アナストロゾールの乳がん予防効果は治療中止後も長期持続する

乳がんの発症リスクが高い閉経後女性の乳がん発生率は、5年間のアロマターゼ阻害剤アナストロゾール治療を中止した後5.9年間、有意に低下し続けたことが、12月10〜14日に開催された2019年サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表された国際乳がん介入研究II(IBIS-II)予防試験のデータで示された。この研究結果はThe Lancet誌で同時発表されている。

「IBIS-II予防試験は、5年間のアナストロゾール投与が、乳がんリスクが高い閉経後女性において安全かつ効果的に発症を予防できるかどうかを調査するために設計されました。2013年、追跡調査開始から7年間で、アナストロゾールはプラセボと比較して乳がん発生率を有意に低下させ、副作用はほとんどありませんでした」と、国際乳がん介入研究グループの共同議長であるJack Cuzick医学博士は述べている。

「私たちの新しいデータは、中央値10.9年の追跡調査後、乳がん発生率の有意な低下が続いていることを示しています」と、ウルフソン予防医学研究所所長、がん予防センター所長、ロンドン大学クイーン・メアリー・カレッジのJohn Snow疫学教授でもあるCuzick氏は続けた。 「アナストロゾールの治療を中止した後でも乳がんの発生率に継続的な影響を与えていることがわかったのは素晴らしいことです。これにより、乳がん予防療法としての使用を肯定する論拠が補強されるからです」と述べた。

Cuzick氏の研究チームは、2003年から2012年までに乳がん発症リスクが高い閉経後女性3,864人をIBIS-II予防試験に登録した。乳がんの血縁者が2人以上いる、50歳未満で乳がんを発症した母親または姉妹がいる、両側乳房に乳がんがある母親または姉妹がいるなど、複数の基準のいずれかを満たす女性を乳がんリスクが高いとみなした。参加者のうち、1,920人を5年間アナストロゾール群に、1,944人をプラセボ群に無作為に割りつけた。 5年間の治療遵守はアナストロゾール群で74.6%、プラセボ群77.0%であり、有意差はなかった。

追跡期間中央値10.9年後、アナストロゾール群女性は、プラセボ群女性と比較して、乳がんを発症する可能性が50%低いことがわかった。

Cuzick氏は、2013年に報告した副作用(多くは筋肉痛、顔面紅潮が少し増加した程度)以外の新たな有害な副作用はなかったと説明した。 「アナストロゾールで過剰な骨折や他の深刻な副作用はみられませんでした」と同氏は語った。

「10.9年の追跡調査後の乳がん発生率の50%減少は、最初の7年の追跡調査後に報告した53%減少よりもわずかに低いが、それでも有意な効果であり、タモキシフェン治療でみられる効果よりも大きいものです。データのもう1つの解釈は、治療中およびその後5年間に1人の乳がんを予防するために5年間アナストロゾール投与を受ける必要がある女性が推定29人いると言い換えられることです」と、Cuzick氏は語った。

「これは、同期間で1人の乳がんを予防するために5年間タモキシフェン投与を受ける必要がある女性の推定数49人よりもはるかに少ない数です。したがって、われわれの今回の結果は、乳がんリスクが高い閉経後女性の乳がん予防にはアナストロゾールが望ましい治療法であり、タモキシフェンはアナストロゾールで重篤な副作用が生じた女性に対して使用すべきであることを強く示唆しています」と、Cuzick氏は付け加えた。

Cuzick氏は、アナストロゾールの予防効果は、エストロゲン受容体陽性乳がんと非浸潤性乳管癌でみられるが、エストロゲン受容体陰性乳がんでは見られないと注釈した。 これは予測されたことである。というのも、アナストロゾールはエストロゲン経路を標的とするからであると、同氏は語った。

解析の時点で、129人の死亡が報告されたが、アナストロゾール群とプラセボ群の全死因死亡率に有意な差はなかった。 乳がんによる死亡者はわずか5人で、アナストロゾールに割り付けた参加者2人、プラセボに割り付けた参加者3人であった。

「この乳がん死亡数では、アナストロゾールが乳がん死亡率を低下させるかどうかを判断するには少なすぎるため、これを調査するためにIBIS-II予防試験参加者をより長く追跡調査する予定です」と、Cuzick氏はまとめた。

本試験はアストラゼネカ社、キャンサーリサーチUK、オーストラリア国立保健医療研究委員会から助成を受けた。Cuzick氏はMyriad Genetics社のコンサルタントの1人である。

翻訳担当者 有田香名美

監修 田原梨絵(乳腺科、乳腺腫瘍内科)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

転移トリネガ乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の効果予測ツールを開発の画像

転移トリネガ乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の効果予測ツールを開発

ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターおよびジョンズホプキンス大学医学部の研究者らは、転移を有するトリプルネガティブ乳がんにおいて、免疫療法薬の効果が期待できる患者をコンピュータツ...
FDAが高リスク早期乳がんに対し、Kisqaliとアロマターゼ阻害剤併用およびKisqali Femara Co-Packを承認の画像

FDAが高リスク早期乳がんに対し、Kisqaliとアロマターゼ阻害剤併用およびKisqali Femara Co-Packを承認

米国食品医薬品局(FDA)2024年9月17日、米国食品医薬品局(FDA)は、ホルモン受容体(HR)陽性、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性の再発リスクの高いステージIIおよびI...
乳がん後の母乳育児が安全であることを証明する初めての研究結果の画像

乳がん後の母乳育児が安全であることを証明する初めての研究結果

● 欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2024で発表された2つの国際的な研究により、乳がん治療後に母乳育児をした女性において、再発や新たな乳がんの増加はないことが示された。
● この結果は、乳...
HER2陽性乳がんの脳転移にトラスツズマブ デルクステカン(抗体薬物複合体)が有効の画像

HER2陽性乳がんの脳転移にトラスツズマブ デルクステカン(抗体薬物複合体)が有効

• 大規模な国際共同臨床試験において、トラスツズマブ デルクステカンは、HER2陽性乳がん患者の脳転移に対して優れた抗がん作用を示した。
• 今回の結果は、今まで行われてきた複数の小規模...