カリフォルニア女性に乳がんリスクをもたらす化学物質曝露を表示するウェブツール

女性に乳がんリスクをもたらしうる職場での化学物質曝露リスク評価ツール

この新たなウェブツールでは、650万人以上ものカリフォルニアの働く女性たちが直面する、乳がんリスクを上昇させうる工業用溶剤、抗菌薬、フタル酸エステルなどの曝露について、初めて詳しく説明している。

このツールは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)およびカリフォルニア州公衆衛生局労働衛生課の研究者が開発したものであり、職場での化学物質曝露による潜在的な乳がんリスクの解明を目指した、継続中の研究の一部である。

ユーザーは、民族や人種、年齢、職業ごとにデータベースを検索し、24のグループに分類された1,000以上の化学物質に関するリスク情報を調べることができる。同様に、さまざまな職業の中でどの化学物質が存在する可能性があるのかも検索できる。ツールはこちら

「この規模のデータが1カ所で可視化されたのは今回が初めてです」と、ウェブサイトプロジェクトの共同研究責任者でありカリフォルニア大学サンフランシスコ校産業保健サービス(UCSF Occupational Health Services)創設者のRobert Harrison医師(公衆衛生学修士)は述べた。Harrison医師は、仕事や環境に起因する疾患や外傷を有する10,000人を超える患者の診断や治療に携わってきた。また、カリフォルニア州公衆衛生局の労働者追跡調査プログラムも運営している。

「研究者や支援者は、特定の職業に従事する女性がどの化学物質に曝露すると乳がんリスクとなるのかを、このサイトで調べることができます」とHarrison医師は述べた。

サイト訪問者は、あるグループの化学物質が、なぜ乳がんの懸念になりうるのかを調べることができる。また、レジ係、家政婦、看護師などの特定の職業に従事する女性について、職場での曝露によるリスク上昇の可能性に関する情報を得ることができる。

職場で使用される推定80,000の化学物質のうち、これまでに発がん性について調べられているのはごく一部であるが、少なくとも200の化学物質が乳がんを引き起こすことが動物で示されている。

また、この双方向ツールでは、カリフォルニアにおける女性の雇用状況や、相当数の女性が従事する仕事でどのような化学物質に曝露する可能性があるのかについて、閲覧者が正確に表示することができる。このツールでは、既知または疑いのある乳腺発がん物質、乳腺毒性物質、内分泌攪乱化学物質を表示している。

このような研究から、職業的な化学物質の曝露による乳がんリスクの理解を目的とした、将来の研究に役立つ重要な予備データが得られる。

「現在、働く女性たち、なかでも有色人種の女性たちが直面するがんリスクについての理解にはギャップ があります」と、共同研究責任者でありカリフォルニア大学サンフランシスコ校の疫学者でもあるPeggy Reynolds医学博士(公衆衛生学修士)は述べた。博士は、がんの環境リスク要因について研究している。

ウェブ上に存在するデータは、カリフォルニアの働く女性たちが曝露する可能性のある化学物質を簡単な図で示すこと、曝露する可能性のある労働人口の数と特徴を列挙することを目的としている。曝露の可能性は、研究チームが作成した職務曝露マトリックス[job exposure matrix(JEM)]に基づき、「可能性が高い」、「可能性がある」、または「可能性が低い」として表示される。

マトリックスは、業務内容や職場に起因する曝露の可能性に関する定性的評価である。化学物質の曝露に関する職業別の定量的データがないことから、このような評価の作成が必要となった。

職業リストは、米国国勢調査で実施された米国地域社会調査(American Community Survey)に基づいて構成された。

また、このデータ可視化ツールでは、公式なデータに含まれず、しばしば制定された労働法の網をかいくぐって活動する非公式の労働人口が、どのような職業に従事している可能性があるのかを示しており、非公式に働く女性たちの曝露の可能性を明らかにしている。

翻訳担当者 太田奈津美

監修 北丸綾子(分子生物学)

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