CDK4/6阻害薬は高齢のHR+乳がんにも有効
【サンアントニオ乳がんシンポジウム2017】
12月5~9日に開催された2017年サンアントニオ乳がんシンポジウムで発表されたデータによると、サイクリン依存性キナーゼ4および6(CDK4/6)阻害薬の治療を受けたホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性進行乳がんの高齢女性は、若年女性と同様の無憎悪生存期間を達成した。
過去2年間で、米国食品医薬品局(FDA)は3つのCDK4/6阻害薬を承認した。Palbociclib[パルボシクリブ]](商品名:Ibrance[イブランス])、ribociclib[リボシクリブ](商品名:Kisqali)、abemaciclib[アベマシクリブ](商品名: Verzenio)である。これらの薬剤は、細胞を増殖し腫瘍増殖を促すCDK4およびCDK6タンパク質の働きを抑制する。過去の研究により、HR陽性の転移性乳がん患者がCDK4/6阻害薬と内分泌療法を併用すると、内分泌療法単独より無憎悪生存期間(PFS)が改善することが示されている。
「がんの治療用に新しい薬剤を承認する際は、高齢患者における有効性と安全性の理解を深めようと努めることが重要です」と、本研究筆頭著者であり、Cancer in Older Adultsの科学調整官およびFDA医薬品評価研究センターの血液学・腫瘍製品室医師であるHarpreet Singh医師は述べた。「慣習として、腫瘍学の臨床試験では高齢患者が少数しか存在しませんが、同じ薬剤クラスのあらゆる臨床試験から高齢患者の結果を集めれば、彼らへの効果を見抜くことができます」
本研究でSingh医師と共同研究者らは、HR陽性転移性乳がんを有する閉経後の患者の初回治療として、3種のCDK4/6阻害薬とアロマターゼ阻害薬を併用した前向きランダム化研究からデータを集め分析した。カプラン・マイヤー推定とコックス比例ハザードモデルを用いて、無憎悪生存期間(PFS)に及ぼす年齢効果を調査した。
1,334人の全患者のうち、42%が65歳以上、24%が70歳以上だった。CDK4/6阻害薬とアロマターゼ阻害薬の併用治療を受けた70歳以上の患者は推定PFSにまだ達していないのに対し、アロマターゼ阻害薬単独治療を受けた70歳以上の患者の推定PFSは18カ月だった。
CDK4/6阻害薬の治療を受けた70歳未満の患者は推定PFSが23.5カ月だったのに比べ、アロマターゼ阻害薬単独治療を受けた70歳未満の患者は13.8カ月だった。
研究者らは、少なくとも1度CDK4/6阻害薬の投与を受けたことのある患者において、安全性も評価した。本研究によって、高齢患者は若年患者に比べて、副作用を理由に治療を中止する傾向が強いことがわかった。70歳以上の患者のうち20%が治療を中止したが、65歳以上では17%、65歳未満では8%だった。Singh医師は、全ての年齢群にわたって治療中止に至る最も一般的な事象は、感染症、疲労、血球数の異常(好中球減少症)、肝酵素異常、下痢だと述べた。
「CDK4/6の効果という点では年齢のグループによる治療差がないことを、われわれの研究結果は示唆している」と、Singh医師は語った。「これは、新たな治療法が承認され、医療提供者と患者が治療の選択肢を検討するという時に、重要な情報となります」
FDAの同部門医師であり共著者のLynn Howie医師は、高齢の乳がん患者においては、潜在的効果と毒性のリスクとを比較検討しなければならない、と加えた。高齢の患者では治療の中止率が高くなったことに加え、副作用を管理するために投与量を頻繁に調整しなければならないことも多かった。
「医療提供者はそれぞれの患者を個別にカウンセリングし、治療の潜在効果だけでなくリスクについても助言しなければなりません。患者の病気の特徴、全身状態、合併症、社会支援、治療の好みなども考慮すべきです」と、Howie医師は言った。
FDAやその他の出資者らは、人口の高齢化に伴い、臨床試験における高齢患者の代表を増やす方法を探り、がんの高齢者の治療法についてさらに情報を得ようと努めている、と著者らは加えた。
本研究の主な制限となっているのは、臨床試験に登録された高齢患者数が比較的少なく、特に75歳を上回る患者数が少ないことである。また、臨床試験に登録する高齢者の多くは他の同年齢の人より健康で、合併症や虚弱が少ないため、彼らの結果は必ずしも広範な集団を代表するものとはならない、とSingh医師は述べた。
本研究はFDAによって主導され、著者らとの間に利害の対立はない。
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