浸潤性小葉乳がんの再発リスクを遺伝子検査で判定
乳がん組織中の70遺伝子の活性を探索する検査は、手術後にがんが再発または進行するリスクが高い浸潤性小葉がん(ILC)患者を特定するのに役立つと、ダナファーバーがん研究所の研究者らが新たに発表した。この知見は、浸潤性小葉がんの女性500人近くを対象とした国際臨床試験に基づくもので、本日開催される第12回欧州乳がん学会(EBBC)で発表される予定である。
浸潤性小葉がんのための手術を受ける患者の大多数はホルモン療法に良好に反応し、さらなる治療を必要としないが、一部の患者はがんの再発リスクが高く、化学療法、放射線療法、または分子標的療法による追加の治療が有益である可能性がある。今回の新たな研究で、研究者らはMammaPrintとして知られる70遺伝子の検査により、これらの高リスク患者の一部が第3相臨床試験で同定されたことを見出した。
浸潤性小葉がんは浸潤性乳がん症例の約10%を占める。手術後およびホルモン療法後にどの患者が治療から利益を得られる可能性が高いかを明らかにすることは困難であった。
「浸潤性小葉がんと診断された患者に化学療法を行うかどうかの決定は困難です。ベルギーのJules Bordet研究所のChristos Sotiriou教授と共同で行った初期の研究の結果では、浸潤性小葉がん症例の10~15%が遺伝子レベルで高リスクに分類されることが示されました。低リスクに分類された患者と比較すると、これらの患者の生存転帰は不良でした」とEBCCで研究結果を発表する予定のダナファーバーがん研究所のOtto Metzger医師は述べた。
今回の新たな研究では、遺伝子検査と従来の臨床検査を比較した第3相試験であるMINDACT試験のデータを基にして、リンパ節転移が3個以下の乳がん患者のうち、どの患者が手術後に化学療法の恩恵を受ける可能性が高いかを明らかにした。この試験で評価された患者5,313人のうち、487人が浸潤性小葉がんであり、このうち255人がClassicタイプであり、232人がVariantタイプであった。また4,826人が浸潤性乳管がん(IDC)であった。
70遺伝子シグネチャー検査では、浸潤性小葉がん患者の16.2%、浸潤性乳管がん患者の39.1%が、がん再発のゲノムリスクが高いと分類された。
研究者らは、疾患の再発がない患者の5年生存率(無病生存率、DFS)、または他の部位に疾患が転移しない患者の5年生存率(無遠隔転移生存率、DMFS)の推定値は、70遺伝子シグネチャー検査で高リスクに分類された浸潤性小葉がんと浸潤性乳管がんの両方でほぼ同じであることを見出した。無病生存率は浸潤性乳管がんで87.1%、浸潤性小葉がんで84.6%であった。無遠隔転移生存率は浸潤性乳管がんで92.3%、浸潤性小葉がんで89.4%であった。
70遺伝子シグネチャー検査で低リスクに分類された浸潤性乳管がんと浸潤性小葉がんに関する推定値も同様であった。無病生存率は浸潤性乳管がんで92.5%、浸潤性小葉がんで92%であった。無遠隔転移生存率は浸潤性乳管がんで96.5%、浸潤性小葉がんで96.6%であった。
Metzger医師は次のように述べた。「無遠隔転移生存期間と無病生存期間の推定値は、70遺伝子シグネチャー検査によって低リスクまたは高リスクに分類された浸潤性小葉がんと浸潤性乳管がんに関して同等であった。このことは、この検査が浸潤性小葉がんの予後予測に有用であることを示唆している。浸潤性小葉がんと診断された患者の治療決定に、70遺伝子シグネチャー検査で定義された生物学的特徴を取り入れることは、疾患の程度、他の健康状態、患者の好みを含む複雑な意思決定プロセスを促進するはずである」。
MINDACT試験の試験責任医師であるFatima Cardoso医師(ポルトガルのリスボンにあるChampalimaud臨床センターのBreast Unit部長)は、会議前の声明の中で、「本学会では、MINDACT無作為化第3相臨床試験における大規模な浸潤性小葉がん患者群における70遺伝子シグネチャー検査の有用性を初めて報告する。これらの結果は、臨床医が個々の患者に合った的確な治療法を選択するうえで重要である」と述べた。
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