FDAが局所再発切除不能または転移トリネガ乳がんにペムブロリズマブを迅速承認

2020年11月13日、米国食品医薬品局(FDA)は、FDA承認検査で腫瘍にPD-L1発現(複合陽性スコア[CPS]10以上)が認められる局所再発切除不能または転移トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の患者の治療薬として、化学療法との併用でペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ、Merck & Co.社)を迅速承認した。

FDAはまた、PD-L1 IHC 22C3 pharmDx(Dako North America, Inc.社)を、ペムブロリズマブ投与対象のTNBC患者を選択するためのコンパニオン診断薬として承認した。

本承認は、転移がんに対する化学療法を受けたことのない、局所再発切除不能または転移トリプルネガティブ(TNBC)患者を対象とした多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験であるKEYNOTE-355(NCT02819518)に基づくものである。患者は、異なる化学療法(タンパク結合パクリタキセル、パクリタキセル、またはゲムシタビン+カルボプラチン)との併用で、点滴静注により3週間ごとに1日目にペムブロリズマブ200mgを投与する群またはプラセボを投与する群に2:1の割合で無作為に割り付けられた。

主要有効性評価項目は、複合陽性スコア(CPS)10以上の患者のサブグループにおいて、RECIST 1.1に従い盲検独立判定により評価された無増悪生存期間(PFS)であった。PFS中央値は、ペムブロリズマブ+化学療法群で9.7カ月(95%信頼区間[CI]:7.6~11.3)、プラセボ群で5.6カ月(95%CI:5.3~7.5)であった(ハザード比[HR] 0.65、95%CI 0.49~0.86、片側p値=0.0012)。

KEYNOTE-355でペムブロリズマブ+化学療法を受けた患者に最もよくみられた副作用(発現率20%以上)は、疲労、悪心、下痢、便秘、嘔吐、脱毛症、発疹、咳、食欲減退、頭痛であった。ペムブロリズマブ+化学療法を受けた患者に最もよくみられた臨床検査値異常(発現率20%以上)は、貧血、白血球減少症、好中球減少症、リンパ球減少、血小板減少症、ALT・AST上昇、高血糖、低アルブミン血症、アルカリホスファターゼ上昇、低カルシウム血症、低ナトリウム血症、低リン酸血症、低カリウム血症であった。

成人の局所再発切除不能または転移トリプルネガティブ(TNBC)患者に対するペムブロリズマブの推奨用量は、化学療法実施前に3週間ごとに200mgまたは6週間ごとに400mgの投与であり、疾患進行または許容できない毒性が認められるまで、または最長24カ月まで継続する。ペムブロリズマブと併用する場合は、28日サイクルの1日目、8日目および15日目にタンパク結合パクリタキセル100mg/m2、28日サイクルの1日目、8日目および15日目にパクリタキセル90mg/m2、または21日サイクルの1日目および8日目にゲムシタビン1000mg/m2+カルボプラチンAUC 2mg/mL/分のいずれかを点滴静注で投与する。

キイトルーダの全処方情報はこちらを参照。(*日本語の添付文書はこちらを参照)

本審査には、FDAによる評価を円滑に進めるために申請者が自発的に申請を行うAssessment Aidが使用された。

本申請は、無増悪生存期間に基づいて迅速承認された。本適応の継続的な承認には、検証的試験での臨床的有用性の検証と説明が条件となる可能性がある。FDA迅速承認プログラムに関する情報は、「企業向けガイダンス:重篤疾患のための迅速承認プログラム-医薬品およびバイオ医薬品」(the Guidance for Industry: Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics)に記載されている。

翻訳担当者 張 知子

監修 小坂泰二郎(乳腺外科・化学療法/医療社会法人石川記念会 HITO病院)

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