TalazoparibがBRCA変異乳がんの無増悪生存期間を延長

第3相EMBRACA試験で主要評価項目を達成

BRCA遺伝子変異を有する進行したHER2陰性乳がん患者に対する第3相試験EMBRACAにおいて、PARP(ポリ[ADP−リボース]合成酵素)阻害剤talazoparib[タラゾパリブ]で治療した群の無増悪生存期間(PFS)が、医師選択による化学療法を受けた群と比較して有意に延長したことが、2017年12月5~9日に開催された2017サンアントニオ乳がんシンポジウムで発表された。

「第3相EMBRACA試験は遺伝性乳がんの患者群に対して行われた最大のランダム化臨床試験で、有効性の主要評価項目である無増悪生存期間の延長が達成されたことを非常に嬉しく思います」テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター乳がん腫瘍内科の准教授である Jennifer Litton医師はこう述べた。

Litton医師の説明によると、タラゾパリブは二重機構を有するPARP阻害剤で、PARP酵素を阻害するだけでなく、DNA上のPARPを捕捉してDNA損傷の修復を抑制することによりBRCA1/2変異細胞の死をもたらす。これまでの研究において、タラゾパリブの独特な構造特性がPARP-DNA複合体の捕捉により有効であることが示されていたが、先行する前臨床試験ならびに第1相および第2相臨床試験でも有望な結果が得られた。

「EMBRACA試験では、受容体による分類(HR陽性乳がんまたはトリプルネガティブ乳がん)、前化学療法の治療ライン数、BRCA変異型、および中枢神経系の転移といった、あらゆるグループに属する患者さんに対して、タラゾパリブによる優れた臨床効果が示されました」とLitton医師はコメントしている。

米国食品医薬品局(FDA)は、BRCA遺伝子変異型を含めた卵巣がん治療薬として、これまでに3つのPARP阻害剤、olaparib[オラパリブ](Lynparza[リンパルザ])、rucaparib[ルカパリブ](Rubraca[ルブラカ])、およびniraparib[ニラパリブ](Zejula)を承認している。

EMBRACA試験は、BRCA1/2変異を有する進行した乳がん患者に対してタラゾパリブ1mg/日の有効性および安全性を医師選択による標準的単剤(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、またはビノレルビン)療法(PCT)と比較する非盲検ランダム化第3相試験である。患者はタラゾパリブ群(287人)またはPCT群(144人)に2対1の割合でランダムに割り付けられた。

主要目的は無増悪生存期間で、盲検下で独立した中央判定によって評価された。副次目的は全生存期間(OS)、全奏功率(ORR)、24週における臨床的有用率(CBR24)、および安全性であった。患者報告アウトカムも評価された。

PFSの中央値はタラゾパリブ群の患者で8.6カ月、PCT群で5.6カ月であり、両群間の差は統計的に有意であった。タラゾパリブ群の患者はPCT群の患者と比較して、疾患の進行が45.8%少ないと考えられた。

ORRおよびCBR24では、タラゾパリブ群がPCT群と比較して統計学的に有意な改善を示した。ORRはタラゾパリブ群で62.6%であったのに対し、PCT群では27.2%であった。この試験では12例の完全奏功が認められたが、そのすべてがタラゾパリブ群であった。CBR24はタラゾパリブ群で68.6%、PCT群では36.1%であった。

全生存期間の中間解析も行われた。成熟データではないもののタラゾパリブ群で死亡リスクが24%低下し、タラゾパリブに優位な傾向が認められた。Litton医師によれば、生存期間に関するデータは引き続き追跡調査され、成熟データが得られ次第、最終的なOS推定値が報告される。

EORTC QLQ-C30質問票を用いた生活の質(QOL)測定により、タラゾパリブ群の患者ではPCT群の患者と比較して健康状態の悪化時期が有意に遅れることが明らかになった。

「この研究で最も注目すべき点は、PFSの日数に改善がみられただけでなく、臨床的増悪までの期間がタラゾパリブ群において24.3カ月間であったのに対し、標準的化学療法では6.3カ月間であったことです」とLitton医師は指摘している。

タラゾパリブ群の患者の55%においてグレード3~4の血液学的有害事象が認められたのに対し、PCT群の患者では39%であった。タラゾパリブ群ではグレード3~4の胃腸障害ならびに皮膚および皮下組織障害の有害事象がPCT群より少なかった。タラゾパリブ群およびPCT群では、グレード3~4の重篤な有害事象がそれぞれ26%および25%の患者で認められた。死亡に至った有害事象は、タラゾパリブ群およびPCT群の患者のそれぞれ2.1%および3.2%で認められた。

「全体とすれば、1日1回のタラゾパリブ経口投与は化学療法と比べて忍容性が良好で、無増悪生存期間および臨床的反応が改善されていることから、BRCA変異を有する転移性乳がん患者のための重要な選択肢となります。OSの結果を追跡し、成熟データが得られるのが楽しみです」とLitton医師は述べた。

この試験はPfizer社により資金提供されている。Litton医師はEMD Serono、AstraZeneca、Pfizer、Genentech、およびGlaxoSmithKline各社より研究助成を受けており、Pfizer社およびAstraZeneca社の諮問委員会の委員も兼任している。

翻訳担当者 岡部師才

監修 小宮武文(腫瘍内科/トゥーレーン大学)

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