高リスクのルミナルB型乳がんに、ホルモン療法+CDK4/6阻害薬は化学療法と同等の効果
高リスクのルミナルB型乳がん患者に対して術前に行うサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害薬リボシクリブ(販売名:キスカリ)およびアロマターゼ阻害薬であるレトロゾール(販売名:フェマーラ)併用治療は、多剤併用化学療法と同等の奏効率を示した。このSOLTI-1402/CORALLEEN試験の結果は、12月10~14日開催のサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表されたものである。本試験のデータは、The Lancet Oncology誌でも同時発表された。
「高リスクのルミナルB型乳がんに対する現在の標準治療は、術前化学療法です。しかしながら、この療法は高レベルの毒性を伴います」と、スペインのバレンシアにあるInstituto Valenciano de Oncologia(バレンシアがん研究所)の腫瘍内科医であるJoaquin Gavilá医師は述べた。術前ホルモン療法は化学療法の代替であるが、高リスクの乳がんに対する高い有効性を示していないとGavilá医師は説明した。「高リスク乳がん患者向けに多剤併用化学療法の代替となる有効性の高い治療法を発見することは優先課題です」とGavilá医師は付け加えた。
以前の試験では、がん細胞の分裂を防ぐために設計された薬剤であるCDK4/6阻害薬とホルモン療法の併用療法は、遠隔転移を伴う乳がんにおける奏効率が化学療法と同等であるとの結果が示されていた。「CDK4/6阻害薬とホルモン療法の併用療法が進行乳がんに有効であることはすでにわかっていました。そこで、高リスクの早期乳がんへの有効性を検討したいと思いました」とGavilá医師は説明した。
本試験では、高リスクのルミナルB型で病期I~III期の手術可能な乳がん患者を対象として、CDK4/6阻害薬リボシクリブ+アロマターゼ阻害薬レトロゾール併用療法の有効性を検討した。本試験には患者106人を登録した。患者らは、術前療法としてリボシクリブ+レトロゾール併用療法または多剤併用化学療法をそれぞれ受ける群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。手術時に組織検体の採取が可能であった患者101人をITT解析対象とした。
手術時に、PAM50によって評価される再発スコアで低リスクであった割合は、リボシクリブ+レトロゾール投与群では49人中の48%であったのに対し、化学療法群では52人中の47.1%であった。侵襲性の低いサブタイプであるルミナルA型への内因性サブタイプの転換は、リボシクリブ+レトロゾール投与群では88%に生じたのに対し、化学療法群では84.3%に生じた。残存腫瘍量が少ない割合は、リボシクリブ+レトロゾール投与群では8%であったのに対し、化学療法群では11.8%であった。予後良好の別の指標であるPEPI 0の割合は、リボシクリブ+レトロゾール投与群では24%であったのに対し、化学療法群では17.6%であった。
グレード3~4の毒性は、リボシクリブ+レトロゾール投与群では患者の54.9%にみられたのに対し、化学療法群では69.2%にみられた。
「本試験の結果から、リボシクリブとレトロゾールを併用した術前化学療法は、標準療法である多剤併用化学療法と同等の臨床的有用性があり、毒性がより低いことを示しています」とGavilá医師は述べた。「この併用療法は、高リスクのルミナルB型乳がん患者に対する化学療法の代替として検討する価値があると思われます」。
Gavilá医師は、この結果は予備的なものであり、今後の臨床試験でさらに確認する必要があると注釈した。
SOLTI-1402/CORALLEEN試験については、Novartis社、the Breast Cancer Research Foundation、米国がん学会(AACR)および Breast Cancer Now Career Catalystが支援した。Gavilá医師はNovartis社、Pfizer社およびEli Lilly社の顧問であり、Roche社、Novartis社およびMSD社のコンサルタントである。Gavilá医師は、SOLTIの乳がん研究グループの理事会の理事である。
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