早期トリネガ乳がんのアテゾリズマブ併用療法はQOLを下げずに治療効果を改善
早期乳がん患者に対する標準化学療法レジメン+免疫チェックポイント阻害薬併用は、化学療法単独と比べて患者の日常動作能力に悪影響を及ぼさないことが、ダナファーバー、ブリガム&ウィメンズがんセンターの新たな研究結果で示された。
免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用は早期トリプルネガティブ乳がん患者の治療奏効率を向上させることができるという既知の知見に加え、今回の報告では、患者の生活の質を下げることなく併用療法の治療効果が得られることが裏付けられた、と研究著者は述べている。サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)のバーチャルセッションにおいて、ダナファーバー、ブリガム&ウィメンズがんセンターの乳がん免疫腫瘍学プログラム長、Elizabeth Mittendorf医学博士により発表される本研究は、早期乳がん患者の日常動作機能に対する併用療法の影響を検討するために初めて患者の自己評価を用いている。
この解析で用いられたデータは、治療歴のないトリプルネガティブ乳がん患者333人を対象として標準治療の術前化学療法と免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブ(販売名:テセントリク)との併用の安全性と有効性を検証する第3相試験であるIMpassion031試験に基づく。アテゾリズマブは、腫瘍細胞上のPD-L1タンパク質を阻害し、がん細胞が免疫応答により攻撃可能となるよう仕向けることにより作用する。
トリプルネガティブ乳がんは、乳がん患者の約13%を占めるがんで、病理検査でエストロゲンおよびプロゲステロンの受容体とHER2タンパクの発現がいずれも陰性(ネガティブ)であることからそう呼ばれる。トリプルネガティブ乳がんは、他の乳がんよりも増殖が速く、予後が悪いことが多い。この乳がんに対する免疫療法薬の臨床試験は、患者が利用できる治療薬の選択肢を増やすことを目的としている。
IMpassion031試験に参加した患者は、乳がん手術前にアテゾリズマブ+化学療法薬(ナブパクリタキセル、アドリアマイシン、シクロホスファミド)を投与される群、または同化学療法薬+プラセボを投与される群のいずれかにランダムに割り付けられた。治療への反応は手術時に評価された。
今年初めに研究者らは、トリプルネガティブ乳がん患者がこの併用療法で完全奏効(がんが検出限界以下に消失した状態)判定を受ける可能性が高まったことを報告した。
そこで今回の研究では、併用療法による奏効が、患者の日常動作の能力低下を招いていないかどうかを調査した。参加者に対して、がん治療後数カ月間のフォローアップ期間中、仕事や食事の準備などの日常活動を行う能力の評価を依頼した。悪心、下痢、疲労などの治療の副作用が原因でこうした日常活動で困難が増えたと患者から報告があったが、併用療法群の患者と化学療法単独群の患者との間に有意差はなかった。副作用が経時的に軽減するにつれて、どちらの治療群の患者も回復した。
「早期乳がんの治療は根治目的です。その場合、治療成績の向上と患者の生活の質に与える影響とのバランスを確認したいものです。今回の研究からは、チェックポイント阻害薬+化学療法の組み合わせは合格と言えるでしょう」とMittendorf博士は述べている。
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