アロマターゼ阻害剤と卵巣抑制が閉経前の高リスク乳がん患者に有用
ホルモン受容体陽性、HER2陰性の再発リスクが高い閉経前乳がん患者は、アロマターゼ阻害剤と卵巣機能抑制の治療を受けた場合、8年の時点で無遠隔転移生存率に10~15%の改善が得られることが新たな臨床試験解析の結果、明らかになり、米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で報告された。解析されたTEXT試験およびSOFT試験の全体の結果は、本日付のNew England Journal of Medicine誌にあわせて掲載された。
アロマターゼ阻害剤エキセメスタンと卵巣機能抑制(抑制剤または外科切除)の併用治療を受けた患者は、タモキシフェンと卵巣機能抑制の併用治療、またはタモキシフェン単独の治療を受けた患者と比較して優位性がみられた。アロマターゼ阻害剤と卵巣機能抑制の併用治療には、タモキシフェン治療より多くの副作用との関連がみられた。
しかし、臨床学的かつ病理学的特性から再発リスクが低いと分類される患者では、タモキシフェンの代わりにアロマターゼ阻害剤+卵巣機能抑制治療を受けた場合の遠隔転移リスクの改善は少なかったと、この報告の発表者であり責任著者でもある、ダナファーバーがん研究所とInternational Breast Cancer Study Group(IBCSG)のMeredith Regan理学博士は報告している。再発リスクが中程度と判断される患者では、8年の時点での無遠隔転移生存率に推定4~5%の改善が得られるだろうとRegan氏は話している。
TEXT試験とSOFT試験のデータの統合解析は、アロマターゼ阻害剤と卵巣機能抑制の治療から得られる効果には症状と起こりうる長期的副作用をしのぐ価値があるかどうか、患者と主治医が判断する際の参考になるだろうとRegan氏は話す。
TEXT試験(タモキシフェン/エキセメスタン試験)とSOFT試験(卵巣機能抑制試験)では、閉経前の早期ホルモン受容体陽性乳がん患者約6,000人を、5年間の異なる術後ホルモン療法に無作為に割り付けた。試験に参加した患者は、現在平均8~9年の追跡調査を受けている。「解析の結果、(アロマターゼ阻害剤と卵巣機能抑制の)治療による再発の減少が示されているが、問題は、副作用と更年期症状の見地から、個々の患者にとってその治療を受ける価値があるかという点だ」とRegan氏は話す。
新たな解析では、最も再発リスクが高い乳がん患者(若年患者でリンパ節転移が複数陽性、腫瘍径が大きい、腫瘍悪性度が高いなど)がタモキシフェン単独の治療を受けた場合、8年の時点までにおよそ3人に1人が遠隔転移していた。再発リスクが高い患者が卵巣機能抑制とエキセメスタンの治療を受けた場合には、無遠隔転移生存率に10~15%の改善がみられた。「この改善は大きく、同様の状況にある患者なら、治療を受ける価値があると判断するだろう」とRegan氏は話す。
リスク上対極にある、再発リスクが低いと判断される患者では、どのホルモン療法を受けたかに関わらず、無遠隔転移生存率は96~97%であったとRegan氏は話す。
「再発リスクが中程度の患者では、無遠隔転移生存率に4~5%の改善がみられたが、この場合の判断は幾分難しく、患者本人の希望と治療への忍容性次第となるだろう」と同氏は話している。
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