乳がんに対するパクリタキセル+アテゾリズマブ併用の有効性と安全性について、FDAが注意喚起

2020年9月8日、米国食品医薬品局(FDA)は医療従事者、がん領域の臨床研究者、患者に対して、治療歴のない手術不能な局所進行性または転移性トリプルネガティブ乳がん(mTNBC)患者へのアテゾリズマブ(販売名:テセントリク)とパクリタキセルの併用を検討した臨床試験で、この併用は同疾患の治療には効果がないことが示されたと注意喚起した。

アテゾリズマブ+パクリタキセル併用は乳がんでの使用は承認されていない。しかし、別の併用療法であるアテゾリズマブ+アルブミン結合パクリタキセル(アブラキサン)併用療法は、現在、FDAが承認する判定方法に基づいてPD-L1発現腫瘍細胞を有する(染色強度を問わずPD-L1免疫染色を示す腫瘍浸潤免疫細胞が腫瘍面積の1%以上を占める状態)とみなされる成人mTNBC患者の治療としては承認されている。アテゾリズマブ+アルブミン結合パクリタキセル併用療法の継続承認は、追加試験で治療の有益性が証明されることが条件となる可能性がある。

医療従事者は、実臨床でアルブミン結合パクリタキセル(アブラキサン)の代わりにパクリタキセルを使用してはならない。

本臨床試験IMpassion131は、mTNBC患者を対象に、アテゾリズマブ+パクリタキセル併用療法をプラセボ+パクリタキセルと比較した第3相多施設、二重盲検、プラセボ対照ランダム化比較試験であった。

この臨床試験では、アテゾリズマブ+パクリタキセル併用療法は、プラセボ+パクリタキセルと比較して、PD-L1陽性患者におけるがんの進行と死亡のリスクを有意に下げることはなかった。さらに、全生存期間の中間解析結果では、PD-L1陽性集団と全集団の両方において、パクリタキセル+アテゾリズマブよりもパクリタキセル+プラセボの方が有利であった。

FDAはIMpassion131の結果をレビューし、IMpassion131の結果と処方情報の変更可能性に関する新情報を通知する予定である。また、FDAは乳がんを対象とした進行中の臨床試験でもアテゾリズマブ+パクリタキセル併用を評価中であり、必要に応じて追加の変更を推奨する予定である。

他の承認された用途でアテゾリズマブ+パクリタキセル投与を受けている患者は、医師の指示に従って投与を継続すること。

何か疑問や心配がある患者は主治医に相談すること。医療従事者および患者は、これらの製品および他の類似製品の使用に関連した有害事象や副作用があれば、FDAのMedWatch有害事象報告プログラムに報告すること。

報告書をオンラインで記入して提出する。または
フォームをダウンロードして記入し、FAX(1-800-FDA-0178)で送信する。

テセントリクの処方情報はこちら

翻訳担当者 有田香名美

監修 下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立国際医療研究センター乳腺腫瘍内科)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

健康な女性にも乳がんに似た細胞があることが研究で判明の画像

健康な女性にも乳がんに似た細胞があることが研究で判明

乳房組織には、浸潤性乳がんに見られる遺伝子変化を持つ正常細胞が含まれており、将来の早期発見へのアプローチの指針となる可能性がある。

健康な女性の場合、一見正常に見える乳房細胞の一部に浸潤...
心臓病患者は進行乳がんのリスクが高まる可能性の画像

心臓病患者は進行乳がんのリスクが高まる可能性

進行または転移乳がんと診断された患者は、早期乳がんの患者に比べて心血管疾患の既往の可能性が高いことが研究から判明

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者によると、心血管疾患(C...
米FDAが切除不能/転移ホルモン陽性HER2陰性乳がんにダトポタマブ デルクステカンを承認の画像

米FDAが切除不能/転移ホルモン陽性HER2陰性乳がんにダトポタマブ デルクステカンを承認

2025年1月17日、米国食品医薬品局(FDA)は、切除不能または転移性疾患に対するホルモン療法および化学療法を受けたことのある切除不能または転移、ホルモン受容体(HR)陽性、ヒト上皮...
米国公衆衛生局長官がアルコールとがんリスクの関連について勧告の画像

米国公衆衛生局長官がアルコールとがんリスクの関連について勧告

米国保健福祉省(HHS)ニュースリリース飲酒は米国におけるがんの予防可能な原因の第3位本日(2025年1月3日付)、米国公衆衛生局長官Vivek Murthy氏は、飲酒とがんリ...