遠隔転移を有する乳がんに注射剤より経口パクリタキセルが有効

12月10日~14日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウムで発表された第3相試験の結果によれば、化学療法で経口剤のパクリタキセル(販売名:タキソール)を投与した転移性乳がん患者は、静脈内投与した患者よりもより良い奏効や生存期間を示し、神経障害の出現が少なかったという。

パクリタキセルは転移性乳がん患者の治療に広く使用されているが、一般的に静脈内投与される。本試験では、経口パクリタキセルを血中に吸収させるP糖たんぱく質ポンプ阻害薬であるencequidarと併用投与し、経口製剤のパクリタキセルを評価した。

「化学療法薬の経口投与は、がん患者、特に定期的にクリニックで注射を受けることが困難な地域の患者にとって、大変重要です」とインテグラルオンコロジーセンター腫瘍内科医で、ホンジュラス、サンペドロスラのDEMEDICAと共に研究を行った、本臨床試験責任医師であるGerardo Antonio Umanzor Funez医師は述べた。

本研究には、402人の転移乳がん患者を組み入れた。患者は、経口パクリタキセル205mg/m²と週3日のencequidarを投与する群(Pac+E群)と、175mg/m²のパクリタキセルを3週ごとに静脈内投与する群(IV Pac群)に2:1の割合でランダムに割り付けた。奏効率が評価され、独立した放射線画像検査会社により盲検的に2回連続した評価で確認した。

主要評価項目は、2回の連続した時点で、放射線画像検査で確認された腫瘍の奏効率とし、副次評価項目は、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)とした。

研究結果は、IV Pac群の23.4%に対し、 Pac+E群の35.8%に奏効を確認したことを示した。事前に規定された、修正ITT集団の評価において、奏効率はPac+E群で40.4%、IV Pac群で25.6%だった。集団からは、RECISTに基づき、中央判定を行う放射線科医により評価可能な標的腫瘍を有しない患者、または十分な治療を受けていない患者は除外した。

奏効の持続性の測定では、奏効が確認された両群のうち、IV Pac群の38%に対しPac+E群の51%で、150日を超える持続を確認した。さらにより高い割合のPac+E群患者が治療を続けた。

継続中の解析によるPFSの中央値は、Pac+E群で9.3カ月、IV Pac群で8.3カ月だった。OSはIV Pac群で16.9カ月に対しPac+E群は27.9カ月だった。

Pac+E群が好中球減少症、感染症、消化器系の副作用を高率で示したことが報告された。神経障害の発生率や重症度の報告は低く、IV Pac群の57%に対し17%だった。グレード3の神経障害症状はIV Pac群の8%に対しPac+E群の1%が経験した。

最新の数値はSABCSで公開される見込みである。

「パクリタキセルの経口剤は、患者、特に容易に通院できない患者に対し新たな治療の選択肢を提供できます」Umanzor医師 は述べた。「白血球数は引き続きモニターする必要がありますが、経口投与では患者は治療中も家にいることができ、貴重な時間を治療室で費やすのを避けることができます」。

「持続的に奏効し、神経障害が最小限で、早期に生存期間の改善をもたらしたことは、私たちにとって嬉しい驚きでした」。

次のステップは、末梢神経障害を発現するリスクの高い患者で経口パクリタキセルの忍容性を試験することだとUmanzor医師は述べた。経口剤はさらに他のがんや、単独あるいは他の薬物との併用で研究される可能性がある。

Umanzor医師は、研究の主要評価項目である、中央判定で確認された腫瘍の奏効が盲検的に評価されている一方、研究は臨床現場では非盲検的に行われている可能性を指摘し、これは有害事象の報告にバイアスをもたらす可能性があると説明した。さらに、この研究は奏効率のみが統計学的な検出力をもって評価されており、副次評価項目はそうではない。

本研究はパクリタキセルの経口剤の製造メーカーである Athenexにより資金提供を受けた。Umanzor医師 は利害関係がないことを開示している。

翻訳担当者 白鳥理枝

監修 尾崎由記範(臨床腫瘍科/虎の門病院)

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