CDK4 / 6阻害薬はさまざまながん種の移植マウスで奏効

パルボシクリブなど、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害薬は、ホルモン受容体(HR)陰性乳がん、胃がん、大腸がんなど、異なるがん種の患者由来異種移植(PDX)マウスに対して有効であることを示すデータが、10月26-30日に開催されたAACR-NCI-EORTC International Conference on Molecular Targets and Cancer Therapeutics(AACR-NCI-EORTC共催 がん分子標的治療国際会議)で発表された。

米国食品医薬品局(FDA)は、HR陽性HER2陰性進行乳がんの治療に、CDK阻害薬であるパルボシクリブ(商品名:イブランス)、アベマシクリブ(商品名:ベージニオ)、ribociclib[リボシクリブ](商品名:Kisqali、*日本では開発中止)を承認している。

「われわれの研究の主目標は、CDK阻害薬が奏効する可能性のある他のがん種を特定することでした」と、South Texas Accelerated Research Therapeutics(START)社(テキサス州サンアントニオ市)の前臨床研究部長Michael J. Wick博士は述べた。「強力な標準治療選択肢のないがん種が多い中、われわれの研究結果は、このクラスの薬剤がさまざまながん種に有効である可能性を示しています」。

まず、研究者らは上述したFDA承認済CDK4 / 6阻害薬3種類の有効性を、乳がんモデル100種類で評価した。これら乳がん患者由来のモデルは、既知の乳がんサブタイプをすべて網羅し、一度も化学療法を受けていない人(化学療法未実施)から強度の化学療法を受けた人まで治療範囲を拡大したとWick氏は述べた。

研究者らは腫瘍成長率を測定して有効性を調査した。CDK4 / 6阻害剤治療後、治療群の平均腫瘍成長率が対照群の平均腫瘍成長率の20%以下である場合、そのモデルを感受性ありと定義した。

化学療法未実施患者由来のHR陽性マウスは、CDK阻害薬治療に対する感受性が最も高いことがわかった。評価したHR陽性モデルのうち、ESR1変異およびPIK3CA変異を有する乳がんにおいてCDK阻害薬の感受性差があった。また、数種類のHR陰性乳がんモデルでもCDK阻害薬に対する感受性が認められた。

「ホルモン受容体(HR)陰性乳がんにCDK阻害薬感受性の可能性を発見できたことは素晴らしく、この知見は、HR陽性乳がん以外でもこの種の薬剤の研究を進める論理的根拠となります」とWick氏は述べた。

その後、研究チームはこの分析対象をさまざまな異なる固形悪性腫瘍に拡大した。パルボシクリブ感受性はがん種によって異なり、胃がん移植マウスの60%に感受性があり、次いで大腸がん(45%)、腎臓がん(45%)、メラノーマ(悪性黒色腫)(40%)、頭頸部がん(35%)、膵臓がん(30%)、卵巣がん(15%)、肺がん(10%)となった。

また、研究者らはパルボシクリブ投与治療後の腫瘍縮小評価を行い、卵巣がん、膵臓がん、頭頸部がん、腎臓がん、大腸がん、およびメラノーマのマウスで部分奏効を認めた。一つの肺がんマウスでパルボシクリブ治療後に完全奏効1例を認めた。

「われわれの研究結果から、CDK阻害薬は、特に既存の治療法との併用で、異なるがん種に投与可能な治療選択肢になるだろうと信じています」とWick氏は述べた。「臨床的に利用可能な薬剤をCDK阻害薬に追加して、PDXマウスに相加効果が現れるのか、積極的に調査しているところです」。

これらは前臨床モデルであるため、実臨床に用いる前にさらに評価を行う必要があるとWick氏は指摘した。

この研究はSTARTが資金援助をした。Wick氏は利益相反がないことを宣言している。

翻訳担当者 佐藤美奈子

監修 峯野知子(薬学・分子薬化学/高崎健康福祉大学)

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