定的な更新を行った。
「先週発表されたOlympiA試験の結果は、該当する患者の治療に大きな改善を示しました。ASCOの専門家ガイドライン委員会とエビデンスに基づく医療委員会は、この点に着目し、患者がこの研究の進歩の恩恵を一刻も早く受けられるよう、ガイドライン更新を迅速に作成し、暫定的に承認しました」と、ASCO の副会長および最高医学責任者のJulie Gralow医師(FACP:米国内科学会フェロー、FASCO:ASCOフェロー)は述べた。
ASCOの暫定的な承認をもって、正式な評価とJournal of Clinical Oncology誌への投稿が行われる予定。オリジナルはこちらを参照ください:迅速推奨ガイドラインの更新(原文)
HER2陰性で再発リスクが高い早期乳がんで、生殖細胞系列のBRCA1またはBRCA2という病原性または病原性の可能性が高い変異を有する患者に対しては、術前/術後化学療法と、放射線療法を含む局所治療が終了した後に、1年間のオラパリブの術後補助治療を行うべきである。最初に手術を受けた患者の場合、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)で腫瘍サイズが2cm以上、または腋窩リンパ節に転移がある患者には、術後治療にオラパリブの使用が推奨される。
乳がんに関する患者向け情報は、こちらで参照可能。https://www.cancer.net/cancer-types/breast-cancer
参考文献:
- Tung NM, Boughey JC, Pierce LJ, et al: Management of Hereditary Breast Cancer: American Society of Clinical Oncology, American Society for Radiation Oncology, and Society of Surgical Oncology Guideline. J Clin Oncol 38:2080-2106, 2020
- Tutt ANJ, Garber JE, Kaufman B, et al: Adjuvant Olaparib for Patients with BRCA1- or BRCA2-Mutated Breast Cancer. N Engl J Med, 2021
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