FDAがPIK3CA変異を有する進行乳がんにアルペリシブを承認

2019年5月24日、米国食品医薬品局(FDA)は、内分泌療法ベースの治療中または治療終了後に進行が認められ、その後FDA承認検査によってホルモン受容体(HR)陽性、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性、PIK3CA変異を有する進行または転移乳がんが検出された閉経後女性および男性に、alpelisib[アルペリシブ](商品名:PIQRAY、Novartis Pharmaceuticals Corporation社)をフルベストラントとの併用で承認した。

本日、FDAは、腫瘍組織検体中や血漿検体から単離した循環腫瘍DNA(ctDNA)中にPIK3CA変異を有する患者を選択するためのコンパニオン診断であるtherascreen® PIK3CA RGQ PCRキット(QIAGEN Manchester, Ltd.社)も承認した。この検査で血漿中のPIK3CA変異が陰性の場合、患者に対して腫瘍組織中のPIK3CA変異に関する検査を実施すべきである。

承認は、SOLAR-1試験(NCT02437318)に基づいたものである。SOLAR-1試験は、HR陽性HER2陰性の進行または転移乳がんを有し、アロマターゼ阻害剤の投与中または投与後に疾患が進行した閉経後女性および男性を含めた患者572人を対象とした、アルペリシブ+フルベストラント対プラセボ+フルベストラントの第3相無作為化二重盲検プラセボ比較対照試験である。

主要評価項目は、PIK3CA変異を有するコホートにおける、試験医師の評価による無増悪生存期間(PFS)であった。試験医師の評価によるPFSの推定中央値は、プラセボ+フルベストラント群では5.7カ月(95% CI: 3.7~7.4)であったのと比較して、アルペリシブ+フルベストラント群では11.0カ月(95% CI: 7.5~14.5)であった(HR 0.65; 95%CI: 0.50~0.85; p=0.001)。全生存データは分析時点では確定していなかった。腫瘍にPIK3CA変異を有しない患者には、PFSに関する有益性はみられなかった(HR = 0.85; 95% CI: 0.58~1.25)。

アルペリシブ+フルベストラント群における、臨床検査値異常を含め最もよく認められた有害反応は、グルコース上昇、クレアチニン上昇、下痢、発疹、リンパ球数減少、ガンマグルタミルトランスフェラーゼ上昇、悪心、アラニンアミノトランスフェラーゼ上昇、疲労、ヘモグロビン低下、リパーゼ上昇、食欲減退、口内炎、嘔吐、体重減少、カルシウム低下、グルコース低下、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)延長、および脱毛症であった。

アルペリシブの推奨用量は、300mg(フィルムコーティング錠150mgを2錠)を1日1回、食後の経口投与である。アルペリシブと併用するときには、フルベストラントの推奨用量は500mgを1、15、29日目、およびその後1カ月ごとの筋注である。

PIQRAYの全処方情報はこちらを参照。

本申請は、Real-Time Oncology Review (RTOR)パイロットプログラムに基づき承認された、新規分子化合物に関する初めての新薬承認申請(NDA)である。本申請は、Assessment Aid(AAid)も用いた。これら2つのパイロットプログラムを用いて、本日のアルペリシブの承認は、処方薬ユーザーフィー法(PDUFA)VIの期日である2019年8月18日から約3カ月前倒しして行われた。

FDAはこの申請を優先審査に指定した。FDAの迅速承認プログラムは、企業向けガイダンス:重篤疾患のための迅速承認プログラム-医薬品およびバイオ医薬品(Guidance for Industry: Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics)に記載されている。

翻訳担当者 串間貴絵

監修 原 文堅(乳がん/がん研有明病院 乳腺センター 乳腺内科)

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