手術法による若年乳がんサバイバーのQOLへの影響

サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)2018

乳房切除術を受けた若年乳がん患者は、乳房温存手術を受けた患者と比べて乳房への満足度が低く、心理社会的および性的な幸福度が芳しくないことが、12月4日から8日まで開催された2018年サンアントニオ乳がんシンポジウムで発表された研究の結果から明らかになった。

「歴史的にみて、女性の約75%は乳房温存手術が適応です。しかし、両側乳房切除術を選択する女性、特に若年女性が増えてきています」と本研究筆頭著者であるLaura S. Dominici医師(米国外科医師会会員、ダナファーバーがん研究所/ブリガム・アンド・ウィメンズがんセンター外科医、ハーバード大学医学大学院外科学助教、ブリガム・アンド・ウィメンズ・フォークナー病院乳房外科部長)は述べた。Dominici医師は、複数の要因が女性たちの決断に影響を及ぼすが、腫瘍学的見地からみると、その結果はしばしば同等であると述べた。

「女性たちが意思決定の過程に関わることが増えてきています。そのため、私たちは彼女たちが生活の質(QOL)など長期的な転帰について可能な限り多くの情報を確実に得ているようにしなければなりません」とDominici医師は付け加えた。本研究で、Dominici医師らは3つの異なる手術(乳房温存手術、片側乳房切除術、両側乳房切除術)に関して若年女性のQOL転帰を比較した。2016年10月から2017年11月までの間に、Dominici医師らはBREAST-Qを実施した。BREAST-Qは、検証された患者報告転帰調査方法であり、40歳までに乳がんと診断され大規模前向きコホート研究に登録された女性560人を調査対象とした。対象女性の中で、28%が乳房温存手術を受けており、72%は乳房切除術を受けていた。乳房切除術を受けた女性のうち72%が両側乳房切除術を受けていた。89%の女性が乳房再建手術を受けていた。

研究の結果、乳房への満足度、心理社会的および性的な幸福度を表すBREAST-Q平均スコアについて、片側または両側乳房切除術を受けた女性の方が、乳房温存手術を受けた女性よりも低かった。身体機能は全群で同様であった。

乳房への満足度に関して、乳房温存手術を受けた女性のBREAST-Q平均スコアが65.9であったのに対し、片側乳房切除術を受けた女性では59.5、両側乳房切除術を受けた女性では60.3であった。

心理社会的幸福度に関しては、乳房温存手術を受けた女性のBREAST-Q平均スコアが76.1だったのに対し、片側乳房切除術を受けた女性では70.5、両側乳房切除術を受けた女性では68.1であった。

性的幸福度に関しては、乳房温存手術を受けた女性のBREAST-Q平均スコアが57.5だったのに対し、片側乳房切除術を受けた女性では53.2、両側乳房切除術を受けた女性では48.6であった。

「これらの知見は、手術の選択がQOLに長期的な影響を及ぼす可能性があることを示唆しています」とDominici医師は述べた。「QOLについてのデータ、特に手術後のデータをもっと多く得る必要があります。なぜならば、こうした情報が彼女たちの判断に役立つからです」。

Dominici医師は、今後研究が進めば、医師たちは乳がん手術の選択肢について患者に助言する際により多くの情報を得られるだろうとも述べた。「将来的には、患者が自分にとって何が最善かを決断しやすくするために、さまざまなタイプの手術を受ける個々の患者についてQOLの転帰を予測できるようになると期待しています」。

Dominici医師は、本研究の主な制限は、ランダム化されておらず、単一時点でしかQOLを評価しなかったことであると述べた。また、本研究以前の女性たちのQOLに関する情報がなく、研究以前のQOLが彼女たちの意思決定や手術後のQOLに影響を及ぼした可能性があるとも述べた。

本研究は、米国医療研究・品質調査機構、Susan G. Komen氏、米国乳がん研究基金およびThe Pink Agendaの助成を受けた。Dominici医師は、利益相反がないことを宣言している。

翻訳担当者 太田奈津美

監修 小坂泰二郎(乳腺外科・化学療法/医療社会法人石川記念会 HITO病院)

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