FDAがBRCA変異3種類に対し、初の一般用遺伝子検査を条件付き承認
遺伝子検査は既知のBRCA変異1,000種類以上のうち3種類を検出するのみであり、検査結果が陰性であってもがんのリスクが低いとはいえない。
速報
米国食品医薬品局(FDA)は本日、23andMe社のBRCA1/BRCA2(Selected Variants:特定変異)検査におけるPersonal Genome Service Genetic Health Risk (GHR) Reportを承認した。本遺伝子検査はアシュケナジム(東欧)系ユダヤ人の子孫に最も多くみられるBRCA1、BRCA2遺伝子変異のうち、特定の3種類を検出する最初の消費者向けDNA検査である。ただし、この3種類のBRCA1、BRCA2変異は、一般集団で最も多くみられるわけではない。
本検査は各自が採取した唾液サンプルから収集したDNAを分析するもので、検査報告書は女性については乳がんや卵巣がんのリスクが高いかどうかを記載し、男性については乳がんのリスクが高いかどうか、または前立腺がんのリスクが高い可能性があるかどうかを記載する。検査は1,000種類以上ある既知のBRCA変異のうち3種類を検出するのみであり、検査の結果が陰性であってもがんのリスクを高める別のBRCA変異を持っている可能性があることを意味する。
「本検査により、乳がんや卵巣がん、前立腺がんのリスクが高い可能性のある、また遺伝子検査を受診しない可能性もある一定の人たちへの情報提供が可能になり、消費者向け遺伝子検査が利用可能になるという点では一歩前進となるが、警告すべき点も多い」と、FDA医療機器・放射線保健センターの体外診断薬・放射線保健室副室長のDonald St. Pierre氏は語る。「検査でBRCA変異が検出されることでリスクが明らかになる一方で、この3種類の変異のどれかを持つ米国人はごくわずかであり、個人のがんリスクを高めるBRCA変異のほとんどが本検査では検知できない。そのため、本検査を医師によるがん検診の替わりや、がんリスクの高低を左右する可能性のある遺伝要因や生活要因について相談するカウンセリングの替わりとして利用すべきではない」。
消費者および医療従事者は、検査結果を使って抗ホルモン療法や乳房または卵巣の予防的切除などの治療を決定すべきではなく、治療決定には確認試験および遺伝子カウンセリングが必要である。本検査は個人の全体的ながんリスクについて情報提供するものではなく、個人が医師や遺伝子カウンセラーの相談を受けずに検査結果を使う場合、本検査には大きなリスクが伴う。
米国立がん研究所によると、本検査ではアシュケナジム系ユダヤ人女性の約2%に3種類のBRCA1、BRCA2遺伝性変異がみられたが、他の民族群ではほとんどみられない(0%~0.1%)。アシュケナジム系ユダヤ人の子孫かどうかにかかわらず、誰でもBRCA1またはBRCA2遺伝子の別の変異、すなわち検査では検出しないその他のがんに関係する遺伝子変異を持っている可能性がある。このため、検査結果が陰性であっても遺伝子変異によりがんリスクが高いことも考えられる。さらに多くの場合、がんは遺伝性の遺伝子変異のみならず、喫煙、肥満、ホルモンの利用やその他ライフスタイルの問題など、さまざまな要因が原因で起こると考えらえている。これらすべての理由により、患者は医療従事者に相談することが重要となる。そして医療従事者は、これらの要因が個々のがんリスクにどのように影響するのか、またそのリスクを改善するために何ができるのかを患者に理解してもらう手助けをする。
なによりも、FDAによる本検査の審査で明確になったのは、検査が正確である(すなわち唾液サンプルから3種類の遺伝子変異が特定できる)ことを示す十分なデータを23andMes社が提出しており、検査結果に再現性があることである。23andMe社は、代表的なGHR検査の結果を用いて、検査方法と検査結果が利用者にとって一般的に分かりやすく理解しやすいことを示す利用者理解度調査データを提出した。検査報告書は検査結果の意味やその解釈の仕方、検査結果の追加情報の入手先についての情報を提供している。
FDAは、すでに合法的に市販されている機器に対し、実質的には同等ではないが低~中リスクの機器の規制経路である新規市販前審査を通じて検査データを審査した。今回の承認に伴い、FDAは特別規制と呼ばれる検査精度、再現性、臨床成績および表示に対するFDAの要望を示す基準を設けている。この特別規制を一般規制と併せて満たした場合に、本検査の安全性および有効性が合理的に保証される。
FDAは23andMe社に対し、消費者向けのがんリスクDNA検査の販売を承認した。
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